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居場所失った若者が集まるフリースクール『仲間外れで殻に閉じこもった青年』に寄り添う『挫折乗り越えた指導員』共に歩む自立への道

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 不登校の小中学生が過去最多となっています。2021年度は約24万5000人で、前年度と比べて5万人ほど増えていて、文科省は「コロナ禍が影響している可能性がある」としています。そんな中、不登校だった過去を持つ若者たちが集まる「フリースクール」があります。今回、ここで働く名物職員と、1人の若者が卒業するまでのあゆみを取材しました。

全寮制のフリースクールで見つける「自分らしい生き方」

 神戸市の山奥に若者たちが共同生活を送っている場所があります。全寮制のフリースクールの「神出学園」です。15歳~23歳までの37人が在籍。親からの虐待やいじめなどで学校に馴染めず、学園生の多くは不登校だった過去があります。
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 (高校を中退した18歳の学園生)
 「中学校のころは面白くないなーって毎日を過ごしていたので、どんどん気力がなくなっていってたんですよ。何にも面白くなかったんで、何にもする気が起きなかったんです」
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 ここで行われるのは、いわゆる授業ではありません。農作業や生活実習など「体験プログラム」を通じて社会とのつながりを取り戻し、『自分らしい生き方』を見つける支援を行っています。

学園名物スタッフはチャンピオン「挫折乗り越えた経験」を基に寄り添う

 指導員の大崎浩さん(45)。学園生からも慕われる名物スタッフです。その大崎さんには実はもう一つの顔があります。
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 去年11月に行われたテニスの全国大会に出場。20代の選手が参加する中で45歳にして異例のチャンピオンとなるなど、数々の大会を制覇するまさに鉄人なのです。しかし、ここまでは苦難の道のりでした。学生時代は全国大会への出場は一度きりで、実業団に進むも3年で引退。高校の保健体育科の教諭となりました。転機となったのは39歳のとき。仲間と出場した大会で大敗したことがきっかけとなりテニスを本格的に再開します。練習以外にも食事や睡眠など体づくりを見直したことで、ようやく開花できたのです。
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 (大崎浩さん)
 「ここに来ている子は、何らかの失敗をしているというか、自分をなかなか表現できなかったということもありますし。それは僕自身テニスという競技を通じても本当に何度も何度も失敗を繰り返してきて、挫折も繰り返してきましたし。彼ら(学園生)の苦しみというのも完全にとは言わないですけれども、ある程度共感できる部分はあって。そういう部分については彼らと共に考えることができたのかなというふうには思っていますね」

発達障害ある20歳の学園生「居場所がないのがつらかった」

 大崎さんには気にかける学園生がいます。20歳の孝さん(仮名)です。

 (大崎浩さん)
 「彼もサッカーがものすごく上手で、僕なんかよりもずっと上手なんですよ。テニスは僕のほうがちょっと教えられるので」

 孝さんには発達障害があります。幼いころから自分の思いを伝えることが苦手で、対人関係をうまく築けず悩み続けてきました。

 (孝さん)
 「(ささいなことを)気にしちゃうのがちょっと悩みというか、自分の性格なのかなって。ちょっと短所に思っちゃいますよね」
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 幼いころに始めたサッカーが友達とのつながりを感じられるほぼ唯一の時間でした。ところが、中学生のころに所属していたサッカー部で仲間外れにされるようになります。

 (孝さん)
 「あまりうまくないからか、練習中のグループに入れてくれなかったのは、つらかったですね。先生に相談しようと思ったんですけど、なかなか相談する勇気がなくて。グラウンドの隅のほうでその時間を耐えしのいでいたのがつらかった。居場所がないのがつらかったという感じですね、部活に」

 中学2年でサッカー部をやめてからは殻に閉じこもるように。進学した全日制の高校も中退しました。
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 (孝さんの父親)
 「(学生時代は)あまり楽しそうには見えなかったですね、残念ながら。それほど会話を交わすこともなく、横から見ていてしんどそうかなというのは見てとれたかなと」

寄り添い続ける大崎さん「自信を持ったらいいと思う」

 そんな孝さんが抱える過去に大崎さんは正面から向き合います。

 (孝さん)
 「みんな大学に行ったり専門学校に行ったりしているけど自分はこういう学園で。最初は負け組やと思っていたんですけど、やっぱり全日制に行けなかったことや、あまり勉強で結果を出せなかったという意味では、ここに来るまですごく悩んで。高校途中で変わって良い仕事に就けるのかよって」
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 (大崎浩さん)
 「学校というのはひとつの枠の中にはめ込まざるを得ない。その枠にはめていってしまうというか。合わないという子はいて、ただその子が能力がないということは絶対になくて。別の学校へ行ったり別の仕事をしたりして成功している子たちもたくさんいるし。ここでたくさん社会的な経験ができたということは、それだけ経験値が積みあがっているということだから、自信を持ったらいいと思う」

 何度も挫折を味わった自分だからこそできることがあるはず。大崎さんは寄り添い続けます。

大好きなサッカーを通じて「人とのつながり」を持てるように

 孝さんが神出学園にきて2年。これまで避け続けてきた人とのつながりも少しずつ持てるようにもなりました。そして大好きだったサッカーにも向き合えるように。今では毎週のようにヴィッセル神戸の試合に駆けつけ、サポーター同士のつながりを持てるまでになったのです。

 (孝さん)
 「人前で話したりするのがすごく苦手だったんですけど、神出学園でそれができるようになって。人前で話せるようになったのは一番成長を感じましたね」

卒業迎えた学園生『自分を信じて努力すれば絶対に何か変わる』

 3月15日、孝さんが神出学園を卒業する日です。孝さんが大崎さんに今後の決意を伝えます。

 (孝さん)
 「環境が変わるということは次のステップに進むということなので、絶対にそれが自分の成長にもつながりますし。環境が変わっても、関わる人が変わっても、雰囲気に馴染めなくても、自分を信じて努力すれば絶対に何か変わると思うので」

 (大崎浩さん)
 「ここで培った仲間とコミュニケーションをとる力とか、自分をしっかりと表現する力というのは身に付いたと思うからね。それをまた次のステージでしっかり活かしてもらえたらと思う」
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 会場には孝さんが書き記したメッセージがありました。『ヴィッセル神戸の応援団のコールリーダーになる』。今の孝さんの夢です。

 (孝さん)
 「夢を叶えて、良い仕事に就いて、良い奥さんをもらって。すばらしい大人になれたらなと思います」
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 (大崎さん)「俺も頑張るんで、頑張ってね」
  (孝さん)「行ってきます」
 (大崎さん)「またね」
  (孝さん)「ありがとうございました」
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 (大崎浩さん)
 「一緒に生活していた学園生がいなくなるのは寂しい気持ちは正直あります。ただ彼があれだけ力強くこれからのことを語ってくれたので、それに対してぜひ応援していきたいと思います」

 自分もそうだった、きっかけさえあれば前に進めるはず。そう信じて、4月からまた新たな学園生を迎え入れます。

2023年03月31日(金)現在の情報です

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