2025年11月25日(火)公開
「応援したいと思ってもらえるチームに」アイスホッケー"不毛の地"西日本で旗揚げした初のプロチーム「スターズ神戸」 資金繰りに苦労しながら挑んだホーム開幕戦
編集部セレクト
「阪神タイガース」や「ヴィッセル神戸」などのプロスポーツチームが有名な兵庫県で、新たなチームが誕生しました。西日本初のプロアイスホッケーチーム「スターズ神戸」。11月、初めてホーム開幕戦に挑みました。仕掛け人は神戸に住む元アイスホッケー選手・黒澤玲央社長(42)です。 “アイスホッケー不毛の地”とも言われる関西で「氷上の格闘技」の普及を目指すチームに密着しました。
今年5月にできたばかりのチーム「スターズ神戸」

今年9月。スターズ神戸の姿は神戸市内のアイスリンクにありました。この場所で週5回、練習を行っています。チームは大学を卒業したばかりの若手選手や、他のチームを戦力外となった選手、そして、韓国や中国などの外国人選手で構成されています。全員で22人、黒澤さんが各地から獲得してきました。
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(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「新規のチームって、よそのチームから獲得できないんですよ。となるとアマチュアレベル、日本国内の大学生、社会人、あとは韓国の大学生、もしくは社会人。1年目2年目はそうかもしれないですね」
練習の様子を見せてもらうと…軽やかなスケーティングに華麗なスティックさばき。
アイスホッケーは、リンクに立つのは1チーム6人。スティックでパックを運び、相手チームよりゴールに入れた方が勝ちです。
チームは今年5月にできたばかり。ただ、黒澤さんらが綿密な活動計画などを提出し、日本のチームが参加できる最高峰のリーグ「アジアリーグ」への参加が認められました。
チーム運営の中で無視できない“お金の問題”

練習が終わると選手たちが向かうのが、黒澤さんが用意したシェアハウスです。
(スターズ神戸 石田龍之進選手)「普通に仕事するだけの関係以上にもっと仲良くなったりとか、お互いを知らないといけない職業だと思うので、一緒に住むのは良い影響があるんじゃないかなと思います」
様々な国の選手たちがコミュニケーションを深めるのにも一役買っています。
ただ、経営の視点でのシェアハウスの一番の利点は生活費が抑えられること。年俸約200万円~500万円という選手たちを支えるためでもあります。マイナースポーツでプロチームを運営する壁は何と言っても、お金です。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「試合運営、あとは遠征費がこの10月以降かかってくる。毎月1000万円~1500万円ぐらい出ていく」
スポンサーを獲得すべく営業に奔走するが…

アジアリーグ開幕4日前。黒澤さんたち経営陣の会議は深刻な雰囲気に包まれていました。試合運営や遠征などで見込まれる支出に対し、スポンサーやチケット収入が足りず、毎月300万円~400万円の赤字が続く見通しだといいます。
(黒澤さん)「10月から赤字になっているでしょ。このままいっちゃうと資金ショートしますっていう感じなの」
(スターズ神戸・取締役 福島未興さん)「アイスホッケーを見たことが無い社長に対して、まだ1試合もしていない僕らが『何百万円を出してください』っていう営業をしているので、普通ならあり得ないですね。無謀な営業です」
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黒澤さんはほぼ毎日、新たなスポンサー獲得のため営業に奔走しています。取材した日、商談したのは東京が本社のIT企業です。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「アイスホッケーと言ったら多分関西で見たことない、聞いたことない、やっている人も知らないマイナー競技だよね、で終わっちゃうんですけど、競技としてのコンテンツのおもしろさは全然負けていないと思っているんです」
(東京のIT企業 担当者)「スポーツのあの熱狂、観客の。家族も子どもも来て、みんなで熱量を持ってやれることって、最高は最高なんですよ」
しかし…
(東京のIT企業 担当者)「投資性・事業性が見えない部分があるかもしれない、スポンサー側からすると。これってなんか持続可能じゃないなって感じるんですけど」
今後も検討を続けてもらえることにはなりましたが、やはり、簡単にはいきません。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「大変なところが多いですね。毎回訪問して、皆さんが『協賛します』と言っていただけるわけではないので。競技としての認知度、チームや競技の認知度、それは他の競技に負けているところはもちろんあると思う」
なぜ神戸でプロチームを立ち上げた?

黒澤さんが奮闘する理由。それは自分を育ててくれたアイスホッケーへの恩返しだといいます。
黒澤さんは青森県八戸市出身で地元ではプロの試合もありアイスホッケーは身近でした。小学校3年生から競技をはじめ、国内のプロチームのほか、カナダやアメリカでもプレーしました。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「アイスホッケーのチームを作りたいというのが多分、その話を大学の時に同じ仲間と一緒にしている時から、ちょっとずつ(気持ちが)出てきたんだなというのは、今考えるとあります」
現役を引退後、サッカーのヴィッセル神戸などでスポーツビジネスの経験を積み、住まいも神戸に構えました。関西はアイスホッケーに馴染みが薄い地域ですが、大好きなスポーツの魅力を多くの人に知ってもらおうと、プロチームの立ち上げを決意しました。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「国内トップレベルの試合を見たことがない方が99.9%だと思うんですよ。そういう方が初めて見る機会ができるのはチャンスだなと思っているので。ぜひ、クラブを応援していただけるような方に見に来ていただきたいと思います」
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ホーム開幕戦まで3週間を切りました。黒澤さんたちは地域のスポーツイベントに参加したり、商店街でポスターを貼ったりと、少しでも会場に来てもらうためPR活動に走り回ります。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「皆さん見にきていただければ大変ありがたいなと思います。イケメン選手ぞろい、粒ぞろいですので、よろしくお願いします」
初のホーム開幕戦 大勢の観客がリンクに

そして、11月1日。スターズ神戸にとって初めてのホーム開幕戦を迎えました。試合会場には、地道なPR活動の成果か、初めてアイスホッケーを見るという人も含め、大勢の観客がリンクに駆けつけてくれました。
「スターズ神戸を見にきた」
「僕も!楽しみ!」
「神戸のチームができたので、見にいこうと思って」
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いよいよ試合開始です。
対戦相手はアジアリーグ2回制覇の名門、レッドイーグルス北海道。開始早々、立て続けに失点し2点をリードされますが…
「レッツゴー神戸!レッツゴー神戸!」
熱い声援を受けて神戸の選手たちのプレーも熱を帯びていきます。そして…強豪相手に1点を奪いました。
しかし、その後は押される展開が続きます。
試合結果は2対5で、スターズ神戸の敗北に終わりました。
「応援したいと思ってもらえるチームになればと」

ただ、この日の来場客は1000人以上とチケットの売り上げ目標を達成。何とか第一歩を踏み出すことができました。
「北の方が中心のスポーツだと思うんですけど、関西に新しくチームができて。初めて見たんですけど、すごく来やすくてもっともっと応援したいなと思います」
「あんまり、見られない試合が見られてよかったです。また見にきます!」
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アイスホッケーの魅力を関西の人たちにも伝えたい。スターズ神戸と黒澤さんの戦いはまだ始まったばかりです。
(スターズ神戸・社長 黒澤玲央さん)「きょうも子どもたちが自然発生的に応援をしてくれて。愛される、そんなチームになっていけばなと思っています。選手がひたむきに一生懸命やっているところが見ている方に伝わったり、勝った負けたではなくてこのチームを応援したい、もっと見に行きたい、そんなことを見ている方に思ってもらえるチームになれればと思います」
2025年11月25日(火)現在の情報です
