2025年10月04日(土)公開
地元の期待乗せいざ大空へ!世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を眺める観光気球 「新型コロナ流行」「ガス漏出」何度も"苦難"乗り越え運航開始へ事業者「たくさんの方を迎えるのが楽しみ」
編集部セレクト
大阪府の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を上空から眺めることができる観光気球が、10月4日(土)の運航日を迎えました。観光の起爆剤として計画が立ち上がったのは6年前の2019年。新型コロナやガスの漏洩など2度の挫折を経て2025年9月30日、ようやくテスト飛行に漕ぎつけました。
世界遺産登録で観光に期待も…“大きすぎて”全体像が見えない!?
2019年、アゼルバイジャンで開かれた世界遺産委員会。大小44基の古墳が集中する「百舌鳥・古市古墳群」が世界文化遺産に登録されました。
古墳群を代表するのが5世紀中ごろにつくられ「仁徳天皇陵」と伝えられる「大山古墳」。エジプト・クフ王のピラミッドや中国・秦の始皇帝陵と並ぶ世界最大の墳墓です。
大阪初の世界遺産に地元は大盛り上がり。南海電鉄堺駅や堺東駅と大山古墳近くまでを結ぶシャトルバスの運行も始まり、観光が盛り上がると期待されていました。
ところが、古墳群の観光には大きな問題がありました。あまりに大きすぎて地上から全体像が見えないのです。地元の人たちも…
(堺市民)「下(地上)から見たら普通の森」
(堺市民)「山のように見えるんで、しかも中に入れないんで」
「空から古墳を見る気球計画」待ち受けていたのは2度の挫折
そこで打開策として考えられたのが…
(堺市 永藤英機市長 2019年)「大仙公園からヘリウムガスを使った気球による観光を実施したい」
民間事業者が飛ばす気球に乗って空から古墳を眺めるという観光プランです。現在の運航計画では約15人が乗れるゴンドラのついた気球が上空約100mまで浮上。古墳を眺めたあとそのまま元いた地点に降下してくるという15分ほどの体験になります。
2020年の運航開始を目指して動き出しましたが、新型コロナの流行が始まったことなどで計画は停滞。
構想から4年が経った2023年。やっと古墳近くで気球にガスが充てんされました。あとは運航開始を待つだけでしたが…
(堺市・観光企画課 北野雅史課長(当時) 2023年)「職員から『気球がしぼんでいるように見える』と連絡がありました」
突然、気球の中のヘリウムガスが外に漏れ出したのです。
「もう失敗は許されない…」機材を一新し気球にガスを充てん
ガス気球の運航を担う事業者「アドバンス」の樋口正輝さん(40)。これまで各地で気球を飛ばしてきた実績を持ちますが、原因を調査するも特定には至りませんでした。
(ガス気球運航事業者「アドバンス」 樋口正輝さん)「基本的にガスというのは、入れたら6年間はずっと維持されるものなんですね。あってはならないことだし、本当にショックというか。いや、まさか、そんなことは基本的にはありえないと思った」
そこで、樋口さんらは気球の機材全てを、もともと使っていたイギリス製のものから入れ替えることを決めました。
次に使うのは航空機と同様の安全性が確認されていて、世界的にも実績が多いというフランス製の機材。ただ、物価上昇のあおりを受け、資金調達に約2年かかり、ことし9月に入ってやっと機材が到着しました。
(ガス気球運航事業者「アドバンス」 樋口正輝さん)「これから、いよいよヘリウムガスをこの気球に封入する作業をしていきます」
失敗は許されないなかで、新しい気球にヘリウムガスを充てんしていきます。気球が飛んでいってしまわないように、少しずつ膨らませながら重りになる土嚢を下へ下へと付け替えていきます。作業は50人以上で7時間かけて行われ、無事にガスが入りました。
ようやくの運航に地元も期待に胸が膨らむ
気球とともに地元の期待も再び膨らみます。大仙公園の中にあるカフェでは、古墳のマークがバンズにあしらわれた「こふんバーガー(税込み1600円)」や、古墳をかたどった羊羹が入った「クリームあんみつ(税込み930円)」を用意しています。
(こふん前cafe IROHA 臼井千弘店長)「(これまで)古墳の全貌が見えなかったので、今回、上から見られるってことで多分おもしろくなると思います。一つの起爆剤となって、(店が)忙しくなればいいなと思っています」
また、「あの人」も…
(堺市・PR担当 ハニワ部長)「やっと気球が飛ぶということで、ワクワク・ドキドキしています。土器だけに」
堺市のPRを担当している職員「ハニワ部長」。事業成功を願って気球の認知度を上げようとチラシ配りです。
テスト飛行も成功!10月4日から運航開始予定
大阪の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」をガス気球に乗って上空から観光する計画は構想から約6年。9月30日、テスト飛行が行われました。気球の運航を担う樋口さんも真剣な面持ちで見守ります。
「いってらっしゃーい!グッドラック!」
気球に乗り込んだ運航スタッフが撮影した映像では、気球は徐々に高度をあげ、上空約100mに到達。世界最大級の墳墓「仁徳天皇陵」と伝えられる大山古墳が姿を現しました。ゴンドラからは古墳だけでなく大阪の街が見渡せます。
テストはひとまず成功。今後さらにスムーズに運航を行えるよう引き続き調整を続けるといいます。
(ガス気球運航事業者「アドバンス」 樋口正輝さん)「まずここまでこられてホッとしているということ、いよいよこれからたくさんの方を迎えることになるので、楽しみと同時に、あとはもう少ししっかり安全確認をやっていきたい」
地元の期待を乗せた気球。一般向けの有料運航は10月4日土曜日に始まる予定です。
2025年10月04日(土)現在の情報です