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『NPOの支援も限界』貧困家庭の子どもの困窮に"待ったなし"支援団体らが国に要望書

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3月1日午前、こどもの貧困対策を行っている5団体の代表らが、厚生労働省内で合同記者会見を行いました。今国会では異次元の少子化対策や子ども子育て予算倍増が議論されていますが、新学期の負担などで貧困家庭がより苦しくなる年度末に、今一度困窮する子どもたちの現状を訴えたいというものです。会見の後には、政府や与野党に対し子どもの貧困対策について合同要望書を提出しました。

要望の内容は、
「低所得子育て世帯生活支援特別給付金の再給付」
「児童手当の18歳まで支給延長、低所得者には上乗せ給付を」
「児童扶養手当の増額と所得施減の緩和」
「高等教育無償化の所得制限緩和と非進学者への支援強化」です。

今回、5団体が合同で要望することになった背景には、それぞれの団体の活動から浮かび上がる貧困家庭の困窮が『待ったなし』の状況だということがあります。

公益財団法人「あすのば」では、入学や卒業に向けた子どもたちへの給付金制度を設けていますが、代表理事の小河光治さんは、申請してきた家庭の数がこの3年間に過去最高を更新し続けており、その中で住民税非課税世帯や生活保護過程を除いた家庭のデータを分析した結果、2022年の世帯の平均勤労年収は139万円、貯蓄が50万円以下の家庭は75%に上ることを発表しました。

認定NPO法人「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんは、困窮家庭への食糧支援の際に行った昨年11月の調査から、困窮家庭の子どもも親もコロナ禍と物価高に追い詰められており、調査をした家庭の子どもの70%が必要な栄養が足りておらず、25%が身長や体重が増えていない窮状を訴えました。

若者への支援をしている認定NPO法人「D×P」理事長今井紀明さんは、支援を希望する15~25歳の高校生や大学生のうち58%が借金や滞納を抱えており、カードローンや電子マネーの後払い、消費者金融や知人などから生活費を借り入れている現状を報告しました。

コロナ禍経た『物価高』支援求める子どもや若者らが倍増

5団体のすべての調査で、コロナ禍を経た物価高により、支援を求める親や子ども、若者が倍増している結果が出ています。公益財団法人「あすのば」理事で日本大学教授の末富芳さんは「もはや民間のNPOによる支援は限界を迎えている」と言います。どの団体も想定を上回る支援の申し込みがあり民間団体の資金力や食料の調達能力をはるかに超えているとし、「困窮する子どもがこの社会には何万人といるという実態から目を背けて、子ども子育て予算の倍増のみを語ることというのは国家のありようとして許されることなのだろうか」と強く訴えました。

「キッズドア」渡辺さんは、新しいランドセルの話や、入学式のファッションの話など世の中が明るい雰囲気にあふれる3月から4月は、より困窮家庭の精神的な辛さが増す上に、2022年以降は給付金なども無くなって、困窮家庭は今が一番苦しい時期だと言います。「この先に給付金があると思えれば(今を耐える)心の支えにもなる」として、少しでも早く政府が困窮家庭に給付金を支給することを求めました。

「すべての子どもの権利が守られ幸せに成長できる社会をつくる」というのが4月1日に施行される子ども基本法の理念です。今この瞬間にも「生きる権利」「育つ権利」「学ぶ権利」が脅かされている困窮家庭の子どもたちに手を差し伸べ守ることができるのは誰なのかが、今突きつけられています。

2023年03月01日(水)現在の情報です

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