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高層ビルを揺らす「長周期地震動」...その揺れを『屋上に1350トンのおもり』で抑える!?最新技術の仕組みとは

2023年02月01日(水)放送

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 ビルの高層階を大きくゆっくりと揺らす「長周期地震動」。レベルによっては立っていられないほどの揺れをもたらします。この「長周期地震動」が2月1日から緊急地震速報に追加されることになりました。そんな中、高層階の揺れを慣性力を用いて抑える最新技術も開発されています。

1~2m揺れるおそれも…高層階で揺れが大きい『長周期地震動』

 2011年3月11日、ゆっくりと揺れる東京都内の超高層ビルの映像。大規模な地震の際に起きる「長周期地震動」と呼ばれる現象です。

 (リポート)
 「結構な揺れですね。やばいやばい。今、新宿の35階のビルですごい揺れを感じています」
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 地震の揺れが1往復するのにかかる時間を「周期」といい、長周期地震動は文字通り「周期が長いゆっくりとした揺れ」を意味します。ビルやマンションの高層階になるほど揺れが大きいのが特徴です。
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 また、長周期地震動は震源から遠く離れた場所にも伝わりやすく、実際に東日本大震災の際には大阪・南港にある大阪府の咲洲庁舎が大きく揺れ、破損やエレベーター停止による閉じ込めなどが起きました。
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 将来、南海トラフ巨大地震のようなマグニチュード9クラスの地震が起きれば、東京や大阪などの超高層ビルの最上階の揺れ幅は2mにまで達するおそれがあるとされています。工学院大学建築学部の久田嘉章教授に詳しく聞きました。

 (工学院大学建築学部 久田嘉章教授)
 「『超高層ビルはよく揺れる』ということを覚えておいていただけたら。超高層ビルは安全なんですけど、大きく揺れて人間のスケールから見るととんでもなく揺れる。何十cm、場合によっては1m~2m揺れる」
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 こうした現状を踏まえて、気象庁は2月1日から長周期地震動による被害が予想される場合にも緊急地震速報を発表します。

 長周期地震動の揺れの大きさには4つのレベルが設けられていますが、立っていることも難しくなる「階級3」以上の揺れが予想される地域に緊急地震速報を出して警戒を呼びかけるのです。震源近くの地域に緊急地震速報が発表された後、長周期地震動が予想される別の地域に追加で緊急地震速報が出されるケースも想定されます。

 では、長周期地震動の揺れに見舞われた場合、私たちはどんな行動を取ればいいのでしょうか。

 (工学院大学建築学部 久田嘉章教授)
 「超高層の建物そのものは耐震性は非常に高いので、ビルがつぶれるということはまず考えられないので、ビルの中にとどまる。あわてて非常階段で下りようとして、その後の揺れで階段を踏み外してけがをするほうがかえって危ないし、外に出ると落下物があったりする。あわてて逃げたり外に出たりしない方がいいです」

『慣性力』を活用した最新技術…おもりでブレーキをかける

 そんな中、長周期地震動の揺れを低減させるという最新技術が導入されたビルがあります。その舞台は「屋上」です。東京・恵比寿にある高層ビルの屋上に行ってみると…。

 (鹿島建設・建築設計本部 矢口友貴チーフ)
 「こちらが当社が開発しました『ディースカイエル』でございます。(Q大きいですね?)そうですね。450トンのおもりが3基ですので合計1350トンのおもりが配置されている装置ですね」

 鹿島建設が開発し去年夏に設置された「ディースカイエル」。鉄板を重ねて作られた重さ450トンのおもりが3つ。それらを「積層ゴム」という特殊なゴムで支え、さらに錘の下にはダンパーが張りめぐらされています。
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 大きな地震が起きた際、この装置がどんな機能を果たすのでしょうか。

 (鹿島建設・建築設計本部 矢口友貴チーフ)
 「地震が起こって建物が揺れ始めますと、建物から少し遅れておもりが動くような形になります。それが建物の揺れを打ち消すように動いて、あたかも建物に対してブレーキが働くような」
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 揺れが発生すると、「ディースカイエル」では慣性力いわば「その場に残ろうとする力」が生じ、おもりが少し遅れて動き始めます。結果、建物自体の揺れと逆方向の動きを繰り返すことで揺れを抑える効果が働くというわけです。
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 実際、東日本大震災の地震を再現したシミュレーションでも、「ディースカイエル」を設置することでこの高層ビルの揺れはすべての方向で半減し、揺れが続く時間も大幅に短縮されることが確認されています。またビル内での活動はそのまま行えてストップさせない点も屋上に制震装置を置くメリットです。今回の「ディースカイエル」の設置工事でもオフィスやレストランなどは通常営業を続けたといいます。

 (鹿島建設・建築設計本部 矢口友貴チーフ)
 「建物の内部に手を入れなくていいというところがありますので。屋上のみで工事が完結しますので、非常にニーズは高いんじゃないかなというふうに考えています」

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