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【独自入手】存在しないとされた『17年前のいじめ調査文書』成人した被害者本人も認める詳細記録...「ない」と一貫主張の神戸市教委は?

2022年04月20日(水)放送

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 17年前に神戸市の小学校で起きた“いじめ”。神戸市教育委員会はこれまで一貫して「十分な調査を行えず、いじめがあったかどうか判断ができない」「いじめの調査文書はない」と主張してきた。しかし今回、取材班は教育委員会がこれまで“ない”と主張してきた『いじめの調査文書』を独自に入手した。

17年前のいじめ…加害児童も裁判所も認めたが“教育委員会”だけが認めず

 取材班が独自に入手した神戸市教育委員会の内部で保管されていた34ページの資料。17年前に起きた“いじめの記録”で、これまで明らかにされてこなかった。
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 2005年、神戸市立の小学5年生だったAさんが同級生13人から、殴る蹴るの暴行を受けたり教科書を破られたりするなどの嫌がらせを受け、さらに約1年間にわたって50万円以上を脅し取られたという。
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 今年3月、Aさんの父親が取材に応じ、当時について語った。

 (被害児童Aさんの父親)
 「結局1年近く殴る蹴るやら、『きしょい』『うざい』『死ね』とかそういった言葉の暴力。(息子が)お金を持ち出していたのは、私が旧札で集めていた昔の聖徳太子(1万円札)とかのお金をこっそり抜いて渡していたんですね。そのお金(旧札)がなくなって、私や母親の財布からちょこちょこ抜くようになってから、おかしいなとやっと気づいた」
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 Aさんをいじめていた加害児童13人のうち10人はいじめを認め、うち1人は次のような謝罪文をAさんに送っている。

 【加害児童からの謝罪文】
 「ぼくは恐喝してお金を取っていたことは間違いありません。『死ね』『消えろ』などと言って、仲間はずれにもしました。大変反省しているので、すべて話してお詫びすることにしたのです」
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 父親は、いじめを認めなかった加害児童3人の親を相手に裁判を起こし、大阪高裁は2009年に「ふざけあいの類ではなく、いじめと評価すべきものであったことは明らかである」として、加害児童全員のいじめ行為を認定した。
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 しかし…

 (被害児童Aさんの父親)
 「いじめが教育委員会は『あったかなかったか分からない』と。教育委員会以外は全員『いじめだ』と言っているんですよ。なぜ教育委員会はそこまでそれを否定したかったのかなと。ずっと知りたかったし、今も知りたいですね」

 加害児童も裁判所もいじめを認めているが、神戸市教育委員会だけが今も認めていないという。

 (被害児童Aさんの父親)
 「今さら教育委員会が認める認めないはどうでもいいんですよ。自分たちが隠ぺいしてきたということを認めなさいと」

神戸市教委『十分な調査が行えずいじめがあったかどうか判断できない』

 父親はこれまでずっと『教育委員会がいじめを隠ぺいしている』と訴えてきた。これに対して教育委員会の担当者は次のように話した。

 (神戸市教育委員会の担当者(2016年当時))
 「当時、調査ができなかったというところが、やはり一番の大きな大もとですので。いじめがあったかどうか判断できなかったと」
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 教育委員会の現在のトップも次のように話した。

 (神戸市教育委員会 長田淳教育長 2019年)
 「男子児童から詳細な事実関係の確認ができず、男子児童が話したとされる内容を保護者から間接に聞くことに留まったこと。当時、十分な調査が行えず、いじめ・恐喝があったかどうか当該校も教育委員会事務局も判断できなかった」

 神戸市教育委員会は『Aさんから直接聞き取りができず、十分な調査ができなかった』として、いじめかどうか判断できないというのだ。

学校側が詳細に聞き取りを行った『調査記録』を独自入手

 今回、取材班が入手したのは、いじめ発覚直後から約2か月にわたって学校側が調査した34ページの記録だ。
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 いじめが発覚した2006年2月4日。

 【2006年2月4日の記録(学校側が作成)】
 「担任教諭が被害児童の家へ、電話で内容を確認する。家の金を合計で10万円以上持ち出し、友だちに渡している」
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 翌日の2月5日。教頭や担任らが保護者と被害児童のAさんに聞き取り調査を行っている。

 【2006年2月5日の記録(学校側が作成)】
 「父親がコレクションしていた旧札15万円分くらいを少しずつ袋より抜き取る。加害児童らにせがまれて、繰り返しその袋よりお金を抜き取り与える」

 教頭や担任らが連日のようにAさんの自宅を訪れ、加害児童に金を渡していたことを把握している。
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 そして3月14日の調査記録。

