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9月の近畿は平年より暑い!きょう1か月予報発表 そもそも平年っていつ?気象業務20年以上の気象予報士が解説【MBSお天気通信】

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 きょう8月28日、近畿の最新の「1か月予報」が発表されました。それによりますと、9月の「平均気温は平年より高い」予想です。記録的な猛暑が続いたこの夏。「まだ暑いのかー」とうんざりする方も多いと思います。でも、そもそも1か月予報ってどういうもので、何気なく聞いているこの「平年」とはそもそもいつなのでしょうか?詳しく解説します。(気象予報士・松田貢児)

 28日発表の「近畿の1か月予報」によりますと、向こう1か月の平均気温は平年より高い予想です。全国的に暖かい空気に覆われやすいため、近畿地方でも9月にかけては厳しい残暑が続く見込みです。特に9月の前半はかなりの高温の見込みで、近畿地方では猛暑日(最高気温が35℃以上の日)の地点もありそうです。9月になっても万全な熱中症対策が必要です。また、9月は東・西日本を中心に高気圧に覆われやすく、近畿地方は晴れの日が多くなりそうです。降水量はほぼ平年並みの見込みですが、雨の少ない状態が続いている所もありますので、引き続きの水の管理や農作物の管理に注意が必要です。

1か月予報とは?

 気象庁は、私たちが毎日目にする「晴れ・曇り・雨」などの天気予報のほかにも、「期間中は晴れの日が多い、曇りや雨の日が多い」など、大まかな天候を発表する「季節予報」を発表しています。有名なのが、1か月予報や3か月予報です。季節予報は、平年と比べて気温が高いか低いか?降水量が多いか少ないか?などを発表しています。1か月予報は、毎週木曜日に発表されます。では、比較対象の“平年”っていつのことなんでしょうか?

現在の平年値は、1991年~2020年

 平年とは、気温、降水量などの気象要素の過去30年間の平均値のことをいいます。現在、天気予報で使っている平年は1991年~2020年の平均値です。この平年の値は、西暦の1の位が1の年ごと、10年ごとに更新されます。したがって、現在の平年値は2021年に更新されており、次は2031年に2001年~2030年の平年値に更新されます。

 1991年からのデータと知ると、ちょっと昔のデータとの比較のような気もしますが、平年値の統計機関を30年間としているのも気象庁が勝手に決めているわけでなく、世界気象機関(WMO)の勧告にしたがっています。

 なお、気象庁の気象観測統計指針によりますと「平年値は、その時々の気象(気温、降水量、日照時間等)や天候(冷夏、暖冬、少雨、多雨等)を評価する基準として 利用されると共に、その地点の気候を表す値として用いられる。」としています。つまり、平年値は、その時々の気温や降水量を判断する基準「季節のバロメーター」として利用したり、その地点の特性を表す値として用いられたりしています。

平年並みはどうやって決める?

 続いて、平年値の決め方を大阪市の8月の日平均気温を例に紹介します。まず、1991年~2020年のそれぞれの年のデータと、平年値との差を比べます。大阪の8月の平年値は29.0℃です。たとえば、1991年ですと、29.0℃―28.1℃なので、0.9℃となります。次に、低い順に並べ変えます。

・1番目~10番目の範囲が「平年より低い」
・11番目~20番目の範囲が「平年並み」
・21番目~30番目の範囲が「平年より高い」とします。
3.jpg  この例だと真ん中の10年分の-0.4℃~+0.4℃の黄色の範囲が平年並みです。その平年並みの左側青い範囲が低い、右側の赤い範囲が高いとなります。この基準をもとにして、例えば1か月予報では、向こう1か月の気温が平年並みか高いか、低いかを予報しています。つまり予想気温と平年値の差が平年並みの範囲内にあれば、“平年並みの気温”と発表されます。

 平年並みの範囲を決めておかないと、高いか低いかだけになってしまい、極端の例だと+0.1℃も+1.0℃も高い範囲になってしまうので、ある意味、平年並みの範囲という緩衝地帯を作って、そのような事態にならないよう区別できるようにしているわけです。

 その地域の平年並みがどの程度になるかを知りたい場合は、地方季節予報(1か月予報)の下の参考資料をクリックすると見られます。
4.jpg
5.jpg

平年より高い確率とは?

 気象庁が発表している1か月予報などの季節予報は、平年と比べて高いか低いか、平年並みか、そしてそうなる確率は何%なのか?という確率表現が用いられています。向こう1か月の平均気温は「高い」と断定するのではなく、「高い」となる確率60%、「平年並み」となる確率30%、「低い」となる確率10%というように、3つの階級それぞれが発生する可能性を確率で予報します。例えば平年より高い確率60%とは、100回予報したうち60回は気温が平年より高くなると予測しています。

気象庁が定めている基準では、
6.jpg と判断されます。

 前述の最新の1か月予報の平均気温は平年より高い確率が80%となっています。80%ということは、かなり高い確率で気温が平年より高くなるということになります。

 1か月予報は、ちょっと先の未来を知ることができる手がかりです。農業や商品の需要予測などに使われていることが多いですが、私は普段の暮らしの中でも役立てています。今なら9月にかけてもまだまだ日中は半袖が活躍しそうなのでしまわずに、朝晩冷えた時用に薄い長袖だけ出すようにしようかなと思っています。その他、夏ならエアコンの試運転、冬なら暖房の燃料の買い足しのタイミングにも活用しています。

 その他、梅雨の時期に「雨量が多い」と予想されたら大雨に対する防災対策(ハザードマップや避難所の確認)など早めの大雨対策をしてもらうようにラジオで呼びかけています。今年の9月も厳しい残暑が続きますので、熱中症対策にも役に立てて下さい。

文 松田貢児
毎日放送 気象予報士(南気象予報士事務所所属)
MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」に出演中。
防災士・気象防災アドバイザー有資格

2025年08月28日(木)現在の情報です

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