2022年03月22日(火)公開
「切りすぎでは?」城跡がある公園で1600本以上の樹木を相次いで伐採...地域住民は中止を訴え 兵庫県は今後も伐採を継続
特盛!憤マン
兵庫県明石市にある県立明石公園の中で、数年前から“黒ずんだ切り株”が目に付くようになったといいます。園内では約1000本以上の樹木が切られていて、切られた樹木が集中している場所が築城400年の明石城跡です。その周辺の樹木伐採について、地域住民らからは「切りすぎちゃう?」という困惑の声があがっています。
櫓の周囲にあった樹木などが伐採される
植物研究者で「明石公園の自然を次世代につなぐ会」の代表・小林禧樹さん(79)は、兵庫県立明石公園で起きる異変に怒りを募らせています。
(植物研究者 小林禧樹さん)
「この辺りはかなりいい林をつくっていてね。それが一気になくなってしまった。(Q切り株が黒くなっているが?)薬を塗っちゃっている。だからこれで枯れるようにしているわけ。この地図の赤い丸で示したのが切られた木。実際はもっとずっと全域でやってる。ここだけでたぶん300~400本くらいありますよ。どこが必要でどこが不必要とか考えることもなしに、全部一律に」
明石公園の敷地内にある国の重要文化財・明石城跡。石垣の上に立派な櫓(やぐら)が佇んでいます。
2018年に撮影された明石城跡周辺の映像を見ると、櫓の周囲を覆うように自然が広がっています。
今年3月中旬に撮影された映像を確認すると、櫓の周囲にあった樹木のほとんどが伐採されています。
(植物研究者 小林禧樹さん)
「根っこが石垣に入り込んで石を崩すというような言い方ですよね。石垣と樹木との関係はそう単純じゃなくて、石垣を守っているという面もあるんです。これはありえないだろうなと思っています」
市民や市長が伐採の中止を訴える
樹木の伐採は明石城築城400年を前に兵庫県が策定した計画でした。県によりますと、成長した木の根が石垣の間に入り込むなどして崩れる可能性があるとして「石垣から5m範囲内の樹木は原則伐採」。さらに、景観を保つために「眺望を妨げていた木も伐採する」として、2018年に始まりました。これまで伐採された木は1672本に上っています。
市民グループは「切りすぎではないか」として、明石市民ら2万筆を超える署名を集めるなどして伐採の中止を訴えてきました。
そして、明石市の泉房穂市長も兵庫県庁に乗り込み、これ以上の伐採はやめるよう訴えました。
(明石市 泉房穂市長 今年1月)
「やっぱり切りすぎだと思いますよ。漫然とこれ以上樹木伐採を続けることは多くの市民・県民の理解を得られないと考えています」
これに対して県は、そもそも計画の策定にはオブザーバとして明石市も参加していたと主張しています。
県の担当者「必要な公園管理はしていかなければいけない」
今後の計画について、取材班が担当者に話を聞きました。
(兵庫県まちづくり局公園緑地課 北村智顕課長)
「(Q樹木の伐採は必要で変わりない?)必要なものがあると思っております。都会の中の貴重な自然の空間だと思っております。ただし、明石公園は自然のためだけではなくて、文化財もありますし、スポーツ利用、様々なレクリエーション利用があります。安全の確保もしなければいけません。樹木伐採であるとか必要な公園管理はしていかなければいけないと考えております」
県は今後も、さらに240本を伐採するとしていますが、市民団体代表の小林さんは計画の進め方に疑問を呈しています。
(植物研究者 小林禧樹さん)
「5m以内の木は全部切る根拠が全然わからない。検証して、どうしても危険だという場合には伐採することも時には必要かもしれないけど、この辺の木に関してはまず考えにくいです。木は木だけで生きているわけじゃないから、鳥が来て虫が来て。まったく環境が変わってしまう」
二条城周辺のマツが次々と伐採される 近所の住民は困惑
景観や保全を理由に伐採される樹木。古都・京都にある世界遺産「二条城」の周辺でも“ひと騒動”起きていました。二条城の近くに住む小林篤さん(54)は、去年12月ごろから二条城の東側に並んでいた「クロマツ」などの街路樹30本ほどが次々と伐採されたといいます。
(小林篤さん)
「この木が一番大きかったと思うんですけど、それを切らはって、何をするんやというふうに僕は思ったんですよね。もうちょっと景観のことをほんまやったら考えてほしいっていうのがあるのと、切っていることに不信感を持っている。たとえば、生きているものに対して敬意がないとか」
伐採前の様子と比べると、生い茂っていた緑はなくなり、寂しい光景が広がっています。植わっていたマツは高さが9~18mで、樹齢は35~45年と決して老齢とはいえない中でなぜ伐採したのでしょうか?
植え替えには京都市が抱える「財政難」も影響か
管理する京都市によりますと、4年前から二条城東側の東堀川通で約1.4kmにわたって植わっていたクロマツなどの街路樹を伐採し、サクラに植え替える計画を進めているといいます。一体なぜ、「クロマツ」ではなく「サクラ」なのかでしょうか?
(京都市建設局みどり政策推進室 岩村謙次緑化推進課長)
「(マツが植わっていた)植樹帯(花壇)の幅が狭いんですよね。特に東西方向から強い風を受けると倒れて東堀川通をふさいだりとか、歩行者とか沿道の家屋に甚大な被害を及ぼす。そういうこともあるので、サクラに植え替えさせていただきました」
現場は花壇の幅が狭く、台風などで倒れる危険性が高いため、サクラに植え替えると話しました。しかし、地元住民の小林さんは、マツは定期的に剪定などが必要でコストを考えたのではと話します。
(二条城の近くに住む小林篤さん)
「本来であれば二条城に合わせてある程度マツの植栽とかも必要であるんやろうけども、なんとなくサクラに植え替えたら春になって花が咲いたら華やかでいいというイメージだけで作ってはって、市長自身もお金があればもっと違うことをやりたいと考えていると思うんです」
京都市が抱えている「財政難」がマツの伐採に影響しているのではというのです。これについて市の担当者は…。
(京都市建設局みどり政策推進室 岩村謙次緑化推進課長)
「マツの剪定は通常の街路樹に比べてかなりコストがかかります。そういうこともありますので、なかなか定期的な管理が行き届いてないというところもありますね。(Qコスト面も理由としてある?)そういうことですね。なかなかコストがかかるということで、定期的な剪定ができておりません」
関西の名所で巻き起こる樹木伐採をめぐる問題。景観や保全はもちろん大切ですが、地元の人に愛された、時にシンボルであることも忘れてはいけないのではないでしょうか。
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