自らもジェット戦闘機に同乗し、高度1万メートルの上空で被写体と同じスピードで飛び、奇跡の一枚を生み出す航空写真家の徳永克彦が、7月15日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」でその凄腕を披露。スイスの大空で繰り広げられる「空対空撮影」の真髄に、写真ファンのみならず多くの視聴者が息を呑んだ。

本来、撮影不可のスイス空軍基地内部を特別に取材

戦闘機に乗ることを許された写真家は世界に3人しかいないと言われている。そのうちの1人、航空写真家の徳永克彦はダイナミックに飛び回る戦闘機やアクロバット機を誰よりも美しく撮るカメラマンとして、世界中の航空写真家の頂点に君臨する存在だ。

その真骨頂は、"飛ぶ前に撮影は終わってる"とも言われる入念な準備だ。機体の飛行特性を知り尽くしたうえで速度・高度・太陽の位置に旋回の重力、さらには背景となる地形や建物の角度まで徹底的に予測し、飛行機の流麗なフォルムをより力強く、美しく表現できる「最高の一瞬」をファインダーの中に作り出すのだ。

今回放送されたのは、スイスのアクロバットチーム「パトルイユ・スイス」のPR写真を撮影する舞台裏。空軍基地の取材は滅多に許可されないが、今回は徳永の信用で特別に取材が許された。打ち合わせを覗いてみると、実はどんな隊形で、どこをどう飛ぶのか、全てはカメラマンである徳永に一任されていることに驚く。被写体は6機、全部で17のプログラムを1時間の飛行でこなさなくてはならない。飛び方の指示をパイロット一人ひとりに明確に出していく。

「私の機と間隔を取り、少し高度を上げて、君が機体をナイフのように鋭く立てる。レーダーを見ながら位置をキープする必要はない。1秒以内で私は写真が撮れる」

指示されたパイロットが思わず苦笑いしたのは、徳永の注文が普段のアクロバット飛行よりよほど細かいためだ。

カメラマンは美女がお好き？ロマンスグレーな素顔
世界の大空を飛び回る徳永が、3カ月ぶりに日本に帰国した。今回の滞在はわずか1週間。空港まで出迎えに来た妻からは、撮影中の厳しいイメージとは異なる一面が明かされる。

「連絡をとってもマメにしてくるんです。撮影に行く前とか夜も食事終わってホテルに戻ってきたら、用は無くても連絡してくる。」

自らの性格について「シャイで人嫌い」と言う徳永だが、20年来の付き合いというライターの女性らに囲まれての食事会ではこんな証言も飛び出した。

「本当はシャイじゃないと思いますよ。徳永さんはフェイスブックで3回に１回は各国の美女との写真をアップしてる。飛行機、飛行機、美女（笑）」

束の間の日本滞在。過酷な撮影現場を離れ、この日の徳永はくつろいだ表情を見せていた。

6月、舞台は再びスイス。今度の仕事は、民間の最新型飛行機の撮影だ。
背景を大切にする徳永は、広角レンズを使う。そのために、被写体に接近しなくてはならない。被写体が垂直に飛行すれば、徳永の機体も垂直だ。カメラを抱えた腕にも数十キロの"G"がかかる。光と背景を巧みに操り、音速の美をとらえる徳永の技術は神業と賞賛され、各国の空軍や航空会社から仕事のオファーは絶えない。

「彼は信じられない背景に飛行機を正しい位置に配置する目と知識がある」
「徳永は完璧な写真家だよ。光、色合い、状況判断が独特なんだ」

航空機メーカー担当者やパイロットらが絶大の信頼をおくのには、技術の高さだけが理由ではないようだ。徳永はこう分析する。

「写真がうまくて求められているということ以上に重要なのは、やっぱり安全に一緒に仕事ができることを向こう（クライアント）に納得してもらえていることが一番大きんだと思います」

全てにおいて「安全」を優先しながら、この日も太陽光を巧みに使い新型機の性能を見せつけるかのような躍動感あふれる1枚を見事に切り取った。
徳永が写真家として最も大事にしているのは、オリジナリティなのだそうだ。「常に少しはチャレンジな部分がないと（ダメ）」。30年の実績を持つ"天を翔る写真家"は、さらなる新境地を目指している。
放送後、SNS上では「素晴らしすぎて鳥肌が立つ」「思わずテレビに釘付けだ！」など、その神業にため息が漏れたかという賞賛のツイートが多く寄せられていた。

「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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