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『第1波の時と同じことを永遠に続けるしかない』コロナ初確認から3年...第8波でも変わらない・変えられない「医療現場の対応」

2022年12月09日(金)放送

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 新型コロナウイルスが世界で初めて確認されてから2022年12月で3年が経ちました。国内でも第8波が到来して終息が見えない中、今も「命の最前線」でコロナと闘い続ける人たちを取材しました。

重篤患者が搬送される「最後の砦」で闘い続ける医師

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「(防護服を着るなど)こんなんまだやってんねやという感じですよね。第1波の時から何も変わっていないです。この先はレッドゾーンです」

 3年間、「命の最前線」では変わらずコロナとの闘いが続いています。
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 年間8000件の救急患者を受け入れる「京都第二赤十字病院」の救命救急センター。京都府内でも心筋梗塞や脳卒中など、特に重篤な患者が搬送される“最後の砦”です。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「けん怠感とか外傷がやっぱり多いですよね。あとは重症の心停止であるとか、呼吸苦も来ますし。ほとんど全ての疾患が来る状況です」
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 コロナ陽性患者も連日搬送されてきます。救急科の副部長で第1波からコロナ対応に当たってきた成宮医師に、第8波の特徴を聞きました。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「ワクチン接種を11月中旬に4回目打っている方。打っているけれども感染しています。オミクロン株対応ワクチンだと思いますよ、11月中旬なので。打っても普通に感染しています」
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 感染力が強いオミクロン株。ワクチン接種を4回や5回受けている人でもコロナに感染するケースが増えているといいます。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「打ってもかかるのは仕方がないですね。感染そのものを抑えるのは相当難しいと思います。ワクチンでは抑えきれない」

第8波でも『通常の医療体制を維持するのが難しくなっている』

 12月上旬の午前11時。トラックにはねられて意識障害のある50代の男性が搬送されてきました。男性がコロナに感染していた場合を想定して、ウイルスが外に出ない部屋で「N95マスク」などを着用して治療に当たります。
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 (医療スタッフ)「挿管準備お願いします!」
  (成宮副部長)「挿管準備してください!N95(マスク)つけて入ってもらえる?」

 男性の症状が悪く、現場の慌ただしさが一気に増します。

 (成宮副部長)「手伝って。交通外傷、挿管しなあかん。こっちのCTなんやけど、ショックルームのCTを優先する。抗原(定量検査)のラベル出してよ」
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 男性の鼻から検体を採取して急ぎコロナの検査を行いますが、結果が出るのは1時間後です。気管挿管で気道を確保してけがの詳細を調べるため、CT検査にまわします。CT室内も医師らは防護服を着たまま。感染対策を徹底しています。
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 1時間後、男性の検査結果が出ました。果たして…。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「陰性だった。(陽性だったら)隔離する部屋を確保しないといけないということになるので、今うちだったらICU(集中治療室)しかないんですよね。通常の医療体制を維持するのがコロナで難しくなっている」

 この病院にはICUが8床ありますが、入院する患者がコロナ陽性の場合、症状が軽くても隔離のためICUに入れる必要があり、他の重症患者の受け入れが難しくなってしまうのです。
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 コロナの院内感染を防ぎつつ、救急患者を受け入れながら、限りある病床で運営していく。それを第1波からずっと続けています。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「長いね。2年半~3年近いですもんね。まだやっているのかという感じですよね。(Q終わりが見えない?)どう終わるかでしょうね。どう終わらせるかですよね」

政府が検討進める「5類への引き下げ」…それでも『医療現場の対応は変えられない』

 デルタ株が猛威を振るった第5波の去年9月。病院には若者を含めて多くの重症患者が搬送されてきました。しかし第8波の今は、コロナの重症患者は1人だけです。
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 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「第7波の時は中等症の人しかいないので、ここまで重症の人は僕らのところには来ていないです。京都府内でも数えられるぐらいの数しか重症になっていないので。コロナの肺炎で重症は極めて少なくて」

 去年の秋以来という重症患者。50代の男性で重い肺炎の状態で、ワクチンは接種していないといいます。治療として1日1回、男性をうつ伏せにする必要がありますが、医師など8人がかりで約30分かけて行われました。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「疲れた。本当に久しぶりなので、丁寧というか慎重にやりましたね」
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 コロナ禍で負担が重くのしかかる医療現場。政府は新型コロナウイルスの感染症法上の分類を、厳格な感染拡大防止策が取られる現在の2類相当から、季節性インフルエンザと同じ5類への引き下げも含めて検討を進めています。
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 しかし、たとえ5類に引き下げられたとしても医療現場の対応は変わらないと成宮医師は言います。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「(Q第1波から対応は変わらない?)変えられないんじゃないですかね。国民のみなさんの意識が変わって、隣でコロナの人が入院していても『そうですか、がんばってね』みたいな、そういうふうにならないと。僕らが感染していても働いていいですよ、濃厚接触者でも普通に働いていいですよ、検査もいりませんよとなるんだったらいいけどね。なりますかね?5類になったら。ならないですよね、きっと。だったらここは一緒じゃないですかね。第1波の時と同じことをずっと永遠に続けるしかない」

次々と搬送される患者…コロナ検査で初療室がいっぱいになり断らざるを得ない状況に

 午後5時すぎ。一般の診療所などが閉まりだす時間帯に、救急病院は忙しくなります。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「今からとりあえず3人、ほとんど同時に来ると思います。あと15分くらいで。ちょっときついかもしれないですけどね。1人来ましたね」

 (成宮副部長)「けん怠感の人が来たよ。おう吐しているから気を付けてね」

 どの患者もコロナの疑いがあるため、現場に緊張が走ります。その後も患者が次々と搬送されてきますが、ひとりひとり治療の前にコロナの検査を行います。
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 そうしている間にも別の搬送連絡が入ります。40℃近く発熱している高齢男性だといいます。

 【受け入れ要請への断りを消防に伝える医師の音声】
 「ちょっと今、初療室がいっぱいなので他を当たっていただけますか」

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「これはしょうがないですね。結局こうなっちゃうんですよね。結局こういうのを断らざるを得ないんですよね。『いっぱいなんで、いっぱいだから無理です』と。全然重症の人はいないんですけれども」

 検査の結果、搬送された3人は陰性であることがわかり、その後、一般病棟に入院となりました。

「『医療体制を維持する』以外の答えを持ち合わせていない」

 新型コロナウイルスの確認から3年。今も最前線ではギリギリの綱渡りをしながら医療を守り続けています。

 (京都第二赤十字病院・救急科 成宮博理副部長)
 「目の前にいる患者さんはコロナが2類だろうが5類だろうが熱が出てしんどいわけだし、そういうところはきっちりと医療を供給していく。重症患者さんは我々がちゃんと引き受けて診る。そういう体制を維持することが我々の責務ですので、それを維持していくと。それ以外の答えを我々は持ち合わせていない」

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