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【万博】「あきれる。何をおっしゃっているんだろう」マルタ館でも工事費未払いトラブル 下請け業者が支払い求めると...外資系元請けは逆に"数千万円を請求"

特命取材班 スクープ

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 一般来場者の総数が600万人を突破し、連日にぎわっている大阪・関西万博。この万博をめぐり“契約トラブル”が相次いでいます。「出店トラブル」「建設費未払い」「横領疑惑」…訴訟まで発展しているケースも。問題はさらに深刻になっています。

“経理担当が横領”と主張 アンゴラパビリオンめぐる工事費未払い

 6月13日で開幕2か月の大阪・関西万博。連日10万を超える人が来場し、“万博の華”と呼ばれる海外パビリオンの前はいつも長蛇の列ができています。しかし、その盛況の影で…

 (男性)「あれがアンゴラ館ですね。(工事費の)未払いの問題が起きていまして…」

 男性は2月中旬からアンゴラのパビリオン工事の下請けに入っていましたが、発注元の業者から3月と4月分の工事費が今も支払われていません。未払い額は約4300万円にのぼります。

 (男性)「さすがに金額が大きすぎる。生活ができない」

 一方の未払い業者が6月6日、MBSの取材に応じました。
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 (未払い業者の社長)「経理を担当していた者が1億円ほどの『横領』。申し訳ないと思っています」

 身内による工事費の横領があり、支払えないと主張しました。

 アンゴラ政府代表は、工事費の未払いは、あくまで「業者間の問題」との見解を示していて、解決の糸口は見えないままです。

マルタパビリオン工事では訴訟に発展「まさかここまでこじれるとは…」

 万博工事費の未払い問題をめぐっては、訴訟に発展しているケースもあります。

 「まさかここまでこじれるというか、解決しないとは思っていなかったです。一番自分としては望んでいない結果」

 このように話すのは、マルタパビリオン建設工事の1次下請け業者・A社です。参加国が独自に建設するタイプAパビリオンの中で最後に着工したマルタ。外資系の元請け業者に対し、A社は未払いの工事費支払いを求め、6月5日、東京地裁に提訴しました。

 (1次下請けA社)「自分たちがやった工事の対価だけを正当な形でお支払いしていただければ、それ以上のものをいただこうと思っていません。(万博工事を)やってよかったなって、自分たちが最後、そういうふうに思って終われる、それを一番望んでいます」

 訴状によりますと、A社は「元請け業者が“工事が遅れた”などと不合理な苦情を述べて工事費を支払わない」などと訴え、契約金の一部と追加工事費、計約1億2000万円の支払いを求めています。

 A社はこれまで、元請け業者に直接支払いを求めてきました。これに対し元請け業者は「工事のクオリティーが不十分で修正工事をした費用や、工期の遅れなどによるペナルティーを差し引くと支払える金額は残らない。正式な金額は精査中だ」などとしていました。

 1か月後、元請け業者からA社に届いたメールでは…
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 『代わりに行った工事費用などを精査した結果、未払い額より我々の立て替え額の方が大きくなったため、差額の数千万円をA社から我々に支払ってほしい』

 未払い金を支払うどころか、逆に数千万円を請求してきたのです。

 (1次下請けA社)「あきれるというか、正直、何をおっしゃっているんだろうと。本当に限られた工期で実際進めていく中で、さまざまな変更であったり、元請さんからの要望で工事が止まってしまったり…。私たちの不履行で工事が終わらなかったと言われても、我々は精一杯できることはやっていた」

 訴訟に対し、元請け業者は「コメントできません」としています。
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 一方、マルタ政府代表は「元請け業者への支払いは全額完了していて、マルタは紛争当事者ではありません。民間企業の紛争によりマルタの評判が損なわれることは誠に遺憾です」とコメントしています。

協会に“不払いトラブル”について通報したが…

 トラブルが相次いでいることに対し、5月、博覧会協会は次のようにコメント。

 (博覧会協会 高科淳副事務総長)「不払いについて通報があった場合には、対話の場をつくって、そこで何か解決する道筋が描けないかというような相談をさせていただいたりと…」

 通報があった場合は、“仲介をして解決を促している”としていました。

 しかし、A社は5月上旬に博覧会協会に通報したものの、協会から問題解決に向けた連絡はなく、訴訟に踏み切ったといいます。

 (1次下請けA社)「協会から“また連絡をします”というメールが一通来たきりで、そこからは何もないですね。何も動きがないというのは、協会の方ではそこまで(未払いは)大きな問題ではないのかなと」

 一方、博覧会協会は個別案件には回答できないとしたうえで、「一般論として書類の確認や精査に時間がかかることがあります」としています。

「だまされた」海外パビリオン内の出店トラブル

 万博をめぐる契約トラブル。建設工事だけではありません。

 「オープン3日前に見に行って…見に行ったらそのときは何もなかったので、オープンできないなってそのときは思いました」

 このように話すのは、大阪府内で飲食店を営むB社。万博敷地内で料理を出す契約を国内事業者と結びました。ところが…

 (B社)「3月ぐらいですかね、もうそろそろオープンだなというとき、図面とかが出てきていなかったので、とりあえず図面をくれと。(図面がないと)厨房機器も用意できない」

 B社は海外パビリオンの中でラーメン店を出すことになり、権利金2500万円を支払いました。B社はパビリオンの国にちなんだ味の試作品を完成。しかし、出店ブースを見に行くと、厨房とされていた場所は料理が作れる場所ではありませんでした。

 (B社)「ラーメンが作れるような状態のブースではもう全くない。水道も何もなくて、僕らからしたらだまされたとしか思っていないですね」

 出店がかなわず、支払い済みの権利金を返すよう求めるB社。問い合わせに対し、契約元の国内事業者は「いまだ完成の具体的なめどが立っておらず、当初予定の実現が困難な状況となっております。5月末ごろまでに権利金の一部または全部の返還時期などについてご連絡させていただきたい」とコメント。
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 ただ、5月に送られてきたのは、「具体的な提案をさせていただくことが困難な状況だ」という通知でした。問題が解決するかどうかは見通せない状況です。

 様々なトラブルが山積している大阪・関西万博。これらと向き合わずして「いのち輝く未来社会」を考えることはできるのでしょうか?
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2025年06月13日(金)現在の情報です

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