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「実際の災害現場で絶対できなければならない」救助技術を競う『兵庫県警レスキュー大会』大会初出場の3年目巡査に密着

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 警察署対抗で行われる『兵庫県警レスキュー大会』。救助能力の向上が狙いで5年前にスタートしていて、災害時にいち早い現場対応が求められる主に交番勤務の警察官らが参加します。今年12月8日に兵庫県小野市で行われた大会には、県内46の全警察署から1チーム5人の計約230人が出場。それぞれの警察署が威信をかけて臨んだ戦い。大会2連覇中である甲子園署の中で、大会初出場である甲子園署の安井彩奈巡査(25)に密着しました。

レスキュー大会の出場メンバーに選ばれた3年目巡査

 今年11月中旬、兵庫県西宮市にある交番。警察官になって3年目の安井彩奈さんはここに勤務する甲子園警察署の巡査です。

 (安井彩奈巡査)
 「今日の勤務は出動が少ない方で、110番では2回ほどしか出ていないです。けがのない事故、物損事故というので出動しました」

 勤務は基本的に午前9時~翌日午前9時まで。丸一日勤務して次の日は休みというサイクルです。
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 午前10時前、24時間の交番勤務を終えてもまだやることは残っています。
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 (メンバーに話すチームリーダー 保田桂宏警部補)
 「今日はロープ結索。ここをまずやって」

 レスキュー大会には主に交番勤務の警察官が出場。安井さんも甲子園署の代表に選ばれました。大会まで1か月、ほかのメンバーとともに救助技術を磨きます。
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 【訓練の様子】
  (安井巡査)「もやい結び、よし」
 (保田警部補)「これちょっと緩いわ。硬いロープやったらきっちりと締めてやらんと」

 (安井彩奈巡査)
 「いろんな災害がいつ起こるかわからないので、そういう時のために身につけておかなくてはいけない技術だなと思います。しっかり練習して、みなさん一緒に選ばれたメンバーなので、一緒に優勝を目指して頑張っていきたいと思います」

リレー形式で様々な状況を想定した課題に挑む

 兵庫県では1995年に阪神・淡路大震災が発生。すぐに周辺の警察や自衛隊が救援に入り助かった命も多くありました。しかし、今後起こると予想されている南海トラフ地震では、被害が広い範囲に及ぶため、救援に頼ることは難しく、地域の警察官による救助の重要度は増しています。
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 そのため兵庫県警では、警察官の救助能力を底上げする狙いで、5年前にレスキュー大会を始めました。甲子園署はこの大会で2連覇中です。
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 大会では、水害を想定したロープの結索や土のうを使った防水作業のほか、地震を想定した障害物の除去やがれきの下敷きになった人の救出搬送などをリレー形式で行います。その速さを競いますが、作業の正確性も審査対象です。

本番コースを再現して訓練

 大会10日前、甲子園署の近くの高速道路の高架下に安井さんたちの姿がありました。ここで本番のコースを再現して、訓練の仕上げにかかります。
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 (メンバーに話すチームリーダー 保田桂宏警部補)
 「最初どれぐらいでいけるかというのを、今からタイムを取りたいと思います」
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 想定している優勝ラインは3分台前半。今の実力を測るとともに、改善が必要な箇所を探ります。

 【救助訓練の様子】
  (安井巡査)「大丈夫ですか」
 (保田警部補)「けい椎固定ね」
  (安井巡査)「これ首の前です。こうです」
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 ゴールしましたが…そのタイムは?

 (保田警部補)「なんぼ?」
 (タイムを計っていた人)「時間が…4分54秒です」

 優勝ラインには程遠い記録でした。
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 (保田警部補)「どこが一番時間かかると思う?」
  (メンバー)「みんながみんな何をやったらいいかがわからなくて、わちゃわちゃして手が空いている人がいたので」

 課題として浮かび上がったのが負傷者の救出。それぞれの役割分担がうまくできず時間を費やしてしまいました。本番では誰が何を担当するか直前まで知らされないルールです。どの担当になってもスムーズに連携できるように訓練を繰り返します。

 (保田警部補)「訓練の時は人形やけど、生体のつもりで声をかけて」
  (安井巡査)「はい」
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 (安井彩奈巡査)
 「(先輩たちが)いろいろと『こうしたらどうですか』みたいな意見を出してくださるのですごいなと思います。要救助者の方が一番大事なので、そこをしっかりやらないとなという感じですね」

 本番が翌日に迫った12月7日。訓練の成果を確かめる最後のタイムトライアル。甲子園署長も視察に訪れ、熱が入ります。

 そしてタイムは3分21秒。優勝ラインとして想定する3分台前半を達成しました。

 (安井彩奈巡査)
 「だいぶスピードが上がってきて安定してきていると思います。緊張はすると思うんですけど、しっかり落ち着いてできるようにすれば大丈夫かなと思います」

迎えた大会当日

 迎えた大会当日。しかしここで想定外の事態が。

 (保田警部補)「この期におよんでこれ」
  (メンバー)「2(の役割)が一番きついんやけどな」

 発表された役割分担で安井さんが最も体力的な負担が大きい担当だったのです。1つ10kgの土のうを両手に持って走らなければいけません。
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 (安井彩奈巡査)
 「大丈夫だとは思うんですけど、緊張は倍になりますね」
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 (メンバーに話すチームリーダー 保田桂宏警部補)
 「一発勝負なので。やってきたことを出すだけなので気合い入れていきましょう」
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 甲子園署の順番がやってきました。

 合図と共に競技開始。競技は3チーム同時に行われます。安井さん、土のうの運搬もしっかりとこなし、1位で前半を折り返しました。
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 (保田警部補)「いいペース、いいペース」

 直前に決まった役割分担にも混乱はありません。
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 同時に競技した3つの警察署の中では1位でゴールしました。しかし、なぜか応援するメンバーに笑顔はありません。
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   (審査員)「タイムはこの通りです」
 (保田警部補)「だいぶん遅いですね…。やばいな」

 結果は3分54秒。前日より30秒以上も遅いタイムに言葉が出ません。

「実際の災害現場ならこういったことは絶対できなければならない」

 その日の夜。

 (甲子園署 横田誠治署長)
 「残念やった。1位は伊丹署、2位宝塚署、その次がうち」
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 惜しくも3位(大規模署の部・22署が出場)。3連覇はならず悔しい幕切れとなりました。それでも安井さんは前を向きます。

 (安井彩奈巡査)
 「今回は大会のために訓練をしていたんですけど、実際の災害現場であればこういったことは絶対できなければならないことで。今回いろいろやらせてもらって、知識や技術は身についているので、そういった部分では今後の警察の業務に生かしていけるかなと思います。もし来年もまだ甲子園署にいて機会をいただけるのであればまた頑張りたいなと思います」

2022年12月14日(水)現在の情報です

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