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人手不足で「外国人職員」が増加する障害者・介護施設 過去には「入所者を暴行」する事件も...調査に記された"証言"から見えた施設側の課題とは?

特命取材班 スクープ

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 障害者や高齢者の介護の現場で深刻になっている職員の人手不足。そうした中、期待されているのが「外国人介護人材」ですが、一方で、外国人職員による虐待事件も起きています。取材を進めていくとその背景には、外国人職員を受け入れる施設側にも問題があったことが分かってきました。介護の現場が直面している外国人職員受け入れの課題と現実を取材しました。

母国にいる家族のため日本へ出稼ぎに

 ネパール人のジャナキさん(22)、ディパさん(24)、ブダトキさん(31)。日本語試験などに合格し最長で5年間、日本で働くことができる「特定技能外国人」として来日しました。

 (ディパさん)「ネパールより日本のホームいいです。きれいです」

 ネパールの平均月収は2万円ほど。3人は遠く5000km離れた母国にいる家族のため、日本に出稼ぎにやってきました。働くのは大阪府堺市にある障害者施設「ピュアあすなろ」。

 重度の知的障害のある入所者50人が暮らしていて、職員35人が24時間体制で支援を続けています。来日から4日後。ネパール人の3人が初めて職場にやってきました。
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 (入所者に話しかけるジャナキさん)「名前はなんですか?」
 (入所者に話しかけるディパさん)「下に行きたいですか?すみません」

 同じ日本人でも対応が難しい知的障害のある入所者の支援。3人は上手く意思疎通ができません。それでも、施設が「外国人職員」の採用を決めたのにはある事情がありました。

 (ピュアあすなろ・施設長 大仲譲さん)「障害者施設は求人をしても(日本人の)応募者が来ない状況にあります。求人は実際にもう常にかけている状況です」

 この施設は求人サイトなどで職員を募集していますが、日本人からの応募は少なく常に「人手不足」が続いているといいます。そこで外国人職員に活路を見出すことにしたのです。

 こうした施設は増えていて、介護分野で働く特定技能外国人の数は制度が始まった6年前から増加の一途を辿っており、昨年末で約4万4000人となっています。
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外国人職員が入所者を暴行する事件も…

 そんな中、去年4月、大阪府岸和田市の障害者支援施設でベトナム国籍の職員の男2人(20代)が入所者を暴行する事件が起きました。

 (社会福祉法人光生会 理事長※当時)「私どもとしては普通の問題のない介護職員という認識をしていた」

 なぜ外国人職員は虐待行為に走ってしまったのか。MBSは市がまとめた調査報告書を入手しました。そこに記された外国人職員の証言からは、受け入れる施設側の問題点も見えてきました。
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 (市がまとめた調査報告書より)
 「職場の勉強会の内容がわからなかった」
 「暴力行為は当初、いけないと思っていたが、他の職員の暴力を見て慣れた」

 報告書は、施設側に外国人職員を受け入れる体制や知識が足りていなかったことが虐待が起きた要因の一つだと指摘していました。

ネパール人の職員3人が働きやすい環境を 日本人職員に向けて研修会も

 ネパール人の職員3人が働く堺市の障害者施設。この施設では、3人が働きやすい環境を整えようと受け入れる日本人職員に向けて研修会を開いていました。

 (研修会の講師)「一方的に日本人のことを知りなさい、日本の文化を知りなさい、風習を知りなさいではなくて」

 また、職員は通常、入所者と同じ給食を食べる決まりですが、「ヒンドゥー教徒」の3人は牛肉や豚肉が食べられないため、特別に弁当を持ってきても良いことにしました。

 こうした外国人職員の受け入れにあたっての工夫は、堺市内の障害者施設同士で定期的に情報共有しているといいます。

 (障害者施設の施設長)「やはり日本語が難しいので身振り手振りで伝えるのが大変というのはある」
 (障害者施設の施設長)「日本の方と一緒に扱ってくださいと言われる。知らないうちに遠慮してしまっている部分があった」

 障害者福祉に詳しい専門家は「外国人職員目線での環境整備が重要だ」と指摘します。
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 (日本社会事業大学 曽根直樹客員教授)「海外に働きに来ている立場にたってどうしたらいい職場と思ってもらえるか、雇っている側が考えてサポートが必要。長く働いてもらうことを前提に自分たちのチームの一員として迎え入れることが必要」

「すごく努力していて。初心に戻ろうって」他の職員にも良い影響

 日本にやってきて半年。ネパール人の3人は見違えるような仕事ぶりを見せていました。

 (入所者に話しかけるディパさん)「おいしいですか。ゆっくり食べてください」
 (入所者に話しかけるジャナキさん)「お茶どうぞ」

 施設のサポートを受けて日本語も上達し、入所者に笑顔で接する姿がありました。3人の働きぶりは他の職員にも良い影響を与えているといいます。

 (職員)「(入所者の)名前を覚えながらみんなにお茶を配ったりとか、自分たちですごく努力して、私たちの見えないところでメモしたり、すごくそれが初心に戻ろう、帰ろうって。ほかのスタッフもそうですが、すごく影響はあるかなって思います」
 (職員)「ここ(手)にいっぱいメモしてる」

 3人は日本語の勉強をしながらこれからもこの施設で働き続けたいといいます。
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 (ジャナキさん)「朝来たときに『ジャナキさんおはよう』と言われたときとか、『ありがとう』って言われたときとか、夜勤の時も『今日はよろしくね』と言われた時とかはうれしい」
 (ディパさん)「私は日本語上手になりたいです。(ずっと日本で)働きたいです」

 日本の介護現場でいまや不可欠な存在となっている外国人職員。彼らが働きやすい環境を今後も模索していく必要があります。

2025年08月28日(木)現在の情報です

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