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「水は真っ黒けだった」 汚染されていた『ヘドロ運河』を魚が育つ場所に変える...地元の手で「里海を作って湧き出る魚で生計を立てるのが理想」

2023年06月30日(金)放送

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 かつては底にヘドロ、表面に油といった状態で水質汚染が問題になっていた『兵庫運河(神戸市兵庫区)』。しかし、地域の人たちの手によって運河は変わりつつあります。きっかけとなったのは、みそ汁の具材でもおなじみの“あの生き物”でした。

 6月13日、夜明け前の午前4時、港を出航した漁船が神戸沖を目指します。
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 網を引くこと2時間、揚がってきたのはイワシなどの稚魚・シラスです。5月に漁が解禁されたばかり。今が旬です。
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 兵庫漁協に所属する糸谷謙一さん(41)。

 (兵庫漁協 糸谷謙一さん)
 「神戸のシラス漁ってあまり知られていないと思うんですけど結構昔から盛んで。見えている船すべて神戸の漁師さんです。釜揚げが一番ですかね。とれたやつをその日のうちに釜揚げにして食べる」

 この時期は週に4日、シラス漁に出ていますが、一方で、もう1つ取り組んでいる活動があります。

兵庫運河でアマモを育てる実験

 5月下旬、漁協近くの兵庫運河に糸谷さんの姿がありました。
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 漁師仲間や研究者らと連携して、ここで水草のアマモを育てる実験をしているのです。

 (兵庫漁協 糸谷謙一さん)
 「30cmをちょっと超えとる。これ成功事例ちゃうんですかね」
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 いろいろな場所にアマモを植えた鉢を沈めて成長に適した環境を探ります。

 (兵庫漁協 糸谷謙一さん)
 「アマモに卵を産み付ける魚もいますし隠れ家にもなりますし。生き物が戻る場所づくりです」

かつて兵庫運河は「水の色は真っ黒だった」

 1899年に完成した兵庫運河。船が安全に行き来できるように掘られた全長約6.5kmの日本最大級の運河です。高度成長期には丸太の貯木場として利用され、沿岸には木材を扱う会社が軒を連ねました。
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 しかし次第に、はがれた木の皮が堆積してヘドロ化。
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 船から漏れた油や工場排水などで水質汚染は深刻化し、運河から魚は姿を消しました。
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 近くで生まれ育ち運河の移り変わりを見てきた服部鋭治さん(73)。長年、運河の清掃活動にも携わってきました。

 (服部鋭治さん)
 「僕が小学校中学校のころまでは水の色は真っ黒けだったんですよね。時々メタンガスがぼこぼこっと出てきて臭いもしていましたね。すごくきれいになった。魚もたくさんいるし、とてもいい環境になってきたんじゃないかなと思いますね」

アサリ発見を機に『自然を再生するプロジェクト』

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 清掃活動や工場排水の規制が進んだことなどで環境は少しずつ良くなっていましたが、一気に加速したのは12年前、運河でアサリが見つかったことでした。「もっと環境を良くすれば生き物がさらに戻ってくるのではないか」。そう考えて服部さんや漁師の糸谷さんらが『自然を再生するプロジェクト』を立ち上げたのです。

 (兵庫漁協 糸谷謙一さん)
 「アサリを増やすということを勉強していくうちに、環境を良くして里海(魚が育つ場所)作りをすることが漁業者として一番いいんじゃないかなと思って。稚魚の産卵場とか育つ場所をこういうところに作って、ここから湧き出る魚で僕たちは生計を立てるのが一番理想ですかね」

 そこで目を付けたのがアマモの育成でした。アマモには、赤潮の原因になるリンや窒素などを吸収して光合成で水中に酸素を供給する水質改善効果と、魚の隠れ家になり稚魚が育ちやすい環境を作る効果があると言われています。
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 実際、運河に潜ってみると、生い茂るアマモの葉の間にはメバルなどの稚魚がたくさん確認できました。

 生き物を育み“海のゆりかご”とも呼ばれるアマモ。水質を改善しながら、将来の漁獲量の増加にも期待できる、まさに一石二鳥というわけです。

アサリを増やしてさらなる水質改善を目指す

 そして、アマモの育成と合わせて力を入れているのが、人工干潟の整備です。水をろ過する作用があるアサリなどの二枚貝を増やし、より一層の水質改善を図る狙いです。
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 6月17日、プロジェクトのメンバーと研究者らが集まり、水質や生き物の一斉調査が行われました。

 (大阪公立大高専 大谷壮介准教授)
 「水中の二酸化炭素の濃度を測っているところです」

 運河のアマモが光合成によってどれほど二酸化炭素を吸収しているのかを調べます。
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 そして干潟では、いろいろな大きさのアサリがゴロゴロと出てきました。
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 (徳島大学 中西敬客員教授)
 「これは春の産卵ですね。4月ごろに生まれたやつがこれぐらいになる。春サイズ、去年の秋サイズ、去年の春サイズ。サイズ感がバラバラにあるということは、産卵が次につながっている」

「今後どうしていくかの答えがここから出たらいいなと」

 漁師の糸谷さんは、ここでの取り組みを通じて、他の地域でも実践できる環境再生のモデルケースを作りたいと話します。

 (兵庫漁協 糸谷謙一さん)
 「もしこれが本当にいいという答えが出たなら、戻せるところには干潟を戻したりだとか。今後どうしていくかの答えがここから出たらいいなと思っています。大阪湾や全国にこういう取り組みが広がってくれると、たぶん海は今よりは良くなるんじゃないかなと思っています」

 地元の人たちの手によって環境が改善して生き物が戻ってきた兵庫運河。ずっと先まで豊かな水辺が残せるように活動は続きます。

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