MBS 毎日放送

2018年09月15日 11時00分 公開

日本人が知らないシリア難民キャンプの子どもたち

シリア国境からわずか15キロの場所にあるヨルダンのザータリ難民キャンプ。東京ドーム112個分の敷地に、紛争の戦火から逃れて来た8万人を超える難民が暮らしている。この地で国際協力団体「国境なき子どもたち」の現地責任者として、紛争や避難生活で傷ついた子どもたちに音楽や演劇、美術などの情操教育を通じた心のケアをしているのが38歳の松永晴子だ。9月9日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、シリア難民キャンプが抱える厳しい現実と、荒れる子どもたちを前に奮闘するアラフォー女性のリアルな姿を放送した。

綺麗ごとでは済まない支援の現実「そんな簡単なもんじゃねえぞ」

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2011年から内戦状態に陥ったシリアだったが、7年が経った今も戦争終結のメドは一向に立たない。先の見えない不安が人々を無気力にさせ、子どもをほったらかす親も少なくないという。そんな環境下で、子どもたちの中には「自分さえ良ければいい」という考え方がはびこり、気に入らないことがあれば殴る蹴るは日常茶飯事。授業中もじっと座っていられず、教室を出ていく子どももしばしばだ。砂塵舞う中、現地の教師4人を率いて授業計画を立てる松永は、苦手だと言うアラビア語を駆使しながら、時に筋の通らないやりとりに怒り、大声を出しながら子どもたちと真剣に向き合っていた。支援は決して綺麗ごとではすまされない。

(松永さん)
「寄り添うっていう言葉、大嫌いなんですよ。そんな簡単なもんじゃねぇぞって」

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混沌としたヨルダンの地で女ひとり、悪戦苦闘する日々を2か月間カメラが追い続けた。

絵が語る心の闇。国が崩壊するさまを描く子どもたち

14歳の少女が作った絵本がある。自分の身に起った出来事などを文章と絵で表現した作品だ。

「緑色とバラの木に恵まれた小さな村で、幸せと愛情に覆われて人が住んでいました。その国の名前が、シリアでした。しかし、国のいたるところで、暴力と殺し合いが始まり、天国から地獄へ、国が悪魔の支配に落ちてしまいました」

ある子どもは目の前で起こった「悲劇の記憶」を。ある子どもはシリアの地図から鳥が逃げだし、国が崩壊していく様を描いていた。それを見たとき、彼らの心に負った傷の深さを思い知らされたと松永は言う。子どもたちは今も、無残に家を破壊され目の前で肉親を殺された心の傷跡を抱えたまま、隔離されたキャンプから出ることもできず未来が見えない日々を過ごしているのだ。

あげたいのはモノではない「物のバラマキ支援は大嫌い」

日々葛藤し、自問自答しながら授業を進める松永だったが、騒ぎが起こったのは夏休みの課外授業も残りわずかのある日だった。ヨーロッパの支援団体が人形や菓子、ジュースなどのプレゼントを配りに来たのだ。普段授業に参加していない子どもたちが大勢押し寄せ、教室にいた子どもたちも授業そっちのけでプレゼントに大喜び。この騒ぎによって、松永たちの授業が中断してしまう羽目に...。

(松永さん)
「私はディストリビューション(無料配布)大嫌い。モノをあげるのが普通で、(子どもたちも)それが当たり前だと思ってる」

とはいえ、この支援も善意によるものだということはわかっている。子どもたちに与えられた機会を奪うわけにもいかないが、松永が与えたいのは、モノではない。子どもたちが大人になった時に、自分の力で生きていくための「何か」なのだという。

ある日本の絵本をきっかけに、荒れた子供たちの発言に変化が・・

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心に抱えた闇を問題行動という形で表現する子どもたち。松永は自分たちの授業を通じて仲間と助け合うことを覚えて欲しいと考えていた。この日、教材にしたのは『窓をひろげて考えよう』(下村健一著)という日本の絵本。物事を色々な角度から見ることを学ぶ絵本だ。

例えば、「人里にクマが出た」というニュース。人間のキャスターは、人が怯えクマを排除しようとする姿を伝えるのかもしれないが、それはあくまで人間の立場からみた見え方。クマの立場で考えるとどうなる...?絵本がめくられるにつれ、いつもはじっとしていられない子どもたちが静かに聞き始めた。
「クマのキャスターは何と報道する?」子どもたち「人間が攻撃してきた!」 「人間が正しい」「クマが正しい」「どっちも正しくない!」

夢中で発言する子どもたち。次第に、クマと人間が共存するためにはどうすれば良いのかという解決策を考え始めた。この授業のあと、彼らの中に何かが残るのだろうか。

(松永さん)
「30人いて、27、8人がわからなくても2人だけとか誰かの心に引っかかったりする。打率はそれくらいでいいのかな」

松永が日本を離れてもう9年。異国の地で教育支援をするという、正解もなく終わりもない仕事に向き合いながら、松永はきょうも子どもたちに本当に必要なものは一体何なのかをこの地で考え続けている。

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「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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