MBS(毎日放送)

木造駅舎がまるで「バス停」に!?コンパクト化でコスト削減進むローカル線 "赤字路線の救世主"と注目される『世界初の特殊車両』導入で利用者増の鉄道会社も

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE

 いまJR四国での管内では赤字対策・コスト削減のために、昔ながらの駅舎の建て替えが進められています。ローカル線の赤字に頭を痛める鉄道会社は少なくありませんが、各地では生き残りをかけたさまざまな取り組みが行われています。

まるで「バス停」 建て替えで簡素化が進む駅舎

 のどかな田舎風景を駆け抜ける列車。徳島県では電車ではなくディーゼル車が走ります。ここで最近、ある変化が起きているといいます。
2.jpg
 JR牟岐線の立江駅。町の風景とはちょっぴり不釣り合いなメタリックの建物があります。これ、なにかというと「駅舎」なんです。中はこじんまりとしていて、改札はなく券売機もない無人駅です。ぽつんとさみしい駅舎。でも、ここだけではありません。
3.jpg
 (記者リポート)
 「JR徳島線・阿波半田駅に来ているのですが、駅舎はご覧の通り非常にコンパクトです」

 「駅舎」というより「バス停」に近い印象です。隣にあるトイレよりも小さな駅舎。これに地元の人たちは…。

 (地元の人)
 「(Q初めて駅舎を見た時どう思った?)すごくさっぱりしたなと思いました」
 「乗り降りする人がおらんし、こんなんでもええんちゃう。なかってもええくらいよ」
4.jpg
 実は、いま徳島県内の歴史ある木造の駅舎が次々と取り壊され、簡素な形へと姿をかえているのです。背景にあるのは「コスト削減」。改修工事や検査などで多ければ数百万円が定期的にかかる木造駅舎に比べて、簡素化することでその費用を大幅に削減できるというのです。いまでは徳島県内にある47の駅舎のうち、2割近くの駅舎が建て替えられました。
5.jpg
 しかし、学生の乗り降りが多い駅では困ったこともあります。

 (地元の人)
 「(Q雨の日とかは?)水が入ってきます。しかもベンチがめっちゃ水だらけになるんですよ。20人~30人くらいがこの中に入って、ずっと来るのを待っていますね。めっちゃ窮屈な思いをして」
 「(前の)木造駅舎のほうが好きでした。座れる空間も広かったですし、建物感があったので」
6.jpg
 東みよし町にある阿波加茂駅も今後の建て替えが決まっています。しかし、地元の住民らが木造駅舎の取り壊しに反対する署名を町に提出するなど、存続を望む声も根強くあります。

 (地元の人)
 「残念やね。ここが中心じゃけん、加茂のね。加茂らしい駅舎を置いといてもらいたいけどね」

専門家『地域とJRが一緒になって駅を守っていく必要がある』

 JR四国にとっては存続のための苦肉の策といえますが、この動きについて専門家は次のように話します。

 (関西大学経済学部 宇都宮浄人教授)
 「JR四国はそもそも利益が出る会社ではない。ただ、公益性があるということでやっている会社ですから、すべてをJRに丸投げしてしまってはいけない。地域とJRが一緒になって駅を守っていく必要がある」

「バス」として走り「鉄道」としても走る!世界初の特殊車両「DMV」

 一方、攻めの姿勢で生き残りをかける鉄道会社もあります。徳島県最南端の町・海陽町。一見、普通のバスのように見える乗り物が、「赤字路線の救世主」として注目されているのです。

 (観光客)
 「これだけが目的で2~3時間くらいかけて来たね」
 「(Q何が一番の旅行の目玉?)これ。世界初やから一度乗ってみようと」
9.jpg
 それは、バスと鉄道の2つの顔をもつ“世界初”の特殊車両「デュアル・モード・ビークル
(DMV)」です。乗客を乗せたままモードチェンジするということで、実際に乗り心地を体験しました。
10.jpg
 (車内アナウンス)
 「ただいまから鉄道モードにモードチェンジを行います。モードチェンジスタート」

 運転士がスイッチを押すと、車輪が降りて車体がゆっくりと持ち上がります。

 (記者リポート)
 「音楽が流れだしました。ちょっとずつ車体が傾いている…前が浮いているような気がします。あ、すごい。走行音が変わりました。ガタンゴトンと鳴っています」

