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「ガリガリと頭をかじられ...」ヒグマの襲撃で左目を失ったハンター 自ら取り組む人的被害18年ゼロの共生策『原田式ゾーニング』とは 駆除するのは『人里に出たクマ』だけ「クマも山に住む権利を持っている」

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 2025年度、クマの出没件数と人的被害が過去最多となりました。冬眠しているはずの冬場にも出没していて、2月に入ってからも岩手県で男性がクマに襲われ重傷を負うなどの被害が発生しています。 こうした中、クマとの共生を模索するベテランのハンターたちがいます。その挑戦を取材しました。

クマによる人的被害 今年度は『過去最悪』の236人 関西でも目撃相次ぐ

 全国でとどまることのないクマ被害。今年度(去年4月~今年1月)のクマによる人的被害は236人で、過去最多となっています。

 関西ではこれまでクマが生息しない「空白地域」とされてきた場所でも、目撃情報が相次ぎました。

 なぜクマが人里に下りてくるのか。理由の1つと指摘されるのが、えさとなる木の実の不足です。クマに襲われ4人が死亡(去年4月~今年1月)するなど特に被害が深刻だった秋田県では、去年ブナの実が凶作だったといいます。

 (秋田県林業研究研修センター 和田覚環境経営部長)「えさを求めて里に下りざるを得ない。里に行くとクリや柿、くるみといった、豊作・凶作の波があまりない木があります。それらに依存する形でまず里に下りているというのが現状ではないかと」

クマを山の奥へかえすために「森を作らないといけない」

 こうしたなか、クマを山の奥へ戻そうと取り組んでいるハンターがいます。神奈川県山北町に住む杉本一さん(88)と、豊田里己(67)さんです。去年12月、杉本さんたちが地域の住民たちと行ったのは、ドングリがなる木の苗木をつくるための種まきです。

 (杉本一さん)「奥の山を見てきていただきたい。動物の痕跡がないんです。住める山じゃないんです。こんな山にしちゃったのは人間なんですよ」

 神奈川県によりますと、高度経済成長期にドングリがなる広葉樹を伐採し、木材としての需要が高いスギやヒノキなどの針葉樹を植えました。

 こうしたことから、クマなどのえさが減少。一般的に、手入れがされていない針葉樹の林には光が入りにくく、新たに広葉樹が育ちづらいといいます。
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 杉本さんは約10年前、人里から離れた山の中にドングリがなるクヌギなど約4万本を植樹しました。

 (杉本一さん)「動物を山にかえすにはこういう森を作らないといけない。もう少し動物のことを考えてやらないと。そういうことを一番わかっているのが猟師のはずなので。猟師がそういう方向で火をつけないと」

「ガリガリって…」クマに頭をかじられながらも抵抗 左目を失ったハンター

 クマによる被害を未然に防ぐ取り組みを実践し、「結果」に繋げてきたハンターもいます。北海道岩見沢市の原田勝男さん(85)です。

 原田さんは26年前、シカ猟の途中でヒグマに襲われ左目を失いました。

 かつて、自身を襲ったヒグマの頭蓋骨を今も倉庫に保管しています。

 (原田勝男さん)「これが俺をかじったやつです。こういうふうにして噛まれた。ガリガリガリガリって大根をかじるような」

 頭をかじられながらも、ヒグマの口の中に腕を突っ込んで抵抗したといいます。

 (原田勝男さん)「こういうふうに入れた。だから、手に傷がついている。苦しいもんだからフーフーフーって(ヒグマが)うなっているのが聞こえた」

「本来はクマのほうが逃げていくはず」 なぜ殺し合いになるのか

 この格闘の末、原田さんは重傷。ヒグマは、その場で死にました。

 (原田勝男さん)「俺とこれとの殺し合いだったんです。俺に殺された、この野郎、ばか者って強気なことを言っている。生き残ったからね」

 ヒグマはメスで体重は推定160kg。じつは、原田さんが襲われる数日前に別のハンターが駆除を試みていました。その際、弾が命中したものの、致命傷に至らなかったのです。

 (原田勝男さん)「あとで分かったことなんですけどね。それでなかったらクマが真正面切って襲ってくることはあまりないんですよ。本来はクマのほうが逃げていくはずなのが向かってきた」

クマが山から出てくるのを防ぐ 銃猟は行わない「原田式ゾーニング」とは

 クマの脅威を誰よりも知る原田さん。2007年に鳥獣被害対策を専門に行うNPOを設立しました。銃を使った狩猟は一切行わず、クマが市街地に出てこないよう、環境を整備する活動を続けています。

 (原田勝男さん)「緩衝地帯。それこそゾーニングだよね。“来ちゃダメですよ”と、ここまではいいけれど、ここから内側に入っちゃだめですよという、願いを込めて設置するんです」

 クマの生活圏と市街地の境目に「緩衝地帯」をつくり、そこに箱罠や電気柵を設置。ここから先が人里だとクマに認識させ、山から出てくるのを防いでいるのです。

 人呼んで“原田式ゾーニング”。岩見沢市にはクマの生息地が多くありますが、人的被害は少なくとも18年間出ていません。

「山の中に行って殺す方法は教えていない」

 原田さんは『境界を越えて人里に出てくるクマだけを駆除すればいい』と訴えます。

 (原田勝男さん)「山の中に行って殺す方法は教えていません。(クマが)山にいたっていいじゃないですか。“あの人ら”は“あの人ら”で山に住む権利を持っているんですから」

 一方で、罠にかかったクマを山にかえすことは絶対にありません。

 (原田勝男さん)「かえしたものはまた戻ってくるんです。ですから『かえす』という言葉は、美しいようにも聞こえるけど残酷なんです。檻に入ったものはそのつど処理して、地域の安全を守る」

 ハンターとしての長年の経験から、ゾーニングの有効性を感じ、実践してきた原田さん。自治体は、クマが街に出没するたびに猟友会に頼るのではなく、そもそもクマが出てこないように事前に対策することが重要だといいます。

 (原田勝男さん)「猟友会が鉄砲持って走って、俺から言わせたらバカみたいなもんだ。やっぱり計画的にやらないと。そういうところから改善していかないとクマ問題は解決しない」

 クマと人間が共生するためにはどうすればいいのか。ハンターたちも模索しています。

クマ対策、クマとの共生どうすれば…専門家の見解は

 クマと人間が共生するためにはどうすればいいのか、模索するハンターたち。こうした取り組みについて、クマの行動に詳しい東京農業大学・山崎晃司教授に見解を聞きました。

 神奈川県山北町のハンターたちが取り組んでいたドングリがなる広葉樹の植樹について、山崎教授は「長期的なクマ被害の対策には一定の効果がある」といいます。一方で、短期的に見るとドングリが増える=えさが増えるため、栄養を蓄えて子どもを多く生むなど、クマの個体数増加につながる可能性もあると指摘します。

 そのため、ゾーニングや放置果樹の伐採などを同時進行で行っていく必要があるということです。

 山北町では広葉樹の植樹以外にも、
  ▽クマをおびき寄せてしまう誘因物の撤去、
  ▽センサーカメラ・専門家によるクマの行動監視・調査
などの対策に取り組んでいるほか、植樹に関する寄付やふるさと納税を受け付けているということです。

 被害を防ぐためにできることは何なのか。クマと共生する方策をわたしたちも考えていく必要がありそうです。

2026年02月19日(木)現在の情報です

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