2025年09月08日(月)公開
【初密着】110番通報を受ける『大阪府警・通信指令室』 約2割は"迷惑通報"など緊急性なし「何千回も同じ内容でかけてくる」 それでも府民の命を救うため「どんな声にも耳を傾ける」
特命取材班 スクープ
3500件。これは、大阪府内で1日にかかってくる110番通報の件数です。この多数の通報に24時間365日耳を傾け、現場に警察官を派遣しているのが大阪府警の「通信指令室」。今回、初めて密着取材が許可されました。 「迷惑通報」に頭を悩ませながらも、全ての通報と向き合う指令室員たち。その思いとは?
「事件ですか?事故ですか?」最年少の女性指令室員・角田巡査長
昼夜を問わず110番通報の対応に当たっている、大阪府警本部の「通信指令室」。府民からのSOSを聞き、現場に警察官を派遣する“初動捜査の司令塔”です。
(指令室員)
「おでこから血が出てるんですか?指がどうなっているんですか?救急車いりますか?」
「『顔見知りの男に数回殴られた』との申告。指令番号1379。至急派遣どうぞ」
「ひき逃げ事件発生。本件発生に伴い、全域緊急警戒が発令された」
大阪府警の通信指令室に配属されて2年目の角田綾香巡査長(29)は、総勢100人いる中で最も若い指令室員です。ヘッドセットを装着し通報対応に入ります。
(大阪府警・通信指令室 角田綾香巡査長)「110番緊急電話です。事件ですか?事故ですか?おばあちゃんがどうされたんでしょうか?」
入ってきたのは、自転車に乗った高齢女性が転倒したという110番通報です。モニターに住所を入力して地図を表示。聞き取りをしながら同時にメモもとります。こうして1件1件通報を受けていきます。
続いて入ってきたのは、寝屋川市内で車がバイクに当て逃げされたという通報です。
(角田綾香巡査長)「発生5分前の当て逃げの被害申告。被害者は黒色の車、被疑者は2人乗りの赤色の小型スクーター。現場より守口方向へ逃走」
角田さんは、地図で近くにいる警察官に急行するよう指令を出しました。取材班も現場に向かうと、通報の通り、前方部分が破損しボンネットが浮き上がった黒色の車が。警察官が被害者から当時の状況を聞くなど迅速に捜査を始めていました。
「練習すればするほど絶対に上手くなる」勤務時間の合間に訓練
大阪府警本部の通信指令室には、府内全ての110番通報が入ります。その数は1日で3000~3500件。約25秒に1件、通報が来ている計算になります。
膨大な通報に素早く正確に対応することが求められる指令室員。勤務時間の合間には、訓練を行っています。取材した日は、走行中の列車内で殺傷事件が発生したという想定です。
(上司)「この110番が入りました、指令してください」
(角田綾香巡査長)「現在、青葉駅付近にて殺人様事件入電中。防刃チョッキ・防刃手袋の完全着装。受傷事故防止に十分配意したうえ、被疑者の確保に当たれ」
角田さんはまず容疑者の確保を指令しましたが…
(大阪府警・通信指令室 小木寛史警部)「これ指令するとき、何がテーマかな?何をせなアカンかって言ったら、人命が最優先。119番通報と避難誘導をまず(指令する)。その次に、やっと犯人の確保、被疑者の確保やな」
“初動捜査の司令塔”として現場の警察官に何を伝えるべきか。常日頃から研鑽は欠かせません。
(角田綾香巡査長)「練習すればするほど絶対に上手くなるので。自分はまだここ足りてないんだなとか、そういったところも分かるので、訓練はすごく重要だなと思います」
相次ぐ無言電話「もしもーし。応答がなければ失礼しますね」
1つ1つの通報に真摯に向き合っている指令室員が今、頭を悩ませているのが「無言電話」。
(角田綾香巡査長)「もしもーし、もしもしー。応答がなければ失礼しますね」
こんな通報も…
(角田綾香巡査長)「『亀』が路上を歩いてるって言われて…亀って(危害を加えない)野生生物なので、(警察官の)派遣はできないということで」
さらには…
(角田綾香巡査長)「110番なのでね。110番、イタズラ電話かけないでください。110番につながってますのでね。ご要件なければ失礼しますね」
執拗にかかってくる「イタズラ電話」です。
(角田綾香巡査長)「過去歴っていうんですかね、この方が何千回も同じ内容でかけている。要件もよく分からないような110番もある。イタズラで(処理する)」
「府民の110番の第一声を聞き逃さないように」
実は今、こうした迷惑通報など対応の必要がない電話が約2割を占めていて、現場に大きな負担がかかっているのです。しかしそれでも、電話が鳴る限り、指令室員たちは110番を受け続けます。
(指令室員)
「『もう今から死にます』ということで、『今からとび降ります』で切れてしまいまして」
「今酔っ払って包丁持ち出してるの?外に出ていった?誰も家族の人けがしてない?」
角田さんは、府民の命を救うためには1件たりとも通報を聞き流すことはできないと話します。
(角田綾香巡査長)「府民の110番の第一声を聞き逃さないようにしているのと、府民にしっかりと寄り添って、冷静に必要事項を聞き出すことを重要視しています」
「どんな声にも耳を傾ける」。その覚悟が府民の安全を守り続けています。
相談・要望・問い合わせは#9110へ
犯罪や事故にあたるかはわからないが警察に相談したいことがあるなど、相談・要望・問い合わせの場合は、「#9110」(警察相談専用電話)に電話してほしいということです。
【受け付け時間】
大阪府警:24時間対応
兵庫県警:平日・午前9時~午後5時
京都府警:平日・午前9時~午後5時45分
事件・事故など緊急時はためらわずに110番通報してほしいということです。
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