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『荒れる京都の繁華街の夜』凶悪事件が多発...「肩ぶつかった」暴行で兄を亡くした男性『似たような事件が続いているのは悲しい』

特命取材班 スクープ

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 荒れる京都の繁華街「木屋町」の夜。新型コロナウイルスの行動制限が緩和されて以降、犯罪の認知件数が増加しているのだ。19年前、木屋町で起きた事件で兄を亡くした男性は『兄の時と同じような事件が増えるのではないか』と危機感を抱いている。

夜の木屋町で起きた悲惨な事件『いつまでも実感が湧かない』

 京都市の中心部にある繁華街「木屋町」。居酒屋やナイトクラブなどが軒を連ねる飲み屋街として知られている。
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 その木屋町で花を手向けて静かに手を合わせる男性の姿があった。朴善均さん(43)。19年前、この場所で兄・富均さん(当時29)が事件に巻き込まれて命を落とした。

 (朴善均さん)
 「ここに来て花をお供えして、やっぱりもういいひんのやって再認識というか。いつまでも実感が湧かないんですよね」
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 2004年10月3日未明、木屋町通りをひとり歩いていた富均さんは、4人組の若い男たちと口論になったという。「すれ違いざまに肩がぶつかった」。些細なきっかけだったが、富均さんは殴る蹴るの暴行を受け、5日後に搬送先の病院で死亡した。

 (朴善均さん)
 「うちの兄はそういうけんかっ早いとかそういうこともないので。何かあっても謝って終わらすタイプの人間なんで、一方的にいちゃもんをつけられたんかなというふうには思っています」
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 犯行後、4人組の若い男は逃走し、19年経った今も逮捕には至っていない。

立て続けに起こる凶悪事件…去年8月以降“犯罪が増加”

 時効が2024年10月に迫る中、今も犯人につながる情報を探し続けている朴さん。その一方で最近の木屋町に危機感を抱くようになったと話す。

 (朴善均さん)
 「頻度が多いなと。(木屋町で起こる)事件の頻度が多いんで、やっぱりこれからもそういった(兄のような)事件が増えるんじゃないかなという不安と心配はあります」
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 きっかけとなったのは2022年12月に起きた“ある事件”。兄のことを連想させるものだった。木屋町を歩いていた会社員の男性が、20歳の男2人に絡まれ、路上で殴る蹴るの暴行を受けたのだ。

 (目撃者)
 「血だらけ、ガラス割れて窓割れて、車とかにバーンって当たったりして。ガラスでどついたり、乱闘みたいな。血が出ていた」

 男性の命に別状はなかったが、顔の骨を折るなどの重傷だった。
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 捜査関係者によると、男たちの動機は次のようなものだった。

 (男)
 「肩ぶつかったから殴った」

 木屋町では今、凶悪事件が立て続けに起きている。
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 2022年9月に撮影された写真。外国人の男が男性とトラブルになり、持っていたアイスピックで男性の胸を複数回刺して殺害しようとしたという。
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 警察によると、木屋町における犯罪の認知件数は新型コロナウイルスの流行により年々減少していた。だが、2022年8月に行動制限が事実上解除され、夜の街での犯罪が一転、増加しているのだ。

街の安全を守る「祇園・木屋町特別警察隊」

 こうした状況に警察も警戒を強めている。取り締まりにあたるのは木屋町エリアの犯罪抑止を目的に発足された「祇園・木屋町特別警察隊」。取材班は年末のパトロールに密着した。
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 (祇園・木屋町特別警察隊 東條邦彦巡査(34))
 「コロナの緊急事態宣言の時はやっぱり(人が)少なかったですね。それは明らかに違いますね。今は解除されたので普段の木屋町に戻ったみたいな感じはありますね」

 隊員たちは繁華街を練り歩き、異常が無いか目を光らせる。
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 (警察官)「お兄さんすみません。年齢確認よろしいですか?」
  (少年)「17歳です」
 (警察官)「17歳か」

 タバコをくわえた少年。犯罪につながる芽を未然に摘み取るのも彼らの仕事だ。

 (警察官)「もうこれ捨てといてな」
  (少年)「わかりました」
 (警察官)「歩きたばこ、当然あかんし」
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 取材班が密着を始めて8時間。隊員たちの動きが突然慌ただしくなった。居酒屋で「若い男性客が店員に殴りかかった」と通報が入ったのだ。

 (警察官)「手押すな!やめろ!あ!ちょっとちょっと!押すな!落ち着け!お前ら押すな!」
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 店の外に客を連れ出してなだめようとするも、今度は客同士で口論が始まった。

 (男性)「お前にやられても俺は我慢してんねん。考えてみ、俺我慢するやつか?お前我慢せえや!」
 (もう一人の男性)「俺も我慢しとんねん」
 (男性)「お前のために我慢してんや」
 (もう一人の男性)「俺もお前のために我慢してんねん」
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 さらに若い男性が隊員につかみかかってきた。興奮は収まらない。

 (警察官)「だから押すなって!押さんといて」
  (男性)「組対(暴力団担当)でもなんでも呼んで来い。おい、お前ら。相手がちゃうねん、レベルがちゃうねん、お前らとは」

 隊員たちは終始冷静に対応し、けが人を出すことなく事態を収めた。
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 (祇園・木屋町特別警察隊 東條邦彦巡査)
 「(木屋町は)けんかとか多いんですけど、やるしかないなという感じですかね。京都の人とかが飲みに来ても楽しく安全に帰れるような街にしたいです」

朴善均さん『僕みたいな残された家族がこれ以上生まれないように』

 19年前の木屋町で若者らの暴行により兄を亡くした朴善均さん。「自分のような思いはして欲しくない。兄の事件を教訓にして欲しい」と訴える。

 (朴善均さん)
 「やっぱり兄の事件と似たような同様の事件がいまだに続いているっていうのは悲しいですし。僕みたいな残された家族がこれ以上生まれないように、もっと安全で過ごしやすい遊びやすい街になってほしいなと思います」

 かつての賑やかさを取り戻しつつある夜の木屋町。だが19年前の悲しみが再び繰り返されることはあってはならない。

2023年02月23日(木)現在の情報です

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