MBS 毎日放送

2018年10月18日 11時30分 公開

鉄道シミュレータ開発に駅メロ作曲「鉄ちゃん界の神様」の正体は元伝説的バンドマン!?

1980年代に一時代を築いた伝説的フュージョンバンド『カシオペア』の元キーボード奏者にしてカリスマ鉄道マニアとしても知られる向谷実。鉄道好きが高じてバンド活動中から鉄道シミュレーションゲームの開発を始め、改良を重ねたシステムはやがて鉄道会社が職員のトレーニング用として正式に採用するまでに。10月7日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、世界初の実写を使った鉄道シミュレータ開発の舞台裏と、このシステムをひっさげ向谷たちが世界最大の鉄道技術見本市に挑む姿が放送された。

しかしなぜ超一流ミュージシャンから鉄道界へ?

まずは向谷の変遷を辿ってみる。東京都世田谷区生まれの向谷はターミナル駅「二子玉川」で育ち、4歳で鉄道に夢中になる。その一方で5歳で習い始めたピアノも瞬く間に上達し、20歳の頃に当時まだアマチュアバンドだった『カシオペア』にキーボード奏者として加入。80年代、フュージョンの全盛期を駆け抜けた。そして音楽活動の傍ら、培ってきたコンピュータ技術を駆使し趣味で鉄道シミュレーターゲームの開発を始める。思い込んだらとことん追求...ゲームの枠を飛び出し、なんと1995年に世界初の実写を使った鉄道シミュレータを開発してしまったのだ。

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その魅力はなんといっても再現性の高さだ。左右の車掌用モニターと運転士用モニターに流れる実写映像はピタリと連動し、音の臨場感はさすが本職、何ともリアルだ。最後尾の車掌と先頭の運転手、さらには司令とも連携してトラブル対応まで訓練できるシステムは世界でも類がなく、マニアの間の評判を聞きつけたJR東日本が職員訓練用システムとして正式に採用したことで業界に激震が走った。

(JR東日本 運輸車両部長)
「非常に現実に即したリアルなシミュレーターということで、確実に乗務員の安全に対するレベルを高めてくれたという手応えを感じています」

現在、全国43の路線で活用されてる向谷の「鉄道シミュレータ」その最新システムの開発の裏側を見せてもらうことに。

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向谷が代表を務める「株式会社音楽館」(東京・五反田)では、目下従業員80人余りが鉄道各社に向けた業務用シミュレータの開発などに取り組んでおり、モニターに映し出される実写は、向谷自らが実際に運行している車両に乗り込み撮影を行っている。
使用するカメラは、前後左右合わせて6台。最後尾には車掌の目線を記録するカメラを、先頭には運転士の目線を記録するカメラを固定し、実際の運行とまったく同じ光景を収録する。駅に入線するときは、対向車線ですれ違う車両がカメラに写りこまないように、ホームがカラになるチャンスを狙って何度も同じ区間を走ることになる。撮影が完了すると、今度は「サウンド制作室」へ。収録した現実の音だけではリアルさは生まれないため、遮断機・対向列車の通過音を少しだけ追加し臨場感を高めていく。音楽家である向谷はとりわけ音に気を配るのだ。一流ミュージシャンの感性が、こうして細部に宿っていく。

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世界の鉄道プロが拍手喝采した圧巻のデモンストレーション

日本の鉄道会社は、実際の運行に関しては世界でも類を見ない正確さを誇るが、果たして向谷が開発したシステムは、海外の鉄道のプロたちにどう評価されるのだろうか。それを確かめるべくJR東日本の職員らと向かったのは、「イノトランス(国際鉄道技術見本市)」(ドイツ・ベルリン)。世界60か国、約3000社の企業が参加し、述べ14万人以上が来場する世界最大の鉄道見本市だ。向谷はここで、自らのシミュレータを使ったデモンストレーションを行う。

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もっともアピールしたいのは、危機管理と安全確保への配慮だ。向谷のシステムは、起こり得るあらゆるトラブルを想定した多彩なプログラムが組み込まれている。例えば、乗客がドアに荷物を挟まれたようなケースや、凄まじい豪雨、地震発生時の緊急停止、接触事故など、ざっと100近いアクシデントを起こせるという。しかもそういったトラブル時に運転士と車掌、司令が連携して対処する訓練システム自体が世界初だ。

会場に入ると、他国の鉄道シミュレーションの展示があったが、映像はCGでありリアリティでは向谷たちに及ぶべくもない。
そして各国の鉄道プロたちが注目する中、JR東日本のデモンストレーションが始まった。
映像や音の臨場感に加えて、運転士と車掌、司令が連携した危機管理システムの流麗さに人々はたちまち釘付けに。思いがけず拍手喝采まで沸き起こる盛況ぶりだ。

(ドイツ企業)「私たちのシミュレーターはアニメなのでここまでリアルじゃない。すごいアイデアだね」
(イタリア企業)「革新的で興味深かった。イタリアにも導入できるかもしれません」

向谷が海外勢からの質問に応じていると、商談を持ちかける企業が・・・。

それは、インド最大の財閥グループだった。

(インド企業)
「明日我が社の最高責任者がきます。彼にシミュレーターのことを教えてほしい」
どうやら、商談が動き出しそうだ。

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開発者として鉄道界の未来を見据えつつ、向谷は現在もミュージシャン活動を続けている。

(向谷)
「最近は、時たまピアノなんか引きますと、お上手ですねと言われます(笑)」

向谷にとって仕事とは、遊びなのかもしれない。
《好きこそものの上手なれ》
先人の言葉は、この男のためにある。

「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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