 【2006年3月14日の記録(学校側が作成)】
 「被害児童が養護教諭に話かける。ぼくは恐喝されたり、いじめられたりしている。主な加害者はクラスに11人と隣のクラスに1人いる。担任はいじめを見過ごした。クラスに信頼できる心を許せる人間は誰もいない。自殺しようまで思った」

 学校側はAさんから“いじめの内容”や“心情”まで聞き取っている。校長・教頭・担任などは少なくとも8回、Aさんから直接話を聞いているが、市教委はなぜ『聞き取りができなかった』と主張しているのか。

当時の音声記録…いじめを認めていた学校側が一変『操作されているかもしれない』

 Aさんの父親は当時、校長と面会した時の音声を録音していた。

 【いじめ発覚から17日後 2006年2月22日のやりとり】
 (校長)「廊下に引きずられて、何人かで」
 (父親)「足でみんなに踏まれているとか蹴られているような。けっこうアザはあったんですよ。お風呂一緒に入って『それどないしたんや?』って聞いたら、『こけた』とか」
 (校長)「本当にすごかったでしょ、いじめの回数とか。本当に私まとめながら涙が出てきました。許されへん」

 校長は調査した結果、「いじめはあった」と認めていた。
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 しかし1か月後の3月17日。事態は一変する。

 【いじめ発覚から40日後 2006年3月17日のやりとり】
 (校長)「これ僕の口から聞いたって言わんとって。ここだけの話ね。ひょっとしたらね、操作されているかもしれん」
 (父親)「何を操作ですか?」
 (校長)「いじめがなかったってことに」
 (父親)「誰が操作しているんですか?」
 (校長)「わかりません。言いましたやん私、いじめがあったことを学校は認めていると」

 校長が突然『いじめはなかったことになる』と言い出したのだ。何者かにいじめを隠ぺいするよう指示されたのか。

被害児童だった本人が証言『聞き取りは連日行われていた』

 取材班は今年3月、今は27歳になった被害児童のAさん本人に直接話を聞くことができた。

 (被害児童だったAさん)
 「(Q当時の聞き取りはどういう状況だったんでしょうか?)聞き取りですか、聞き取りは連日行われていましたね。僕も『聞き取りが行われなかったからいじめの事実が認定できない』って教育委員会側は言っているって、中学校ぐらいの時に聞いたんですけど。本当に持っていた皿を落としそうになるぐらいびっくりして」
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 当時のいじめについては次のように話した。

 (被害児童だったAさん)
 「まずは本当に生きててよかったな、というのが一番ですね。少なくとも学校内で仲間はいなかったですし、先生も含めて助けてくれる人はいなかったですし。当時の自分としては『1人で耐えていくしかないな』って思いましたし。すごく救われたなと思ったことがあるんですけど、ある日、お母さんに『もう学校なんか行かなくてもいいんだよ』って言われたんですね。あんまり僕、いじめがつらくて泣いたことはないんですけれども、本当にそれだけがうれしくて涙が止まらなくて。これで死ぬとか死なないとかそういうことも考えなくていいんだっていうふうに思ったんで」
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 17年前のいじめの記録。本人に確認してもらうと…

 (被害児童だったAさん)
 「これは学校側が作ったんですかね?たまたま開いたページを見て思い出したこととかありますもん。こんなんあったな、みたいな。それぐらいめっちゃ詳細です」

神戸市教育委員会は『いじめの隠ぺいはしていない』と主張

 当時、何度も聞き取りをしていながら、神戸市教育委員会はなぜ『十分な調査ができなかった』と主張しているのか。今年4月、取材班は神戸市教育委員会の担当課長に話を聞いた。

 (神戸市教育委員会・児童生徒課 吉井良英課長)
 「当時は1回しか聞き取りができていないんですね。(Q被害児童から?)はい。(Q被害児童は連日のように学校の担任や校長に話をしていたと言っていたが?)連日?ちょっとそこのところは確認させてください」

 学校側が作成した資料を担当課長に提示すると次のように話した。

 (神戸市教育委員会・児童生徒課 吉井良英課長)
 「いじめの可能性は非常に高いというふうに思います。(Qいじめがあった事実を神戸市教育委員会は隠ぺいしているのではないか?)隠ぺいはしておりません。(いじめについては)第三者委員会で調査を行っていますので、基本的にはその調査を待つということになりますけれども、基本的には我々のスタンスは変わっておりません」

 今回のいじめ問題を巡っては、父親の訴えなどを受けて、いじめから15年が経った2020年に第三者委員会が設置されるなど異例の展開を辿っている。

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