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【池上彰が解説】中国『習近平総書記は3期目のみならず4期目も狙う?』党大会に注目 日本『岸田総理は解散総選挙チラつかせ作戦』で政権維持か

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 10月6日放送のMBS『よんチャンTV』では「なんでもお答えしますSP」と題して池上彰さんがスタジオに出演。5年に一度の共産党大会が10月16日から行われる中国について、「習近平体制の未来」はどうなるのか。また、「旧統一教会問題」など国内の問題が山積する日本の岸田政権はどう難局を乗り切るのか。池上彰さんに生解説していただきました。

『中国共産党大会』注目ポイントは「若い後継候補」が入るかどうか

 ―――10月16日、5年に一度の中国共産党大会が開催されます。この中国共産党大会というのは、中国共産党の政策方針や幹部人事などが決められるものです。習近平氏(69)は、国の肩書は国家主席で、党の肩書は総書記です。中国は一党支配なので、共産党大会での決定がすなわち国の方向性になるということです。今年の注目は、習近平総書記が「1期5年で2期まで」の慣例を破って“異例の3期目”に突入するのではないかという話です。池上さんこのあたりはどうなんでしょうか?
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 「中国共産党の総書記には慣例が2つあるんですね。1つは『1期5年で2期まで』ですよと。それから『68歳以上は総書記にはなれない』。だけどあくまで慣例なんですね。別に憲法にも法律にも定めてないんですよ。これまではそれが守られてきたんですね。これはかつて鄧小平(とうしょうへい)という人が、長期の独裁政権を防ぐためにこういうルールをあくまで慣例として定めてきた。習総書記って現在2期目で69歳ですよね。だから慣例でいえばもう総書記はこれで降りるはずなんですけど、今、全然その気がないんですよ。3期目が確実視されているというのはどういうことなのか。今、中国共産党員って約9670万人いて、これはドイツの国民の数より多いんです。そして約200人が中央委員で、さらに政治局委員が25人、政治局常務委員が7人なんですね。この7人で全てを決めるということになっているんですが、そうしますと、当然のことながらこれまでの慣例でいうと総書記が引退するってことは後継者を育てなければいけない。だから、実は引退する5年前の党大会で若い後継候補を2人、政治局常務委員に入れるというのが慣例なんですよ。5年間の仕事ぶりを見て、2人のうちの1人が国家主席に、もう1人を首相にすると。2人に競わせるということをしてきたんですね。習近平さんも李克強(りこくきょう)さんと若い候補者として入って、2人で競った結果、習近平さんが国家主席で李克強さんが首相になった。習近平氏が初めて政治局常務委員になられたときには、この後10年経っても68歳にならないから、この人かもう1人の李克強さんかどっちかが総書記になるんだろうなってみんながわかったんですね。ところが、5年前に若い人を入れてないんですよ。ということはこれからあと5年もやるんだろうと。だから今回の注目は、今回の党大会で5年後に入りそうな人を入れるかどうかということです。ここにもし若い人が入らないで、5年後に68歳になっちゃうような人しか入らなければ、『4期目まで狙っているのかな?』と。これ実は、共産党の総書記に関しては定年がないんですね。国家主席に関しては2期までというのが憲法で決まっていたんですが、憲法を改正してそれがなくなっちゃったんですよ。国家主席も3期目以降続投できるように憲法を改正しちゃっているんですね。なのでもう間違いなく3期目になる。だからさらに4期目への意欲を見せるかどうかというところが今回の党大会の注目だと思います」

中国経済は「新型コロナでガタガタ」に…習近平氏の“巻き返し”のシナリオとは?

