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『糖尿病の薬でダイエット』に潜む危険...20代女性の体験談を聞くと「急性膵炎と診断され入院。体調悪いのを高いお金で買った」薬は正しく使わなければ毒

特命取材班 スクープ

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 糖尿病治療薬「リベルサス」。今この薬が一部の美容クリニックなどで『ダイエット目的』で処方されている。血糖値を下げる働きがあり食欲が抑えられる効果があるため、インターネットなどで『飲むだけで痩せられる』と若い女性を中心に話題になっている。一方で副作用により深刻な健康被害を訴える人たちも続出している。

「飲むだけで痩せられる薬」しかし副作用も『冷や汗・吐き気・耳鳴り・めまい』

 10~20代の若い女性を中心に関心が高いダイエット。

 (街の人)
 「(Qダイエットしたことある?)はい。食事制限とか、夜は炭水化物を食べないとかですね。インスタとか見ていてもキレイな人が多いので、気を付けるようになりました」
 「インスタとかYouTubeとかで調べた脚痩せのストレッチとか筋トレとかやったことあります。体重が増えたことが大きいのと、もうちょっとおしゃれしたいなと思ったからです」
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 運動や食事制限などでダイエットに地道に取り組む人がいる一方、SNS上では『飲むだけで痩せられる』という薬が話題になっている。

 【クリニックのHPより】
 「食事制限・運動不要」
 「医師推薦。一日一回飲むだけ!」
 「我慢も無理もいらない」
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 痩せる薬として紹介されているのは「GLP-1受容体作動薬」。飲み薬は「リベルサス」と呼ばれている。本来は糖尿病の患者が服用する薬だが、食欲を抑える効果があるため、最近は一部の美容クリニックなどでダイエット目的で処方されているという。
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 取材班はこの薬を実際に服用した横浜市に住む26歳のAさんに話を聞いた。

 (Aさん)
 「元々コロナ禍であまり動かなくなったこともあって体重が気になるようになったのと、インスタグラムとかでインフルエンサーさんとかいろんな人が飲んでいて、興味が湧いて飲んでみたいなというのがきっかけです。1週間ちょっとで3kgくらいは減りましたね」

 リベルサスを飲むと、みるみる体重が減った一方で、服用直後から体調に異変が起きたという。

 (Aさん)
 「内服して数十分~1時間経たないくらいに冷や汗とか吐き気とか、耳鳴りとかめまいとかも起きていた。(飲んでいる間)ずっと体調は悪かったですね。錠剤は1か月分の処方だったんですけど、ずっと体調が悪いのもしんどかったので、2週間分くらい飲んで、あとは飲まなくなりました」

 薬の服用をやめてからも体調不良は2か月ほど続いたという。
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 リベルサスはあくまで糖尿病の治療薬で、ダイエットの薬としては日本では承認されていない。このため、美容クリニックなどは承認されている効能・効果以外の目的で薬を処方しているのだが、Aさんは診察時に副作用について十分な説明はなかったと話す。

 (Aさん)
 「(副作用は)本当にまれです、なので安心してください、という感じで言われました。副作用がこんなに強く出るとは思っていなかったのでしんどかったです。やっぱり楽して痩せるというのは危険だなと感じたので、薬に頼るのは今後はちょっともういいかなという感じですね」

Bさんは服用後に胃に強い痛み…「急性膵炎」で入院

 SNS上にはAさんと同じく、ダイエット目的で薬を服用して健康被害を受けた、という書き込みが数多く投稿されていた。

 【SNS上の書き込み】
 「リベルサス吐き気が止まらない」
 「リベルサス2か月飲んで副作用ひどくてやめた。体力も落ちちゃったし、胃のムカムカが治らない。フワフワするめまいも時々ある」
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 取材班は、特に重篤な副作用が出たという20代の女性Bさんから話を聞くことができた。

 【Bさんへの取材より】
 「食後にひどい胃の痛みを感じるように。水も飲めず、薬を飲むも効果なく、吐きすぎで胆汁が出てくる」

 Bさんはリベルサスを服用して1か月後、強い胃の痛みを感じるようになり嘔吐を繰り返した。ついには…。

 【Bさんへの取材より】
 「急性膵炎と診断されて4日間入院して2日間禁食。体調悪いのを高いお金で買った」

 BさんもAさんと同じくオンラインで診察を受けたが、副作用についてはほとんど説明がなかったそうだ。

記者が実際にオンライン診療を受けてみた

 取材班は実態を調査するべく、Bさんが診察を受けたクリニックのオンライン診療を受けてみることにした。事前にクリニックの事務員から「腹痛や吐き気などの副作用が出る場合があるが2~3週間程度で治まる」などの説明があった。その後の医師の診察は1分半ほどで終わった。

 (記者リポート)
 「医師から副作用の説明は一切ありませんでした。すごく短い診察でした」
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 診察を受けた2日後に薬が届いた。ダイエット目的の患者に安易に薬を処方することについてどう考えているのか。取材班がクリニックに取材を申し込むと、代理人弁護士からメールで回答があった。

 【クリニックからの回答】
 「薬の処方については、原則、医師の責任の下、医師の判断に基づき行っているという認識です。行き過ぎた処方とならないよう留意した対応をとっていると考えております」

日本医師会も問題視『薬は正しく使って薬になる。そうでなければ毒でしかない』

 糖尿病の治療薬が一部の医師によりダイエットの薬として処方され、健康被害が生じている実態。日本医師会もこうした実態を問題視しているという。

 (日本医師会 宮川政昭常任理事)
 「(Q適正使用でない処方が広がっていることに関してどう考えている?)非常に懸念しています。薬は正しく使って薬になります。そうでなければ毒でしかない。ですから、そのところはしっかりと認識してほしいなと思います」

 また積極的に薬を処方する医師の姿勢に疑問を呈した。

 (日本医師会 宮川政昭常任理事)
 「果たして病気でない方に薬を勧めるのはどうなのかなと思いますよね。病気の方を糖尿の方を救おうと一生懸命やっている人もいるし、そうでなく美容のことだけを考えてやっている人もいる。つらい話ですよね」

 現状、こうした薬の処方を止める手はなく、法整備が必要だと話した。
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 健康被害を引き起こす可能性のある薬が安易に処方されている現実。医師のモラルに判断を委ね続けるのは余りにも危険ではないだろうか。

2023年05月18日(木)現在の情報です

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