 モードチェンジにかかる時間はわずか15秒ほど。DMVを導入して以降、世界初の車両が体験できる旅行ツアーがつくられるなど、全国から多くの人が訪れるようになりました。

 (愛媛から来た人)
 「モードチェンジとか太鼓の音とかいろいろあっておもしろかった」 
11.jpg
 バス会社と鉄道会社に勤めている2人は、なにやら意見が割れているようで…。

     (記者)「これは駅舎?バス停?」
 (バス会社の人)「これはバス停でしょう」
 (鉄道会社の人)「これは駅舎です」
 (バス会社の人)「これは道路にあるのでバス停です」
 (鉄道会社の人)「いや、これは駅舎って言いますね。だって、モノレールとかタイヤで走っている」
 (バス会社の人)「あれはレールやろ?ここにレールねえやろ」

DMV導入後は売り上げも好調!取締役『観光の起爆剤になっている』

 DMVは2021年12月に運行がスタート。徳島県南部と高知県東部を結ぶ海岸線をバスモード・鉄道モードと切り替えて走ります。
13.jpg
 第三セクターの阿佐海岸鉄道が約16億3000万円かけて実用化を進めたDMV。1992年の開業以来赤字が続いていましたが、導入後は利用者数がコロナ禍前の約2倍に。売り上げも5倍近くとかなりの好調なんだそうです。
14.jpg
 (阿佐海岸鉄道 大谷尚義取締役)
 「地域に新しい人の流れを呼び込む観光の起爆剤。地域の経済効果を上げていくのも大きな使命というか、目的になっています」
15.jpg
 これを商機に町の土産物売り場にはDMVグッズがずらり。Tシャツにぬいぐるみなど15種類以上が並びます。
16.jpg
 特に人気なのが、DMV型のモナカ。車体やタイヤにあんこをつめ、自分で組み立てることができるんです。さらにバスから鉄道へモードチェンジすることもできます。肝心のお味は?

 (記者リポート)
 「あんこを結構入れたんですけど、全然しつこくなくて、丸ごとペロっといけそうですね」
17.jpg
 観光には大きな役目を果たしているDMVですが、今後は地元の人の日常の交通手段にも根付きたいといいます。

 (阿佐海岸鉄道 大谷尚義取締役)
 「多くの観光客の方が来てくださっていますけれども、地域のみなさんの日常の足としても定着できたらいいなと思っています」

 赤字路線をどう守り、存続させるか。鉄道各社の挑戦は続きます。

2023年05月26日(金)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

「他の人にも被弾した可能性」弾丸の状況などを捜査した警察官が証言 検察側は安倍元総理の体内に残っていた弾丸を証拠として提示【山上被告第4回公判】

2025/11/04

『命がけの出産』赤ちゃんの足型を副葬品に 生と死が身近にあった、縄文人の死生観 土偶や土製品に込めた願い

2025/11/04

【独自】息子が安倍元総理を銃撃...山上被告の母親が"自責の念"明かす「献金だけでなく家族での愛の問題」 一方で"より強まった"旧統一教会への信仰心

2025/11/03

強度行動障害のある28歳息子と初めて離れて暮らす決断 「自分たちが世話が出来なくなる前に」両親はパニックに対応できる施設を6年間探す...届いた「受け入れ可能」のメール

2025/11/02

【独自】旧統一教会の"財産移転先"天地正教とは 「弥勒菩薩は文鮮明氏」宣言から濃くなった教会の色...過度な献金要求を元信者が証言 二代目教主「乗っ取られた」旧統一教会の見解は

2025/10/31

【カツめし】夫婦で50年!路地裏の昭和釜めし 京都・下京区「月村」

2025/10/30

「被告人は『当たったか?』と言葉を発した」山上被告を取り押さえた警察官が明かす緊迫の状況 提示された安倍氏の傷痕の写真を食い入るように見つめた山上被告 自作のパイプ銃は「発射罪」適用されるか?

2025/10/30

「早く供養してあげないとと。思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」死産した赤ちゃんの遺体を大阪市内の公園に遺棄 24歳女の孤独「産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」【裁判ルポ】

2025/10/30

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook