2025年11月09日(日)公開
【修学旅行の京都離れ】インバウンド急増で異変「宿泊費・バス代高騰」「外国人が多く楽しみにくい」 受け入れ旅館も「経営非常に厳しい」 他の行き先として人気なのは...?
編集部セレクト
日本だけでなく、世界から大人気の京都。2024年の外国人観光客は1088万人で過去最多(京都観光総合調査より)。 修学旅行の定番としても知られていますが、実は、京都市を訪れた修学旅行生は、81万人(2023年)から75万人に(2024年)に減っているのです。 なぜ “京都離れ”が起きているのか?生徒たちは一体どこへ行ったのか?修学旅行の異変を取材しました。
日本の歴史を肌で感じる…東京の修学旅行生が京都へ

10月下旬、東京から修学旅行で京都にやって来た中学3年生。この学校では、日本の歴史や技術を学ぶ目的で、30年以上前から修学旅行のコースに京都を入れています。4泊5日の日程で名古屋や奈良を巡り、しめくくりは京都観光です。
この日、最初にやって来たのは「南禅寺」。今年新たに国宝に指定された水路閣など多くの文化財がみられます。
(駿台学園中学校 瀬尾兼秀校長)「小石などでできている庭を『枯れ山水』っていうんだよ」
江戸時代初期の代表的な枯山水「方丈庭園」、一番乗りでほかには誰もいません。生徒たちがカバンから取り出したのは…
(駿台学園中学校3年生)「『ワークシート』というやつで、修学旅行中で見たもの見学した場所のキーワードを書いていく。60ページもあって、だいぶきついんですけど、まあ頑張ってます」
授業で学んだ日本の歴史を、目で見て、肌で感じる。京都旅行の醍醐味です。
「宿泊の高騰。バス代も高い」京都への修学旅行を続けたいが…

できるだけ多くの名所や史跡を見るために、金閣寺や銀閣寺、北野天満宮など7か所を1日で回るプランが組まれています。しかし、毎年欠かさず行っていた「清水寺」を今年は外したといいます。
(駿台学園中学校 瀬尾兼秀校長)「伏見稲荷大社や清水寺は行かない。清水寺は去年までは行っていたが、バスが駐車してから25分歩くとかはやめようという話に。あそこらへんは全然時間通りじゃなかったですね」
インバウンドの急増で、混雑が激しいエリアをスケジュールに組み込むと予定通りに回れないため、やむを得ない判断です。
代わりに、ゆったりと京都の文化に触れられる場所を訪れます。「等持院」は、室町幕府・足利将軍家の菩提寺です。拝観者は少なく、静かな時が流れる空間で抹茶を一服。約9時間でこの日予定していた行程を無事回り切りました。
(駿台学園中学校3年生)「全体的にだいぶ疲れましたけど、楽しかったです。金閣寺があったり、今回は行ってないけど清水寺があったり、日本の歴史を語るにあたって欠かせない建造物が京都にはあるので行くべき」
一方でこんな意見も…
(駿台学園中学校3年生)「外国人が多くて…楽しみにくい感じはある」
学校の校長は、今後も京都への修学旅行を続けたいものの、懸念することが多いと話します。
(駿台学園中学校 瀬尾兼秀校長)「宿泊の高騰。バス代も結構高くて。来年・再来年どうなってしまうのか心配ではありますね。京都の泊数を今の2泊から1泊に減らして、少し違う場所を見ていくのも一つの考え方」
「食材・人件費が高騰。経営的に厳しい」コロナ禍前と比べて予約2割減の旅館

修学旅行の行き先を見直す動きは広がっています。約9割が近畿方面へ修学旅行に行っている、関東地区の公立中学校への調査では、半数以上が混雑や費用の高騰などを理由に、今後は別の場所を検討したいと回答しました。(全国修学旅行研究会 2023年度調査)
70年以上、修学旅行生を受け入れてきた旅館では…
(三木半旅館 大町勝美さん)「修学旅行の生徒が利用するお部屋でございます。奥に障子を通常は入れているんですけども、修学旅行の場合は外させてもらっている。障子を破かれたりとか…どういう加減かこの照明が落ちてきた学校はありますね」
売り上げの7割を修学旅行が占めていますが、予約はコロナ禍前と比べて約2割減っているということで、危機感を強めています。さらに…
(三木半旅館 大町勝美さん)「修学旅行の場合は特別料金で2年先(の予約)を取っている。今だと材料費の高騰、特に食材・人件費が高騰しているので、経営的には非常に厳しい状況がある」
「体験学習が充実」「大人になったら経験できない」京都以外で人気の修学旅行先は?

京都から行き先を変更した学校はどこに行ってるのでしょうか。10月、神奈川県の高校生たちが修学旅行でやって来たのは「淡路島」です。
神戸での震災学習と合わせて旅行会社から提案されたのは、「京都・奈良コース」と「淡路島・鳴門コース」の2つ。費用や体験できる内容を比較して、淡路島を選んだといいます。
(神奈川県立深沢高校 与安透校長)「淡路島は個人では選んで来ないかなと思うので、面白いかなというところで、(淡路島は)体験学習が充実しているので、大人になったらなかなか経験できないこと、そこを重視して選んで来ました」
自然の中で有名アニメなどの世界を体験できる「ニジゲンノモリ」でアスレチックを楽しみます。
淡路島では他にも、豊かな自然を生かした農業やアウトドアの体験プランが人気で、教育旅行事業を展開するパソナグループによりますと、ここ数年、関東や九州などの学校から問い合わせが増えているといいます。
(深沢高校3年生)「京都みたいな観光地よりも、淡路島みたいな落ち着いた観光地。京都より騒がしくない、のどかな感じに惹かれた」
インバウンドの急増で変わり始めた修学旅行。子どもたちにとってよい旅とはどんなものなのか、模索が続きます。
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