MBS(毎日放送)

2018年09月28日 16時00分 公開

「お袋に抱きしめてもらいたい」ボランティア尾畠さんの涙と被災地へ行く理由に大反響

この夏、行方不明の2歳児発見で一躍時の人となったボランティアの尾畠春夫。報酬は一切受け取らずに全国の被災地で活動を続ける78歳だ。彼は一体なぜここまでして人助けに勤しむのだろうか。9月23日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」で、その理由が小学生の時に死に別れた母親への想いが関係していると本人によって明かされると、ネット上には「神回!」「自分にはこんな生き方ができるだろうか」「まさにスーパーボランティア」など絶賛するコメントが相次いだ。

連日ニュースで報道される姿とは異なる「誰も知らない尾畠さん」

取材は尾畠の居場所を探すことから始まった。携帯電話は持たない主義。目撃情報によると、どうやら西日本豪雨で大きな被害を受けた広島県呉市天応地区の復旧を手伝うために自宅のある大分から車で現地入りし、避難所となっている小学校に停めた車で寝泊まりしながらボランティアを続けているという。

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スタッフ
「はじめまして・・毎日放送の情熱大陸という番組で取材に伺ったんですけど・・・」
尾畠
「3時か4時くらいになったら作業終わりますから、それ以降やったらここでお話させてもらっても結構ですけど」

カメラの前でもごくごく自然体。密着取材の条件は「作業を決して妨げないこと」ただ一つだけだった。こうして尾畠への取材の日々がスタートした。

毎朝、ボランティアの窓口が開くのは午前9時だが、開始から3時間も早い午前6時から尾畠の作業は始まる。一人で向かったのは豪雨の時に土砂や瓦礫が流れ込んだ川。川べりに流れ着いた衣服を丁寧に洗って泥を落とし、人目につきやすい場所に並べていく。これは、行方不明者の家族がこの衣服を見つけた時に「うちの母ちゃんが着とったエプロンだシャツだ」と気づくかもしれないからだという。
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9時になると、今度は一般ボランティアと10人1組となり被災家屋へ。今なお土砂が残ったままの家屋の床下へもぐり込み、ヘドロを次々とかき出していく。
身長は160㎝と小柄なうえにチーム最高齢の78歳だが、それでも尾畠はきつい仕事をすすんで引き受ける。常に被災者に寄り添うようにして声をかけ要望を聞き出し、仲間たちに作戦を指示し、時には、経験が浅く動きが硬いボランティアを得意の下ネタジョークで和ませる。
休憩時間になると疲れた仲間たちに塩飴を配りながらねぎらうが、尾畠自身は休むことなく次の作業のための準備をもくもくと進める。「ボランティアは段取りが7割」それが尾畠の哲学なのだ。

ようやく昼休みになり、尾畠が車に戻ってくると、地元の人が尾畠を待ち構えていた。
「午前中、母に焼いてもらって、(尾畠さんが)昼食べるのに間に合うように」と手渡されたのは、地元からの感謝をこめた「広島風お好み焼き」だった。

(尾畠)
「ええっ!・・・すみません」

驚いたあとしばし無言となった尾畠。深々と頭をさげ、よく見ると涙を流していた。その様子に地元の人も思わずもらい泣き・・。
人につくすことは得意な尾畠だが、こんな風に誰かから好意を受けるとうろたえてしまうのだ。

《かけた情けは水に流せ 受けた恩は石に刻め》という言葉を、尾畠はその胸に刻んでいる。

(報酬)1000万円と言われても要らない。欲しいのは亡き母の抱擁だけ。

一体なぜ、そこまでボランティアに打ち込めるのか。

尾畠の人生は、苦労続きだった。
家は貧しく、小学5年の時、農家に奉公に出された。働きづめで中学校には3年間で4か月しか通えなかったという。

中学を卒業すると、魚屋の見習いとして、別府、下関、神戸を渡り歩き、10年間、修行を積んだ。その後別府で魚屋を開き、仕事のかたわら近くの山の登山道の整備を始めた。それが最初のボランティアだった。
店をたたんだ65歳からは被災地のボランティアに専念し、東日本大震災の時には南三陸町で500日にわたって活動を続けた。

そしてこの夏、山口県で行方不明の二歳児を保護すると一躍時の人になる。以来、講演やメディアの出演依頼も殺到しているが、有償のものは基本的に「お断り」。

(尾畠)
「10万円じゃろうが、100万円じゃろうが、1000万円でも私はいらない」

そう断言するには理由があった。

(尾畠)
「変わるのが怖い。恩返しさせてもらいたい、なんでもやらせてもらいたいという気持ちが、揺らぐのがこわいから(報酬は貰わない)」
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現在2人の子どもも独立して年金生活。食事は自炊で気ままな一人暮らし。
しかし、何か一つ欲しいものはないのか。
そうたずねると、尾畠は溢れ出す涙とともに、60年以上胸に秘めて来た言葉を口にした

(尾畠)
「もう78になるけど、おふくろに思い切り抱きしめてもらいたい」

尾畠がたったひとつだけ欲しいもの。
それは、小学5年生の時、突然病気でこの世を去った自慢の母・富日(とみか)さんに甘えたいという願望だった。

「多分、今現在やってることも、行動言葉諸々のことをウチのお袋はじぃっと、オバタハルオのこと見てくれてると思う。だから、いつか自分が逝った時に、お袋から思いっきり、背中の骨が折れるくらい、胸のあばら骨が折れるくらい抱きしめてもらいたいね」

それが尾畠の情熱の源泉。「健康である限りボランティアを続ける。どこで何が起きても」
そう誓う尾畠は来月、79歳の誕生日を迎える。
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「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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