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【新型原子炉建設へ】受け入れ先の町民らは"経済と安全"の間で揺れる 福島では原発事故で自宅取り壊し更地に「苦労したことも楽しかったことも何もかもなくなった」

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 福井・美浜町で始まった関西電力による地質調査。その目的は、原発新設です。“世界で最も安全な原子炉”と言われる「革新軽水炉」を建設する予定で、その特徴は、万が一事故が起きた場合に対応できる設備にあると言います。 一方、複雑な立場に置かれているのが、受け入れ先の町民。原発新設による経済効果に期待する一方、安全性について懸念の声もあがっています。 エネルギー資源に乏しい日本。安定的かつ安全に電力を供給する方法はあるのか?“原発大国”フランスの見解は?受け入れ先の住民の声は?

関電が原発新設方針「資源の乏しい日本で原子力は大事な電源」

 今年7月、関西電力の森望社長は美浜原発の敷地内か周辺に新たな原発を建設する方針を明らかにしました。

 (関西電力 森望社長)「資源の乏しい日本において、原子力は非常に大事な電源になるだろうと。将来にわたって継続的に活用されるべきだ」

 11月5日には、地質調査がスタート。地盤の岩石などを採取して地質を確認し、原子炉の建設に耐えうる強度の地盤かどうかなどを調べていきます。2030年ごろまで5年近くかけて行われるということです。

 2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故以降、原発新設に向けての具体的な動きは全国で初めてのことです。

「経済いい方向に」「放射線が心配」受け入れ先では様々な声

 受け入れ先となる美浜町では、原発の受け入れに伴って、国から出る交付金で学校や町の体育館、海水浴場などが整備されていて、原発が新設されれば町の発展につながるのではと期待する声もあります。

 (町民)「(長期間地元で)仕事がずっとありますので、美浜の経済にもいい方向になるのではないか」
 (民宿を経営する町民)「海水浴のお客さんは夏だけ。原発の仕事関係のお客さんは年間通じて、(客の数は)結構やった、おかげさんで。(Q原発新設には期待?)そうやな。また民宿に寄ってくれたらええけど」

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 一方で、懸念されるのが安全性です。

 (町民)
 「放射線とか心配な部分はあるので、事故だけはないようにしてほしい」
 「危険を抱えているものがたくさんできるのは町民にとって怖い」

“世界で最も安全”な原子炉「革新軽水炉」とは?

 関西電力が建設を予定しているのは、三菱重工などが開発を進める新型の原子炉「革新軽水炉」。森社長は会見の中でこう強調していました。

 (関西電力 森望社長)「安全性を高め技術的な新しい知見を取り入れた炉型です。さまざまな経験を反映できるという意味では、安全性は高めることは着実にできるのではないかと判断している」

 革新軽水炉は福島第一原発の事故を踏まえて策定された新基準にならい、厳しい地震条件にも耐えうる耐震設計で、万が一の事故を想定した安全設備が導入されるといいます。

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 フランス北西部にあるフラマンビル原発で去年9月に運転が始まった3号機は、関西電力が美浜原発に建設する予定の革新軽水炉と同じ型で、「世界で最も安全な原子炉」ともいわれています。

 仮に電源が喪失したとしても、自動的に運転が停止されるなど、従来の原子炉に比べて安全性が大幅に改善されました。特徴の1つが、万が一事故が起きた場合に備える設備です。

 フラマンビル原発3号機では、原子炉の下に「コアキャッチャー」と呼ばれる受け皿が設置されていて、メルトダウンしても溶け出した核燃料を薄く広げ、そこに冷却水を効率よく送り込めるようになっているのです。

原発大国・フランスの専門家「原子力発電は低炭素かつ制御可能な電力を生産」

 国のエネルギーの7割近くを原発でまかなうフランスの専門家は、「日本が次世代型の原子炉を建設することは重要」だと話します。

 (フランス国立工芸院 核科学技術研究 エマニュエル・ガリシェ教授)
 「次世代型の原子炉は、あらゆる自然災害に関する100年以上にわたる計算結果を考慮するため、必要以上に安全を重視しています。現在世界で最も安全な原子炉なのです。原子力発電は豊富で低炭素、かつ制御可能な電力を生産するため、地球温暖化対策において紛れもない強みです」

「絶対に大丈夫と言われた」福島の放射線除染で自宅・店が取り壊し

 しかし日本では、2011年に東日本大震災が発生、福島第一原発で事故が起きています。いくら安全と言われても、暮らしが奪われた人の思いは複雑です。

 福島県富岡町の自宅の隣で美容室を経営していた深谷敬子さん(81)。放射線の除染の対象区域だった自宅と美容室は取り壊されてしまいました。地元の人たちが集まる憩いの場所だったと言います。

 (深谷敬子さん)「やっぱりここは本当に思い出がいっぱいあって。苦労したことも、ここで子育てしたことも、楽しかったことも。いろいろあったんだけど、それすべて、こういうふうになったら、何もかもなくなっちゃったのと同じじゃないですか」

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 深谷さんは、事故が起きるまで原発が近くにあることについて特に意識もしていなかったと話します。

 (深谷敬子さん)「絶対事故は起きないし、一番頑丈な地盤のきちんとしたところに建てたんだから、絶対に大丈夫なんですって(言われた)。本当に事故が起きてみたら…原発はいらないね。安心して安全なところに暮らしたいよね」

 美浜町で原発新設の動きが出ていることについて聞くと…

 (深谷敬子さん)「事故が起きたらこんなになるんですよ。私ひとりじゃなくて、ものすごい数の人たちが、大熊町や双葉町や浪江町の人たちの人生みんな狂うんですよ。全然分からない人に訴えたい」

「原発事故は起こり得る。どのように収めていくか」

 事故の経験などから、原発に対する不安の声も多い日本。原子力の専門家は、エネルギー資源が乏しい国に原発は必要だとしたうえで、安全性を追求することが大切だと話します。

 (近畿大学 原子力研究所 杉山亘教授)「事故を防ぐのは当たり前なんですけど、防いでいたとしても原発事故は起こりうるんだと。起こりうるからこそ、どのように収めていくか、総合的に包括的に安全性を突き詰めていくことが重要だと思います」

 電力の需要がますます高まる中、安定的かつ安全に供給するための最善の方法は何なのか。しっかり検討し将来の世代も納得できる選択をする必要があります。

2025年11月19日(水)現在の情報です

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