ミサイルによる挑発を続ける北朝鮮。存在が噂されてきた金正恩総書記の長男の名前は「金領主（キム・リョンジュ）」との情報。北朝鮮情勢に詳しい龍谷大学 李相哲教授によると「数年前から周辺に『領主』という名前を使うな、と指示したり、韓国の国家情報院でも総書記に長男がいるといった情報があった」といいます。今、「領主」の存在が表面化しているのは4代目国家主席も金正恩一家が継承するという意思表示ではないかと李教授はみています。健康不安説については「金総書記が海外に出た際に、排せつ物を残さないようにするなどして生体情報を外部に漏らさないようにしている」として神経をとがらせていると話します。（2023年3月1日MBSテレビ「よんチャンTV」より）

金正恩氏の後継者？金領主（リョンジュ）氏に白馬を購入か？

―――龍谷大学の李相哲先生に解説をしていただきます。お仕事で韓国ソウルにいらっしゃいます。北朝鮮の真の後継者か?金正恩氏の長男の名前がわかってきました。それが、キム・リョンジュ氏かという情報です。李先生によりますと、ピョンヤンに住んでいて、帝王学を学んでいるという情報が入ってきているそうなんです。なぜ後継者と言われているかというと、数年前に「リョンジュ」という名前を周りの人たちに使うなという指示が出たという情報があったり、お母さんに当たる、雪主（ソルジュ）の「主」を使っているこういったところがポイントになるとお話します。過去に番組で伝えたんですけども、金正恩氏には3人の子供がいるだろうと。長女とみられるこのジュエ氏が非常にメディアにも出てきて、映像にも登場する。どんな人物なのかという話は以前にもお伝えしたんですが、ただこの2010年に生まれたとみられる長男に関してはほとんど情報がなかったんですけども、先生、この長男に関して名前が今回わかったということなんですか。

実はね、これまでに度々情報は流れてたんですね。2017年に韓国の国家情報院が「金正恩には男の子、長男がいる」というような報告したことがあります。それから2019年4月に北朝鮮外交官とみられる4人がモスクワ郊外に来て、白馬を買った。そのときに「これは金正恩委員長の息子のためなんだ、だからちょっといい馬をほしい」というふうに言ったことがあるので、息子がいて、白馬を買って10歳前後から白馬に乗せるということは帝王学を施しているというふうに考えてもおかしくないというような状況はあったんですね。

―――「リョンジュ」という名前を使うなということを数年前に指示したという話ですが、ジュエ氏のときもそういったことがあったということでしたよね。

そうです。ジュエ氏の名前を使うなという情報は、アメリカのRFAというメディアが報じたんですが、あんまり定かではない。今あわててなぜジュエ氏を使うなというふうに言ったのかということが少し疑わしいんですが、リョンジュ氏に関しても、数年前にこの名前を使うなというふうな指示が出たというような情報があったんですよ。今、ちなみにジュエ氏のジュはですね、発音からするとリ・ソルジュ（李雪主、金総書記の妻）のジュと同じの可能性が高い。ですから漢字で表現すると、ジュエという名前はもしかして主人公の「主」に「愛」じゃないかと思いますけれどね

4代目後継者は木に例えると「幹」それ以外は「枝」、“剪定される運命？”

―――では後継者はリョンジュ氏なのかジュエ氏なのか、一体どちらが真の後継者なのかというところなんですが。李先生によりますと、北朝鮮の男尊女卑の傾向であったりとか、白頭血統の流れ、つまりは金日成直系が後継者になるという流れを見ていくと、次は4代目は長男のリョンジュ氏になるのでは。もしそうであれば、他の人間は「枝」になるという見立てです。「他の人間は枝」というのはどういう意味ですか。

　これは北朝鮮の言い方なんです。木は幹の部分があって枝がたくさんあるんですが、枝を残すと幹があんまり太くならないというので、枝は切り落とすというのが北朝鮮の権力内部の掟なんですね。ですから3代目は金正恩は幹の部分で、他は兄弟が何人かいますけれども全部枝なんですよね。ですから適当な時期になったら枝を切り落とす必要がある。4代目で、仮に誰かがあの後継者になれば他の人は枝の扱いになります。4代目のジュエ氏が出てるとのは、後継者だというよりは、4代目も白頭血統を引き継ぐ金一家が受け引き継ぐんだというメッセージであることは間違いないんですけれども、今急いでジュエ氏を後継者だっていうふうに決めたということはちょっと時期尚早というか、ないと思います。

―――ジュエ氏は未来の「与正氏」にということで与正さんというのは金正恩氏の妹ということになるわけですが。

仮に、男の子が、体が弱いという情報もあるんですね。韓国メディアでもちょっと騒いだんだけれども、仮にそうだとすれば、2017年生まれの三男がという説もありますので、その子になれば、ジュエもリョンジュも、2人とも枝になるんですね。金正恩のときは、長男の金正男が、結局は殺されたりとか脱落してね。そうなったのはやっぱり後継者が決まった以上は他の人たちは全部「枝扱いになる」んですね。今まだそのような段階に来てなくて、もし長男が後継者になればジュエ氏は与正氏のような役割を果たして、決して後継者ではないというようになると思います。

