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1審に続き府に慰謝料支払い命じる...虐待疑われ生後間もない娘が7か月半も"一時保護" 母親が大阪府に賠償求めた裁判 大阪高裁は府の控訴を棄却

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虐待ではなかったのに児童相談所が娘を7か月半も一時保護し、面会制限まで行ったのは違法だとして、母親が大阪府に慰謝料の支払いを求めている裁判。100万円の支払いを命じた1審判決を不服として、大阪府が控訴していましたが、8月30日、大阪高裁は府の控訴を棄却しました。さらに、面会制限について“ほぼ全ての期間違法だった”などとして、賠償額を132万円に増やしました。

落下事故だったが病院や医師は虐待疑い…児相も家裁の指摘“スルー”約7か月半も一時保護

まずは経緯の説明です。

大阪府内に住む30代の母親は2018年、自宅で当時生後1か月半だった娘を片腕で抱いた状態で、ローテーブルにあったグラスを片づけようとした際、娘が約1mの高さから床に落下。娘は後頭部を床に打ちつけました。

母親が自ら通報し、娘は病院に搬送。左右のこめかみの辺りの骨折や、左前頭部のくも膜下出血などと診断されました。女性は娘が落下した状況を病院に説明しました。

しかし病院側は、1回の落下で2か所が骨折する(左右の骨折線がつながっていなかった)のは不自然と考え、大阪府の児童相談所である「池田子ども家庭センター」に通告。センターは病院に委託する形で一時保護を開始し、娘が退院した後も、大阪市内の乳児院で一時保護を継続。さらには退院と同時に、母親と娘の面会を禁じました。

病院から依頼を受けた法医学者が、「虐待の可能性が考えられる」という意見を付けた鑑定書を出したことなども受け、センターはその後、大阪家庭裁判所に一時保護継続の承認を求め審判を申し立てました。

しかし医師の鑑定書は、虐待の可能性があると判断した理由について詳細な説明はなく、参考文献なども添付されていませんでした。また母親側も、乳児が1回の落下で複数の骨折が起こり得ることを示す国内外の論文を家裁に提出しました。

大阪家裁は一時保護継続を認めたものの、「母親に虐待を疑わせる事情は見当たらず、乳児の頭がい骨の特性を踏まえても母親の供述と娘の負傷は必ずしも矛盾しない。複数の医学的知見などを踏まえて鑑定書の信用性を再検討すべきだ」と指摘しました。

しかしセンター側は、▽他の医師の鑑定書などを得ても、(1度虐待の可能性を指摘する鑑定書が出た以上)可能性は排除されない ▽児童が重大なケガをした以上、不適切な養育であることに変わりはない と判断し、他の医師に鑑定や意見を求めませんでした。

その後、大阪家裁は娘の家庭引き取りを進めるようセンターに指示。落下事故から7か月半後に、センターはようやく一時保護を解除しました。

面会制限については、制限開始から約2か月後以降、予防接種への同行やセンター内や乳児院での面会が認められるなど徐々に緩和されていきましたが、すべての制限が解かれたのは開始から約5か月後のことでした。

“愛着形成の機会やかけがえのない日常奪われた” 慰謝料求め母親が府を提訴

母親側は、虐待の存在が疑われないことは当初から明らかで、鑑定書の内容が不十分であることも明白だったのに、一時保護を開始し、家裁からの指摘も無視して漫然と保護を継続したのは違法だったと主張。

また面会制限についても、今回は「行政処分」ではなく「行政指導」に留まっていたのに、事実上強制だったと主張。“任意での協力”によってのみ行政指導は実現されると定めた「行政手続法」などに反しているとして違法だと訴えました。

その上で「授乳を通した愛着形成の機会や、乳児期の特別な行事の機会、そしてかけがえのない日常が奪われた。非常に甚大な精神的苦痛を受けた」として、慰謝料500万円の支払いを求め、大阪府を相手に提訴しました。

1審は“家裁審判後も鑑定書に安易な依拠したのは不合理”一時保護継続を違法と認定 母親が一部勝訴

去年3月に1審の大阪地裁は、池田子ども家庭センターが一時保護を始め、大阪家裁の審判まで継続したことは違法とは言えないとしました。

一方、「家裁の審判で鑑定書の信用性に疑いがあると指摘されたのに、その指摘を真摯に受けとめず、特定の医師の鑑定書に安易に依拠したのは不合理だ」と批判。審判後も一時保護を続けたことは、「裁量権を濫用していて違法だ」としました。

また面会制限についても母親の主張を認め、予防接種への同行が認められた段階までについては違法と認定しました。

以上を踏まえ大阪府に対し、慰謝料100万円を母親に支払うよう命じました。

大阪府はこの判決を不服として控訴していました。

大阪高裁は1審判決を支持 “ほぼ全期間の面会制限が違法だった”と認定 慰謝料を増額

大阪高裁は8月30日、まず一時保護をめぐる判断について、1審判決と同様「家裁の審判を受け、鑑定書の信用性を再検討しなかったのは不合理」としました。

さらに約5か月続いた面会制限について、「予防接種への同行が認められた後についても、母親は面会頻度を増やしてほしいと要望していたのであり、(行政指導としての)面会制限に同意しておらず事実上の強制だった」と指摘。ほぼ全ての期間の面会制限が違法だったと認定しました。

結果、大阪高裁は大阪府の控訴を棄却した上で、慰謝料を1審判決から増額。弁護士費用を含め132万円の支払いを府に命じました。

判決を受け、大阪府の吉村洋文知事は30日の会見で「判決文を精査して今後の対応を考えたい」と述べました。

2023年08月30日(水)現在の情報です

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