 ―――習近平氏の目標は何なのでしょうか?
 「独裁的な力を持って長期政権だと長くやりたいわけですよ。ロシアのプーチン大統領だって一体どれだけやってきたのと。やっぱりそういう独裁者って、レジェンドになりたいんですよ。つまり、中国で『建国の父』というと毛沢東(もうたくとう)。初代国家主席ですよね。それを最近は、毛沢東以来、あるいは毛沢東を超えるんじゃないかみたいな、ひたすら習近平さんにゴマをするような報道が出てきているんですよ。なので、毛沢東初代国家主席を超えたレジェンドになりたい、あるいは特に経済に関しては、このところ本当に中国経済が発展してきましたから、それによって毛沢東を超える偉大な指導者という形で歴史に名を残したいという思いがこれまであったんですよ。ところが、新型コロナウイルスによって中国経済はガタガタになっちゃったんです。2年前は世界の中でみんなコロナに悩んでる中で、中国だけはいち早くゼロコロナで経済活動が復活したって言われてましたでしょ。ところが、結果的に2年前は世界のトップを走ってたように見えたんですが、もう世界が新しいワクチンによってウィズコロナという形で経済活動が再開されてますね。中国が最初に作ったワクチンって変異株には全然効かないんですよ。なので今とにかく抑え込まなければいけないとロックダウンをやっている。その結果、経済がガタガタになってきてしまっているというわけなんです」

 ―――習近平氏としてはここをなんとか踏ん張らないと、ということですよね?
 「とにかく党大会まではこれでいくしかないんだよと。つまり習近平国家主席がゼロコロナで世界に先駆けてコロナを抑えることができたんだっていう実績でまた3期目を目指していたら、今またコロナが出てきたので必死になって抑え込んでいるということなんですよ」

 ―――コロナを封じ込めて、さらにオリジナルのmRNAワクチンの開発も視野に入っているということですね?
 「最初に作った中国のワクチンは変異株に全然効かないわけですよね。私たちが打っているワクチンというのはファイザーやモデルナ。これmRNAという非常に新しいタイプでワクチンを作った。これは変異株ではちょっと効果が弱まりますけど、それでも重症化しないわけですよね。なので中国も今、オリジナルで何とか国産のmRNAワクチンを作ろうとして必死になってるんですよ。これができれば、全国民に接種して、国を救ったことになりうると。こういう復活の戦略を練っているんじゃないかと」

岸田政権の今後…いざいというときは『解散総選挙チラつかせ作戦』?

 ―――次に日本についてです。国内では臨時国会が始まりました。旧統一教会問題、物価高など本当に問題がたくさんありますが、岸田文雄総理はこれからどんな政権運営をするのでしょうか?
 「岸田さんは、とにかく『聞く力』があるんだっておっしゃっていますけど、聞いてるだけじゃないのっていうね。何かあると『検討します』と。そこで岸田さん、最後は『解散総選挙チラつかせ作戦』じゃないかと。つまり、野党がいろいろ追及してくるが、今、野党ってなかなか一緒になっていろんなことをやろうとはできておらず、バラバラでしょ。だから、そんなに言うんだったら今『解散総選挙をしますよ』と言うと、もちろん自民党も減るかもしれないけど、野党も全然勝つ見込みが現時点ではないわけですね。こうやって“脅す”ことによって何とか政権を維持しようという。いつでも解散できるんだぞっていう。自民党の中でも岸田派の勢力ってあんまり大きくないわけですよね。で、やっぱり総理大臣が選挙をやると、自分の派の議員って増えるんですよ。だから言ってみれば、自民党が減るかもしれないけど、自分の派は増えるかもしれない。肉を切らせて骨を切るみたいな、いざというときにはこんな作戦もありうるんだと」

 ―――そして旧統一教会問題。このあたりも追求が厳しくなっていきそうですよね?
 「当然のことになるんですけど、例えば山際経済再生担当大臣、あるいは細田衆議院議長に対する野党の追及というのは非常に激しいですよね。山際さんを辞めさせろって話もありますけど、でももし山際さんを辞めさせちゃうと、ドミノ式にまた他の大臣が旧統一教会との関係が出てきたら、その大臣を辞めさせるのかってことになるので、現時点では必死になって守るというしかないだろうというわけですよね」

 ―――もう1つのポイントとしましては、来年5月19日(金)~5月21日(日)に行われるG7広島サミットですね?
 「そうなんですよ。岸田さんってそもそも広島選出の方でしょ。やっぱり自分の地元で、とにかく地元で自分の総理大臣の間にサミットを開きたいと。それで“世界の岸田”ということをアピールして、その後一挙に解散総選挙という筋書きが1つは考えられているんですけど、追い込まれたら逆に先に解散総選挙をしてサミットに行くという、とにかくチラつかせという形で何とか政権を延ばそうとしているというところを見ていただければと思います」

2022年10月07日(金)現在の情報です

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