2025年09月28日(日)公開
1900万円の「ワイロ」を受け取ったか 前岸和田市長の永野耕平容疑者を大阪地検特捜部が再逮捕 地元では"長年の癒着"を疑う声も... 特定業者の入札時に何度も漏えいか 携帯電話で業者社長に入札情報伝えた罪で起訴
編集部セレクト
大阪府岸和田市の公共工事をめぐる汚職事件。前市長の永野耕平容疑者が、2つの公共工事をめぐり、業者から賄賂として現金計1900万円を受け取った疑いで、大阪地検特捜部に再逮捕されました。 2つの公共工事の入札は、いずれも最低制限価格と同額で落札されていました。取材を進めると、地元の建設業者などの間では、永野容疑者と建設業者の“癒着”を疑う声もあがっていました。 (MBS大阪司法担当 柳瀬良太)
業者から1900万円の賄賂を受け取ったか
9月24日に収賄などの疑いで再逮捕された岸和田市の前市長・永野耕平容疑者(47)。大阪地検特捜部によると、再逮捕の容疑は次の通りです。
永野容疑者は、公共工事をめぐり市が2021年8月と2024年5月に実施した入札に先立ち、建設会社の代表取締役を務め、かつ、もう1社の実質的経営者でもある男性に対し、非公表のはずの最低制限価格を漏えい。
▽男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)と、▽実質的経営者の立場にある建設会社に、それぞれ落札させました。
そして便宜を図った見返りなどとして、永野容疑者はその男性から、▽2023年5月に500万円 ▽同年7月に400万円 ▽2024年11月に1000万円と、3回にわたって計1900万円を賄賂として借り受けるなどした疑いです。
地検特捜部は、永野容疑者の認否や動機、借り受けたお金の使途や、返済したか否かなどについて明らかにしていません。また、建設会社の男性(今年7月に代表取締役を辞任)は、MBSの取材に応じていません。
2つの入札で「最低制限価格と同額」で落札
岸和田市の入札記録によると、2つの公共工事は水道管の取り換え工事で、▽男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)と、▽実質的経営者の立場にある建設会社が、いずれも最低制限価格と同額で落札していました。
・2021年8月の入札 流木低区配水本管布設替工事
男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)が、最低制限価格と同額の9億6603万4000円で落札
(入札には5つの共同企業体(JV)が参加 2つのJVは最低制限価格を下回り失格)
・2024年5月の入札 土生町配水本管布設替工事
男性が実質的経営者の立場にある建設会社が、最低制限価格と同額の1億3425万8000円で落札
(建設会社14社が参加 4社が最低制限価格を下回り失格 辞退が2社)
永野容疑者と業者の”癒着”を疑う声
地元の建設業界関係者らを取材すると、永野容疑者とこの男性の建設会社を巡っては、“癒着”を疑う声も上がっていました。
建設会社の関係者
「永野前市長とその建設会社は、昔から昵懇の仲。仲が良いのはよく聞いた。永野前市長時代は市の発注工事をよく落としていた印象がある」
別の建設会社の関係者
「ある入札の際に、分厚い資料を用意した業者が、薄い資料だったその建設会社に負け、おかしいなと言われていた。毎年のように、その建設会社が落札していて、不自然だと言われていた」
岸和田市は、公共工事の入札に参加する際に、建設業者を格付けしていて、請け負える工事金額の目安も設定しています。
渦中の男性が代表取締役を務めていた建設会社の格付けは、合計でわずか10社しかランクインしていない、最上位の格付けとなっていました。
入札競争激しく最低制限価格と同額で落札のケース増 正確な価格予測が必要な現状
最低制限価格は、公共工事などの入札において、不当に安い価格で入札されることを防ぎ、工事や業務の品質を確保するために設定されるもので、最も近い価格を提示した業者が落札することになりますが、下回れば失格となり落札できません。
関係者らを取材すると、最近は最低制限価格を計算するソフトウェアの精度も上がり、最低制限価格と同額を提示できるケースも多く、落札して受注を獲得するためには、より正確な価格予測が必要になっていたということです。
岸和田競輪場の関連工事の入札めぐり起訴
また、永野容疑者は9月24日、岸和田競輪場施設整備工事に関連して2021年5月に行われた競争入札をめぐり、同じ男性に最低制限価格を伝えて工事を落札させたとして、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の罪で起訴されました。
起訴内容は、永野容疑者が入札の4日ほど前に、携帯電話で男性に電話をかけ、最低制限価格が3億4754万6000円(税抜き)であることを教え、男性が代表取締役を務めていた建設会社に、それを2000円だけ上回る額で落札させたというものです。
・2021年5月の入札 岸和田競輪場施設整備工事
男性が代表取締役を務めていた建設会社が、最低制限価格より2000円高い3億4754万8000円で落札
(建設会社7社が参加 1社が最低制限価格下回り失格 1社が辞退)
事件の経緯や業者からの働きかけは
地検特捜部は、起訴された件についても、永野容疑者の認否を明らかにしていませんが、永野容疑者が落札させるために、繰り返し正確な情報を漏らしたとみて、最低制限価格を漏らした経緯や、業者側からの働きかけなどについて捜査しています。
永野容疑者は2018年の岸和田市長選で初当選。女性との性的関係をめぐる裁判で、解決金を支払うことなどで去年11月に和解が成立したものの、岸和田市議会から2度不信任を受けて今年2月に失職。今年4月の市長選に出馬したものの、落選していました。
岸和田市長「最低制限価格にランダム係数を加える仕組み導入」
岸和田市の佐野英利市長は今回の件を受け、9月26日に臨時の会見を開き、入札制度を改革する考えを明らかにしました。
岸和田市・佐野英利市長
「汚職事件が起き、前市長が再逮捕される事態となりました。市民の皆様に大きなご不安、そしてご心配をおかけしていることに対して、心からお詫びを申し上げます」
「今後は最低制限価格に対して、入札当日にランダム係数を加える仕組みを導入していきたい。このことにより、私も含めて事前に正確な最低制限価格を知ることが不可能になり、不正を根本から排除していきたい」
佐野市長は来年4月をめどに新しい取り組みを導入し、透明性を確保し、不信感を払拭していきたいとしています。
2025年09月28日(日)現在の情報です