2026年01月10日(土)公開
「一料理人として世界に出てみたい」42歳・2児の父が日本背負う"食の外交官"公邸料理人を目指す! 海外の食材事情・宗教など考慮したメニュー作りに奮闘 謎に包まれた試験の結果は?
編集部セレクト
“食の外交官”とも呼ばれる公邸料理人。日本大使館など、公館の専属シェフで世界の要人を料理でもてなします。しかし、世界各地にある日本の在外公館の料理人の不足が課題となっていて、初めて人材を一般募集することになりました。 今回、そんな公邸料理人への挑戦を決めた男性に密着しました。
元・公邸料理人「日本を背負っていく重圧・責任感。すばらしい仕事」

大阪の北部、能勢町。ここに地元でとれた鹿肉や野草などを使った独創的な料理で評判の「能勢 日本料理 新」という店があります。
オーナーシェフの中井建さんは、元・公邸料理人です。2016年から4年間、ベルギーの欧州連合日本政府代表部の料理長として赴任していました。
(中井健さん)「日本というものを背負っていく重圧・責任感でふだん会食をお出しするその独特の雰囲気っていうのは、公邸料理人にしかないと思いますし、すばらしい仕事やと僕は思っています」
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厨房の責任者として、各国の要人を招いた会食などの食材選びから調理まで、一切を取り仕切ってきたといいます。
(中井健さん)「現地に行って一番苦労するのは仕入れなんですよ。日本と同じものがまずないです。そこをいかに現地のものを理解して取り入れるか。タイトなスケジュールを組まれているお客さまだと、『2時間以内に出せ』とか『1時間半以内にこれだけ出してくれ』っていう話になるんです。火入れのタイミング、ご飯を炊き上げるタイミング、お寿司を握るタイミング、めちゃくちゃ大事になってくる」
「自分が頑張ってきた結果を出したい」公邸料理人への挑戦を決めた男性

世界に230か所以上ある日本の在外公館。外交の重要な拠点ですが、その一端を担う料理人の不足が課題となっていました。
そこで外務省は去年、最低報酬を従来の約1.5倍に引き上げるなど待遇を大幅に改善。これまで公邸料理人は、大使の個人的な人脈や紹介など限られたルートで選ばれてきましたが、公募によって幅広く人材を募ることにしました。
滋賀県高島市に住む星田俊輔さん(42)。県内にある企業の保養所で働く料理人で、今回「公邸料理人」への挑戦を決めたひとりです。
妻と子どもとの4人暮らし。家族と過ごす時間の中で、料理人としてこれから進むべき道を日々考えてきたといいます。
(星田俊輔さん)「夢っていうかおぼろげに(心の)どこかにはあったんですけど、世界に出てみたかったっていうのがまず第一にあって。一料理人として自分が頑張ってきた結果みたいなのを出していきたいなと」
今回公募が始まり、待遇も改善されたことをきっかけに挑戦を決めました。希望の赴任先は、尊敬する先輩が包丁を握るフィリピンです。
現地の食材事情や宗教・文化に配慮したメニュー作り

星田さんの料理人としてのキャリアは20年以上。書類選考を通過し、次は実技試験です。休日は自宅で試験を想定したメニュー作りに励みます。
(星田俊輔さん)「例えば銀杏でお豆腐にしてるんですけど、本来『吉野葛』というものを使うんですけど、海外ではおそらく手に入らないんじゃないかと想定していて、今回小麦粉と片栗粉で固めて作りました」
(星田俊輔さん)「ひとつひとつ味のバランスを考えながら。ちょっと甘いものであったりとか、シャキシャキしたものとか、焼き魚であったりとか、いろんな味を楽しんでもらえるように構成しました」
外交の場を想定し、宗教や文化への配慮も欠かせません。
(星田俊輔さん)「ハラールとかって、豚肉やアルコールがダメなんですけど、そういうこともクリアできるような形で作らせてもらっています」
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星田さんの料理に妻の加奈子さんは…
(妻・加奈子さん)「意外な組み合わせもあって、日本のものも程よく入ってるので、(海外の方にも)楽しんでいただけると思います。(Q実技試験はいけそうですか?)バッチリですね。結婚して10年目ぐらいですけど、今まで結構『やりたい』『こうする』って言ったこと、有言実行で全部かなえてきているので、そこは信じようかなと」
手際の良さや柔軟な発想力が求められる実技試験

そして去年10月、公邸料理人の実技試験の日がやってきました。
(星田俊輔さん)「今は落ち着いています。しっかりやっていけると思います」
星田さんは控室でひとり、順番を待ちます。
(星田俊輔さん)「よろしくお願いします」
(試験官)「それでは調理を始めてください」
試験の課題は、日本をイメージできる前菜の盛り合わせなど。手際の良さや、現地の食材事情を想定した柔軟な発想力、そして、ゲストを目でも楽しませる高度な盛り付け技術などが試されます。しかしそれ以上は非公開。試験官を務めるシェフらの情報も明かすことはできません。
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20年間料理人として培ってきた技術のすべてを出し切りました。
(星田俊輔さん)「(Qお疲れ様でした。どうでした?)本当にすごく緊張しましたね。あんな感じで人がたくさんいるなかやることってなかなかないので。(手が)ちょっと震えちゃいましたね、思ったより。最善は尽くせたかなとは思っております」
運命の合格発表日 果たして結果は…?

実技試験から数週間後、運命の合否発表の日を迎えました。
(星田俊輔さん)「きのうはあんまり寝られませんでしたね、ちょっとドキドキして。結果はどうであれ、チャレンジしたことに、すごく深い意味があるかなと」
約束の時間が迫ります。星田さんの携帯電話が鳴りました。果たして結果は…
(星田俊輔さん)「大丈夫でしたよ。まさかちょっと2つの公館からオファーをいただけたっていう。フィリピン・ダバオで行くことに」
希望していたフィリピン・ダバオへの赴任が決まりました。
愛する家族のもとを離れ…新たな一歩を踏み出す決意

夫婦で話し合い、子どもたちの学校生活を優先するため星田さんは単身で行くことにしました。
(星田俊輔さん)「きょうね、合格通知があって、海外に行くことなりました。…ちょっとやだコウちゃん?まだわかんないね」
(妻・加奈子さん)「あとから泣くパターン」
(星田俊輔さん)「行くとき泣くパターンね」
(妻・加奈子さん)「たぶん、寂しさはあとから来るかなと思っていて、だんだん用意をしていったりとか、話が進んでいったら多分どこかで1回泣くよって話は(しています)」
任期は2年。愛する家族のもとを離れ、料理人としての新たな一歩を踏み出します。
(星田俊輔さん)「頑張ってる姿を(子どもたちに)見せて、僕に続いてほしいなっていう気持ちのほうが大きいので。国のことももちろんそうなんですけど、家族のことも背負ってしっかりやりたいと思っています」
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