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「振り返ったら幸せだった」強豪野球部たった1人の女子選手が苦悩を乗り越え「チームになくてはならない存在」になれた理由は『誰一人否定せずに応援してくれた』

2023年07月28日(金)放送

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 甲子園を目指して熱戦が繰り広げられた地方大会。ですが女子選手にとって甲子園はまだ遠い存在です。そんな中、硬式野球部でたった1人の女子選手として奮闘する部員がいました。男子選手とともに甲子園を目指した最後の夏に密着しました。

強豪野球部の女子選手 練習メニューも男子と同じ

 神戸市中央区にある神戸学院大学附属高校。元々は女子高だった学校で生徒会長を務めるのは3年の鬼澤日和さんです。
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 学校行事では全生徒の前で話をしたり、体育の授業ではクラスを盛り上げたり。
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 一見、どこにでもいる女子高生に見えますが、実はもう1つの顔が。創部8年目を迎えた男子硬式野球部に所属する初めての女子選手なんです。
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 部員114人の大所帯。県大会で準優勝したこともある強豪チームで、今年は悲願の甲子園初出場を目指しています。だからこそ厳しい練習の日々です。
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 ランニングでは男子についていけず。
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 ノックも容赦なし。

 【練習中のやりとり】
 (仲間)「日和、日和、呼んでこい!」
 (日和さん)「お願いします!」
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 ミスをしたら監督は見逃してくれません。

 (岩上昌由監督)「二遊間が何も考えないで野球なんかできるかいな。ただ捕ってるだけやないか。同じやねん、やってることずっと。成長がないねん、成長が」
 (日和さん)「はい!」

 一切の特別扱いはなし。同じメニューをこなし奮闘する日和さん。

「チームになくてはならない存在」「選手としての誇りを持っている」

 他の部員たちはどう見ているのでしょうか。

 (3年 峯松倖生主将)
 「明るくチームの雰囲気を作るっていうところを目的としてやってくれているので、チームにはなくてはならない存在になっているなと思います」
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 (マネージャー3年 松岡星名さん)
 「選手としての誇りを持っていて、女の子やけど私は選手やっていうのが彼女にあると思う」

コロナに阻まれた兄の『甲子園』の夢を引き継ぐ

 しかし今のルールでは女子選手が公式戦でプレーすることは認められていません。それでも日和さんがこのチームで甲子園を目指すのには理由があります。

 (鬼澤日和さん)
 「元々野球を始めたのは兄の影響だったので、その兄が目指していたところが甲子園で。兄は甲子園にコロナの代で行けなかったので、どうしても甲子園には執着しているというか、どうしても行きたいというのがあります」

 学生コーチとしてチームを支える3つ上の兄・凛太郎さんの存在です。凛太郎さんは3年の時、コロナで甲子園が中止に。悔しい日々を過ごしました。
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 幼い頃から兄の背中を追い続け、小・中学校は男子と同じチームでキャプテンまで務めました。高校進学の時、女子チームも考えましたが、兄の悔しい思いを引き継ぎ神戸学院で甲子園を目指すことを決断しました。
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 (兄 凛太郎さん)
 「正直、高校に日和が入学してから目の前でやっている姿を見るまでは、本当に野球できるの?ついてこれんの?くらいの感じで思っていましたね」
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 (母 和子さん)
 「甲子園に出ることができないのも入学した時からわかっていたので。それでも挑戦するんだから、日和にしかできないこと、日和だからできることがあるんかなと思って。日和もそれで頑張っているんだと思います」

今では練習試合にも出場する戦力だが「最初はやめたいなとずっと思っていた」

 午前6時すぎ。グラウンドに日和さんの姿がありました。体力の差を技術で補おうと夏の大会前はほぼ毎朝自主練習。
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 こうした積み重ねが少しずつ実り、今では練習試合に出場するまでに。チームに必要な戦力になりました。
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 (岩上昌由監督)
 「最初の1か月くらいで、女の子だからではなくて、鬼澤選手として選手も見ているんですね。鬼澤選手が体力は劣るけど最後まで粘り強く絶対にやり遂げるとか、ひたむきにボールを追っかけるとか、そういう姿勢がチームに与えた影響は本当に大きいと思います」

 入部して以来、周りには弱音は吐かず、ひたむきに取り組んできました。でも本当は。

 (鬼澤日和さん)
 「1年生の時とかは最初全然ついていけなかったりとか。男子は男子で仲良くなるじゃないですか。私もみんなと仲良くなれるけど、やっぱりそこまで本当に仲良いみたいな関係にはなれなくて。それでやっぱりしんどいなとか、体力もついていけないなっていうので、野球をやめたいなというのはずっと思っていましたね、最初は」

家族への思い「否定せずに応援してくれたことがここまで続けられた理由」

 そんな日和さんは最後の大会前、家族に手紙で思いを伝えていました。

 【日和さんからの手紙より】
 「もう少しで長くも短い高校野球が終わります。『神戸学院で野球をしたい』と伝えたとき、誰一人否定せずにずっと近くで応援してくれたことがここまで続けられた理由です。絶対に甲子園に連れていきます』
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 (母 和子さん)
 「野球部の中でもいろいろ考えていろいろ成長してくれているんかなと思います」
 (父 敬さん)
 「一度決めたことをやり抜く力は、子どもから教えられたかなというのはあります」

兵庫大会の4回戦 試合は拮抗し延長戦へ

 そして迎えた最後の夏。神戸学院は兵庫大会を2回戦(対姫路)、3回戦(対御影)と順調に突破。4回戦の相手は夏の甲子園優勝経験もある名門・東洋大姫路。日和さんはスタンドから声援を送ります。
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 試合は拮抗したシーソーゲーム。

 (声援を送る日和さん)
 「気持ち、気持ち」
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 仲間の粘りに思わず涙します。
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 9回を終わって5対5の同点。試合は延長戦へ。意地と意地とのぶつかり合い。
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 取られても取り返す。終わらない熱戦。
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 再び同点に追いつかれ、なおピンチが続く延長11回裏、サヨナラ負け。最後の夏が終わりました。こみあげる思いに涙が止まりません。

 (仲間)「すまん、すまん。ありがとう。よく頑張った」
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 (鬼澤日和さん)
 「つらいこともあったんですけど、振り返ったら幸せだったなというのが一番ですね。最後は甲子園で終わりたかったというのはあるんですけど、ここまで監督さんたちに恵まれて、メンバーにも環境にも恵まれてやってきたので、本当にユニホームを着て最後も終わらせていただけたというのは感謝でしかないかなと思っています」

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