2025年11月28日(金)公開
「早く供養してあげないとと。思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」死産した赤ちゃんの遺体を大阪市内の公園に遺棄 24歳女の孤独「産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」執行猶予付き有罪判決が確定
編集部セレクト

今年8月、大阪市北区の扇町公園で、赤ちゃんの遺体が土の中から見つかった事件。死体遺棄の罪に問われた24歳の女に、大阪地裁は拘禁刑1年・執行猶予3年の判決を言い渡しました。 公判で明らかになったのは、誰にも相談せず、気づかれないまま死産し、半ば衝動的に遺体を遺棄した実態でした。 「相当追い詰められていたのかもしれない。何もできなかった悔しさがある」知人は後悔の気持ちを口にしました。(MBS 大阪司法担当 柳瀬良太/大阪府警担当 飯田真那)

10月21日、大阪地裁で行われた初公判。黒いTシャツに黒いズボンという姿で入廷した、被告の女。髪は肩まで伸び、不安げな表情と小さな声で供述していきます。
女(10月21日の初公判 以下同)
「自暴自棄で自分の身体に興味がなく、大事にして行動できなかった」
「夢がなくて、真っ暗で何も見えなかった」
妊娠を認識も風俗店の仕事や飲酒・喫煙を続け…
女は24歳。8月12日午前9時25分頃から41分頃にかけ、大阪市北区の扇町公園で、自らが出産した女の赤ちゃんの遺体を土の中に埋めたとして、死体遺棄の罪に問われました。
裁判官「起訴事実について何か述べることや間違っていることは?」
女 「ないです。大丈夫です」
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検察官の冒頭陳述によると、女は去年3月から風俗店で働いていましたが、今年5月または6月に胎動を感じ、妊娠を認識。携帯電話で、中絶費用や大阪市の出産一時金などを調べたものの、産科を受診することはなく、仕事や飲酒、喫煙を続けていたといいます。
MBSの取材に応じた、女の知人は、春ごろにある変化に気付いたといいます。
女の知人(MBSの取材に対し)
「今年の4月、5月から胸が大きくなりだして、お腹も出てきたので『お腹出てきてない?』と聞いたら、『最近食べ過ぎたかも』と。妊娠検査薬は陰性だったから、ホルモンバランスが崩れたのかなと」
「(女が)『将来どうしよう。やりたいことないしな』と急に話していた。様子がおかしかったので、しんどいことあるのかなと」
女は8月11日午前、破水したことから勤務先のトイレに入り、赤ちゃん(女児)を出産。産声を上げず動かなかったことから、死んでいると認識しました。
解剖によると、死産当時の女は妊娠30週ほどで、胎盤の早期剥離により赤ちゃんは窒息状態に陥ったということです。
「産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」

女は被告人質問で、死産した瞬間の心境を、こう振り返りました。
女
「産まれた時のことをしょっちゅう思い出すんですが、嬉しかった」
「亡くなっているのを見たときに、自分自身の生活を振り返って、すごく申し訳ない気持ちになった」
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弁護人
「どんな行動をとっていればよかったなと、今は思う?」
女
「誰かに相談したり、病院に行けばよかったかなと思っている」
「自暴自棄で自分の身体に興味がなく、大事にして行動ができなかった。元々、人に頼ったり話すのが得意じゃなくて、今回の時も産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」
女は当時、仕事の待機場で寝泊まりしていたということです。母親とも中学生の頃から関係が良くなく、逮捕後に母親が一度面会に来た際も、会わなかったといいます。
知人は、女が追い詰められていたのかもしれないと後悔の思いを口にしました。
女の知人(MBSの取材に対し)
「“病院に行こう”と言えていれば、結果が変わっていたのかなと、苦しい部分がある。相当追い詰められ、1人で抱え込んで、しんどかったのかもしれない。悲しかったし、自分に何もできなかった悔しさはある」
「早く供養してあげないとと。すぐに思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」

女は、仕事で使う手提げかばんに赤ちゃんの遺体を入れ、待機場に運びます。
死産した翌日の8月12日に、友人と日帰り旅行に行く約束をしてい女は、“その前に、木がたくさんあって大きくてきれいな扇町公園に行き、赤ちゃんを土に埋めよう”などと考えました。
女はコンビニで軍手を購入。扇町公園で土を掘り返し、赤ちゃんの遺体を横たえ、その上から土をかけました。
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女 「出頭するまで何をしていたかあまり覚えていない」
検察官「旅行には行っていましたよね?」
女 「ずっとうわべ。何を話したかもはっきり覚えていない」
検察官「旅行に行く前に赤ちゃんを埋めてあげたいと思った?」
女 「早く遺体を埋めてあげないとと。早く供養してあげないとと。産んですぐに思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」
検察官「どんな宗教でも、亡くなった人をただ土に埋めるだけでは葬らないとわかる?」
女 「わかっています。残酷なふうには思わなかった、その時は。我に返った時に、すごく残酷なことをしたなと」
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犯行3日後の8月15日の正午すぎ、飼い犬の散歩をしていた通行人が「手のようなものが見えた」と通報し、事件が発覚。
女は報道を見て、翌16日午後、勤務先の関係者と警察署に出頭しました。
検察官「出頭したきっかけは?」
女 「ニュースを見て、1日呆然として見ていて、次の日の朝に認識して、私がやっていて、申し訳ないことをしたと思って、早く言おうと思って。話したかったというか、償いたいと思いました」
「帰る場所がなく、夢がなく、道が真っ暗で何も見えなかった」

検察官「あなた自身の生活が安定するのか、みんな心配していると思う」
女 「帰る場所がなかったが、ちゃんと帰らないとあかんとわかった」
「生活水準が高いことが望みじゃない。前まで夢がなくて… 辞めるきっかけがなくて、道も真っ暗で何も見えなかった。今はやりたいことも… 普通になりたいです」
検察官は「動機は短絡的で、病院や公的機関、母親や友人に相談できなかった事情も何らなく、経緯に酌量の余地はない」などとして、拘禁刑1年を求刑。一方、弁護人は反省の態度を示しているなどとして、執行猶予付きの判決を求めました。
裁判官から最後に何か言いたいことがあるか問われると、女は…。
「しっかりしていかないといけない。申し訳ないことをした」
執行猶予付き有罪判決が確定

迎えた11月5日の判決。大阪地裁(三輪篤志裁判官)は「裸のまま死者を敬うための措置を特に講ずることなく遺棄し、他の適切な手段をとることなく犯行に及んだことは非難を免れない。」と指弾。
一方で、「報道をきっかけに出頭して罪を認め、立ち直りに努める意思を示している」などとして、女に拘禁刑1年・執行猶予3年を言い渡しました。
言い渡し後、三輪裁判官は女にこう説諭しました。
「被害児のことをもう1度考えて、あなたとして反省してほしい。周りの人への相談なども含めて、犯罪を起こさないために努力して頑張って生きてほしい」
女は裁判官の方をじっと見ながら、うなずくように聞いていました。
その後、女側・検察側のいずれも控訴せず、判決は確定しました。
最も責任が帰せられるべきは、当然被告の女ではあるものの、異変に誰かが気付き、手を差し伸べてあげることができなかったのか__ 失われた命は二度と戻ってこないという現実が、まざまざと突きつけられます。
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