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娘を失った遺族「年齢よりも罪の重さ」保護少女「捕まらずに成長はこわい」 変わる18歳19歳対応『実名報道』『保護制度』への当事者の声

2022年04月13日(水)放送

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今年4月、民法が改正され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた。ただし、罪を犯した18歳19歳は、成人でありながら『特定少年』として少年法が適用される。一方で、罪を犯すおそれがある少年『虞犯(ぐはん)少年』を事前に保護し更生させる仕組みについては18歳19歳は対象外となった。18歳19歳は成人か少年か。関係者たちに話を聞いた。

当時17歳の少年に娘を殺害された父親

 今年4月7日に取材した愛知県内に住む永谷博司さん(71)。
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 23年前の1999年8月9日に、当時高校2年生だった長女の英恵さん(当時16)が登校中の通学路で元同級生の少年(当時17)にナイフで刺され、殺害された。
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 (永谷博司さん)
 「思い出の写真をラミネートしたやつ。(この写真は)1999年7月31日なんで事件10日くらい前ですね。暑い夏だったもんですから外で新聞を広げて読んでいたんですよ。そこへ家内の携帯に友達から『はなちゃんが刺された』と。状況がわからん、刺されたと言われたって」

 少年は、交際を断られた英恵さんに一方的に恨みを募らせ、1年以上もの付きまといなどストーカー行為の末に事件を起こした。
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 (永谷博司さん)
 「事件内容によっては少年審判で少年院送りになるかもしれませんよと。できれば刑事裁判になってほしいなと思っていたんですけど、逆送になって少しでも気が楽になりました」

18歳・19歳「特定少年」として一部実名報道が可能に

 20歳未満の少年が刑事事件を起こすと、警察や検察が捜査した後に、家庭裁判所に送られ審判が下される。少年院送致や保護観察などの保護処分となるのか、重大事件として検察に逆送され、成人と同じように刑事裁判で審理されることもある。
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 20歳未満の少年については更生や健全な育成を目的に実名で報道することは少年法で禁じられてきた。しかし、4月に施行された改正少年法では、18歳19歳を『特定少年』と位置づけ、一部、実名報道が可能になった。
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 4月8日、甲府地検は、去年10月に男女2人を殺害し放火したなどの罪で、19歳の特定少年を起訴した。検察は初めて“重大事案”として実名を公表。JNNでは事件の重大性などを考慮し少年を実名で報じた。

娘を殺害した少年は30歳で再犯「世の中で立ち直るためには公開されるべき」

 当時17歳の少年に娘の命を奪われた永谷さん。実名報道については“年齢よりも罪の重さで検討すべきだ”と訴えている。

 (永谷博司さん)
 「成人扱いが18歳になるから18歳19歳(の実名公表)は納得するんですけど。でも際どい16歳17歳でもね、そんな低年齢が人の命を奪うなんてのはもってのほかだからね。この先自分がどうしないとだめなのか、反省も兼ねて世の中で立ち直っていくためには、公開されていくべきだと思ったんだよね」
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 娘を殺害した少年は10年間服役した。しかし、出所から2年8か月後に、通行人の女性を刃物で脅しけがをさせる事件を起こした。当時17歳だった少年は30歳になってまた罪を犯したのだ。
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 (永谷博司さん)
 「またやったのかって思ってね。直接の被害者じゃないけど傍聴席を取ってもらって傍聴してきましたよ。傍聴席の目の前を(被告が)通過していくもんですから、私は立ち上がって加害者に対して『俺の顔覚えているか』と言ったけど、振り向かずに出ていった」
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 少年法が言う“更生”とは何なのか?永谷さんの元には謝罪の手紙が届くというが、一度も会ったことはないという。

 (永谷博司さん)
 「謝罪に行きたいけど病院にいるから行けないと。何が謝罪に行きたいだ、謝罪になんかちっとも来ていないのに。謝罪したい謝罪したいって気持ちだけで」

『虞犯少年=罪を犯すおそれのある少年』を保護する仕組みは18歳19歳は対象外に

 18歳と19歳が特定少年となった改正少年法。実名報道が可能になる一方で、ある人たちへのセーフティネットが外れた。それは『虞犯少年』だ。
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 虞犯とは「罪を犯す虞(おそ)れがある」という意味で、家出を繰り返していたり、パパ活などで売春していたり、暴力団と関係があったりと、犯罪に関わるおそれのある少年を保護し、少年院などへ送致できる仕組みだ。この対象から18歳19歳が外れた。

虞犯で保護された少女「大きいことをする前に自分が気づけてよかった」

 大阪府交野市にある女子少年院「交野女子学院」。現在は27人が収容されていて、うち虞犯少女(罪を犯す虞れがある少女)は18歳19歳の4人。窃盗に次いで2番目に多いという。
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 Aさん(18)は5か月前、当時17歳の時に家出を繰り返していたところを保護され、少年院へ送られた。

 (虞犯(家出)で保護されたAさん(18))
 「家出して、不良交友・不良仲間と遊ぶようになって、暴行やけんかの現場に一緒に同行したりしたのが原因。『なんでうちが捕まったん?』『もっとひどいことしてる子たちおるやん』と思っちゃっていた。先生たちと話したり、(講演に来た)被害者遺族の方の話を聞いたりしていたら、やっていることに大きいも小さいもなくて、自分もそれほどのことをやっていたんだなと自覚するようになってきた。(Q18歳19歳は虞犯で処分されなくなるが?)え、そうなんですか。捕まらずにこのまま成長していくのはすごくこわい。虞犯のときに捕まってよかったな、大きいことをする前に自分が気づけてよかったなと」

 Bさん(19)も家出を繰り返すなどしていたところ保護されたという。

 (虞犯(家出)で保護されたBさん(19))
 「虞犯で来ました。会ってはいけない人がいたんですけど、関係を切るためにも少年院に行って整理しようと。ここに入る前は話しやすい大人とかがいなかったんですけど、ここに来て自分のこととか考える時間、考えられるようになったかなと思っています。少年院を出たら大学に進む予定で先生とも話しています」

「民間の人たちがネットワークを広げてやるしかない」

 東京・秋葉原。この繁華街の近くに2年前に「まちなか保健室」という施設が開設された。
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 女性を支援する団体が運営していて、家庭に問題があったり学校に馴染めなかったりなど、若い女性たちの駆け込み寺となっている。

 (利用者(21))
 「週に4回来ています。いつもは(他の人と)話したり、心理相談を受けたり」
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 利用者で特に多いのは18歳19歳。この世代が虞犯の対象から外れることに危機感を抱いているという。

 (「まちなか保健室」を運営する大谷恭子さん)
 「今の少女たちの一番の問題は“居場所がない”。居場所を求めたりするときに陥る先って、やっぱり性被害や性搾取の現場。(今までは)警察のパトロールでかろうじて一線を越えないで済んでいたところも、それがなくなるのであれば、広く民間の人たちがネットワークを広げて、こぼれないように、という形でやるしかない」

 18歳と19歳は成人なのか、それとも少年なのか。まだ未熟とも言える世代が民法と少年法、2つのスタンダードに翻弄されている。

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