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大阪→韓国・プサン『19時間の船旅』に密着 「里帰りして祖母へ結婚報告」「定年前の気ままな一人旅」あえてフェリーを選ぶその魅力とは

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 大阪港にある国際フェリーターミナルから週3回、韓国・プサン行きのフェリーが出港しています。船内では食事を楽しんだりステージで盛り上がったり…。飛行機(関西空港から)なら1時間半で行けるにもかかわらず、19時間の船旅を選ぶのはなぜ?国際フェリーで旅する人たちに密着しました。

「船大好きです。お風呂入ったり、ごはん食べたり」

 出港1時間前、フェリーターミナルでは乗船が始まりました。乗った瞬間から、そこは異国のよう。ハングル表記の案内板が目に飛び込みます。いよいよ船旅の始まりです。プサンに向けてゆっくり出港したのは午後3時、取材班は乗客に話を聞いてみました。

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 (乗客)「東京から来ました。前回も船で1回行ったんですけど、すごく楽しかったんですよ。瀬戸大橋をくぐったりとか。今回は娘の友達も連れて2回目。(娘らは)夜にやっている(船内の)のど自慢大会も出ると言って」

 遠ざかる大阪の街。フェリーからは来年開催される大阪・関西万博のシンボル“大屋根”も見えます。

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 乗船早々、ビール片手に楽しんでいるグループがいました。韓国人のチョアさん(32)と夫の涼司さん(36)。チョアさんの里帰りをかねて、友人家族と韓国旅行です。

 (チョアさん)「私だけ韓国人です。里帰り。船大好きです。船はお風呂入ったり、ごはん食べたり、乾杯したりできるので」
 (チョアさんの友人)「里帰りに便乗した感じ」

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 プサンまでは約19時間。フェリーは瀬戸内海を西に進み、未明に関門海峡を通過して、翌朝10時にプサンに到着します。

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 出港から1時間。フェリーは明石海峡大橋をくぐります。京都や奈良を観光して韓国に帰る家族は、優雅な船旅に、思わず映画「タイタニック」の名シーンを演じます。

 (韓国に帰る家族)「気持ちがとても爽快で空に飛んでいきそうです」

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 遠ざかる橋を見ていたのは、富山県で貿易の仕事をしているロシア人の家族。日本に住んで13年です。

 (ロシア人の男児)「めちゃくちゃキレイでした。(デッキに)出た瞬間、真上にあって間に合わなかった感じなんですけど、あとから見たらすごくデカいなって」
 (ロシア人の男性)「妻は飛行機が怖いのでフェリーで行こうと思って。(フェリーは)けっこうおもしろいですよね。船の旅、楽しめています」

定年前の気ままな1人旅「意地でも飛行機は使わない」

 大阪とプサンを結ぶフェリーは韓国の会社が運航しています。この日は260人が乗船していて、うち日本人は55人。日本語を話せるスタッフもいるので言葉に困ることはありません。旅の疲れを癒す大浴場もあり、運賃は大人片道1万2000円~(※燃油サーチャージ 税金別)。船が好きな人はもちろん、子連れのファミリーにも人気があるそうです。

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 食事も船旅の楽しみ。夕食は韓国料理を中心にしたビュッフェスタイルです。レストランには、韓国に里帰りするチョアさんの姿も。船内で知り合った韓国人と一緒に食事をしていました。こんな出会いも船旅の魅力です。

 (チョアさん)「友達になりました。プサンが地元で、おいしいところを教えてもらったり。めちゃくちゃ優しく教えてくれて」

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 日が暮れると、名物の『のど自慢大会』を開催。大人も子どももステージで熱唱します。取材班がインタビューしていた東京からの子どもたちも参加していました。

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 夜、売店でビールを買う男性に出会いました。名古屋から1人での船旅。部屋で話を聞かせてもらいました。

 (一人旅の男性)「(Q旅の目的は?)目的は恥ずかしいですけど、“鉄オタ”なもんですから、韓国の列車に乗りたいなと。そして景色を見たいなと」

 初めての韓国で、プサンを拠点にソウルや世界遺産の街・キョンジュを鉄道で巡る旅。船と鉄道を乗り継ぐ気ままな一人旅です。

 (一人旅の男性)「もうすぐ定年なんです。再就職した時に長い休みが取れないかもしれないと思って、今回、時間のかかる旅を選んだ。(Q帰りもフェリー?)帰りは違う船なんですけど、(プサンから)福岡まで行く船で、福岡から新幹線。意地でも飛行機は使わない」

 フェリーは未明に関門海峡を通過。真夜中もプサンに向けて進みます。

あえて船で旅するワケ「便利な世の中で、不便なものが…」

 午前5時、うっすらと明るくなってきた東の空。韓国に里帰りするチョアさんが朝日を見にきました。チョアさんと夫の涼司さんは10年前、ロシアに語学留学した時に出会ったそうです。卒業後はお互いの国に戻りましたが、遠距離恋愛を経て結婚。今回の旅には大きな目的があるそうです。

 (チョアさん)「卒業して就職したけど一緒にいたいなと思って日本に来ました。韓国は家族を大事にしていて、結婚式を小さくしたので(親戚の)一番上のおばあちゃんにあいさつができていなかったので、遅くなる前にあいさつしにいこうかなと」

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 フェリーから国境の島・対馬が見えると、プサンはもうすぐ。乗客は船を下りる準備を始めます。韓国最大の港町・プサンは、人口300万人を超える大都市です。

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 午前10時、長かった船旅も終わり、チョアさんの夫・涼司さんが、あえて船で旅するワケを話してくれました。

 (涼司さん)「便利な世の中になったので、(自分の中で)不便なものが流行っている。そんな気持ちだけかもしれない。船いいよ。乗ったらわかります」

 変化が激しい時代に、ゆっくりと移動を楽しむ人たちがそこにいました。

2024年08月19日(月)現在の情報です

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