―――このような後継者の話題が出てくると気になってくるのは金正恩氏の健康不安説です。実際に健康どうなのか、李先生の見立てでは「169センチ、そして体重150キロあるというところを見ると、健康体とは言えないのではないか」というところなんですね。その健康状態が外に漏れないように北朝鮮、かなり警戒しているんです。例えば海外訪問をするときは、専用トイレを持ち込んで生体情報を外部に漏らさない、徹底しているということです。

　海外に出たときに黒い大きな物体を運ぶこともあったんですね。おそらくトイレだったんじゃないかと見られています。やっぱり金正恩氏の健康状態は北朝鮮の運命と関わりますので、絶対に守りたいシークレット。

―――（金正恩氏は）まだ39歳ではありますけども、もし正恩氏に何かあったときに北朝鮮が非常に困るということですよね。

金正恩氏に万が一のことがあればどうなるかっていうので、実は1年ちょっと前に北朝鮮が労働党規約を変えていて、確か26条だったと思うんですが、そこに総書記を代理する第一秘書というポジションを作ったんですね。それは誰なのかっていうので一時騒いだんですが、おそらく金正恩氏に何かあった場合ですね、第一書記になるのが金与正氏じゃないかと。あくまで第一書記として後継者体制を支えるということになるんじゃないかと思います。

韓国情報当局は金正恩氏の体型の変化や所作を細かくチェック

―――さらに李先生によりますと、北朝鮮の国内には金日成・金正日時代から北朝鮮長寿研究所というところがあるそうで、そこでは長寿食、健康法、そして薬草など3000人規模で研究が行われているということです。そして金一家のみが食べる食材の専用牧場、農場もあるということで、周りはかなり健康を守るために努力しているそうです。しかしこういった体型を見ると専門家の助言をあまり聞いてないんじゃないかという見立てもあるそうです。やっぱり体形からもやっぱり健康不安説というのはやっぱりあるわけですよね。

　韓国情報当局は彼の映像、例えばあの顔を出したときはですね、立体スキャンして健康がどのような変化を見せるのかっていうのをチェックしてるらしいんですね。体重とか、顔色とかを見て、健康状態をを予測してるというかわかってる。北朝鮮のこの長寿研究所、正式名称は基礎科学院なんですね。その基礎科学院の下に、各部署が経営する万青山研究所でも長寿研究をしたりとか、基礎科学院だけで1800人。他にまだ三つぐらいの長寿研究する機関があるんですが、400人がいたりとか、そのようにして、ずっと国はですね、首領様1人のために全てやっているが、それでもですねやっぱり生活習慣が悪ければね。やっぱり健康は保てないんですよね。金正恩氏を見ると、やっぱり生活習慣が非常に良くない。タバコをずっと吸ってますし、一晩ワインを１０本飲んでるというような話もあります。

―――北朝鮮国内では餓死者も続出している話もありますが、立岩さん「金正恩氏の健康に関しては何か非常に気を遣っている」というような話ですね。

（ジャーナリスト立岩陽一郎氏）
当然そうでしょうね。だから自分の体制を守るためにやってるわけですから。39歳で後継が議論されるっていうのが、まさに北朝鮮という国ですよね。つまり閉ざされた国なんでね、やっぱり医療体制があまり良くないんだろうというのは言われていて、例えば金日成さんのときは何か後ろ首の後ろに何か腫瘍ができて当時言われた「日本の医療だったら直せるんじゃないの」。ただやっぱりそれが北朝鮮の医療技術ではできない、それを外国の医師をですね結果的にはフランスの医師が来たとかっていう話ありますけど、そうそう簡単に他の国ですね先生がおっしゃったように自分のトイレさえ秘密を守るっていうことですから、外国の医師を入れるってなかなかできないってことになりますよね。そういうジレンマがあるんでしょうね。

―――そして注目していきたいのが、今月中旬に予定されている米韓合同軍事演習です。李先生によりますと、軍事偵察衛星の発射だったり、ICBMの正常角度での発射、さらには韓国領土への直接挑発など、こういった三つのチャンスを狙っているのではないかということです。北朝鮮の挑発行為に対してアメリカはどう見ているのか。こんな報告があります。「中国もミサイル開発を快く思っていない」、こういった発言なんですね。米韓軍事演習ありますけどもそれを受けて北朝鮮の動きがやっぱり気になりますね？

北朝鮮は米韓合同演習にはかなり激しく反応します。これまではミサイル発射で対抗してきましたけれども、今回は大規模演習なので、もう少し怒っている様子を見せる必要があります。いままで少し抑えてきたというか準備を進めてきた例えば、軍事偵察衛星の発射とか、ICBMは今まで高く飛ばすロフセット方式で発射したんだけれども、これを太平洋まで発射できる正常角度で発射したりとか、そういう可能性もなくはないという状況ですね。3月から4月にかけてはかなり朝鮮半島は緊張すると思います。