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多発するゲリラ雷雨 今夏の発生予想はなんと「7万回超」⁉ 命と安全を守るために... 予測技術の最前線 【前田智宏気象予報士が解説】

解説

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統計開始以降最も早い「梅雨明け」となった近畿地方。これから心配なのが、近年多発している「ゲリラ雷雨」です。なぜ夏に多く発生するのでしょうか? 前田智宏気象予報士が、ゲリラ雷雨のメカニズムや最新の予測技術を解説します。

ゲリラ雷雨が夏に増えるワケは?

 ゲリラ雷雨発生のメカニズムです。まず、暑さによって地表が暖められると、地面付近の空気が暖められます。ここで、地表と上空の温度差が大きくなるのが重要なポイントです。

 暖まった空気は軽いため、どんどん上昇していきます。これはエアコンをつけた室内を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。夏に冷房をつけると冷たい空気で足元が冷え、冬に暖房をつけると暖かい空気で頭がボーっとした経験が皆さん、あるのではないでしょうか。

 空気が上昇する際、雨雲の材料である水蒸気も一緒に上昇し、空の高いところで冷やされて、再び雲として目に見える形になります。

 このとき、上空が冷たければ冷たいほど、雲が成長し、積乱雲が沸き立ちやすくなる=雷雨が起きやすくなります。たとえば、7月2日の大阪の最高気温は35.4℃で、上空約5500mは-6℃。「40℃以上」の温度差があると積乱雲が発達しやすいため、2日の大阪の天気は、まさにゲリラ雷雨が発生する好条件でした。

「大気の状態が不安定」天気予報で聞いたら要注意!

 天気予報で「大気の状態が非常に不安定」という言葉を聞いたことはありませんか?この言葉が出たときはカミナリ雲が発生しやすい状況になっているため、要注意だと認識してください。

 ただし、カミナリ雲が発生しやすい状態だということは伝えられても、ゲリラ雷雨は発生範囲が非常に狭く、いつどこで起こるかを正確に伝えることは、現在の技術では難しい現状もあります。

今年は「7万回超」のゲリラ雷雨が発生!?

 それでも、事前にゲリラ雷雨の情報をキャッチするべく、さまざまな技術が発展してきています。

 まず、民間の気象会社「ウェザーニューズ」では、今年の7月~9月(92日間)に、全国で「7万8270回」のゲリラ雷雨が発生すると予想しています。近畿6府県では以下のような予測です。

大阪:440回
兵庫:1780回
京都:1140回
奈良:1180回
和歌山:1120回
滋賀:870回

 例えば京都の数字を見ると、92日間で1140回降るということは、1日に約12回、京都のどこかでゲリラ雷雨が発生する計算です。数年前と比べても増加傾向です。

 ウェザーニューズは長期的な予測だけではなく、カミナリ雲の接近情報などを迅速に伝えるために、AI技術も導入しています。全国に2500台のライブカメラを設置し、その映像をAIに解析させ、カミナリ雲の発生や接近を自動で判定しているのです。従来は全て人の目で監視して伝えていたということですが、AI導入により、いち早くカミナリ雲の動きを伝えることができるようになっています。

高性能レーダーでカミナリ雲発生をいち早くキャッチ!

 さらに注目の技術が、最先端の気象レーダー「フェーズドアレイ気象レーダー」。情報通信研究機構(NICT)や大阪大学などが開発していて、1回転で広い範囲の雨雲をすき間なく“面的”にとらえることができる高性能レーダーです。観測にかかる時間が従来のレーダーと比べて10分の1以下だといいます。
 

万博会場上空の“カミナリ雲の卵” 最先端レーダー2台がかりでキャッチ!

 この夏、このフェーズドアレイ気象レーダーを用いて、関西の空を2台がかりで“監視”する実証実験が、大阪・関西万博の会場で行われています(期間は万博開催の4月13日~10月13日)。

 フェーズドアレイ気象レーダーは大阪大学の吹田キャンパスやNICT未来ICT研究所(神戸市)に置かれていますが、万博会場の上空について2台同時に観測することによって、ゲリラ雷雨を生むカミナリ雲の“卵”を迅速にキャッチしようという試みです。

 さらに8月5日~8月31日は、スーパーコンピュータの「富岳」も利用し、さらに高精度な予測を行う実験が万博会場で行われます。

 実は、フェーズドアレイ気象レーダーで観測した雨雲の様子は、無料アプリ「3D雨雲ウォッチ」で見ることができ、お住まいの地点などを登録すれば、降雨予測をプッシュ通知で受け取ることもできます。

 最新のツールも使いながら、ゲリラ雷雨から身を守ってほしいと思います。

2025年07月02日(水)現在の情報です

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