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【解説】長期間体内にウイルスが残り続ける『持続感染』の脅威...一方で「ミルナイン」みれば事前にわかる「重症化予測」と「入院日数」

2022年08月02日(火)放送

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千葉大学病院が新型コロナウイルスの治療で世界初という研究結果を明らかにしました。それは「ミルナイン」という血中のたんぱく質の値が高いほど重症化する傾向にあるというものです。このやっかいなたんぱく質は肺の炎症を悪化させ、入院日数も増加させるということです。関関西医科大学附属病院の宮下修行教授によると「ミルナイン」の発見で患者によって重症化の有無などが事前に診断できたり、今後は治療薬の開発にも役立ったりと、その活用法にも期待されるといいます。 一方で、豊橋技術科学大学と岡山大学は、新型コロナウイルスが体内で少量ながらずっと残り続けるという研究成果をあきらかに。長期間体内でウイルスが排除されずに残り続ける“持続感染”は脅威で「新型コロナは感染しないにこしたことはない」といいます。(2022年8月2日 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

コロナ重症患者の血栓に見つかった「ミルナイン」とは?

ーーコロナで亡くなったある重症患者さんの例です。肺の血管の壁が破れて、中の液体が漏れ出し、重症化しました。血管の壁を調べてみると、多くのコロナウイルスが確認されました。血管の中に血栓が確認されたのですが、その血栓に大量の「ミルナイン」という物質が見つかったという話です。ミルナインとはどういうものですか?

(宮下修行教授)
「簡単に言いますと、血液の中には白血球と赤血球と血小板があり、血小板は血を止める役割で、これが多くありすぎると血栓ができてしまう。その血小板の中にミルナインというたんぱく質があると思ってください。血栓形成に関与するものです」

ーー130人のうち123人において「ミルナインの濃度が高いとコロナの重症度が高まり、入院日数が長くなる」そんなことまでわかったということですか?

(宮下修行教授)
「そういうことですね。一番重要なポイントは何かというと、いわゆるこの人が重症化するのかどうなのかっていうことを見分けるためには、非常に有用なサイン、物質であるということは言えるかと思います」
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ーー初めてミルナインという言葉を聞いて、自分の体の中にはどのぐらいあるのかっていうのは、我々一般市民は何か調べることができるのでしょうか?

「一般的には調べることはできません。特別な機械で調べます。昔からよく言われているのは血管炎、いわゆる全身の血管の炎症が起こるようなときに、こういうものが上がるということは、今まで報告されています」

ーーミルナインの濃度を下げられるんですか?

「正直言いまして、それはないと思います。人間っていうのは面白いもので、正常範囲から高くなると例えば血小板は血栓ができますし、低くなると出血しやすくなっちゃうわけですから、下げるというのもあまりよくないんですね」

ーーどういう人がミルナインが多いといった傾向はあるんですか?

「やっぱり炎症が強い方、特に血管の内皮細胞の障害が強い方ということですね。膠原病みたいな方はそういうふうになるとされます」

ーー高齢者が重症化しやすいとよく聞きますけども、年配の方が多いとか、そんなことは言えるのですか?

「これは血栓による重症化ですけれども、重症化する因子というのは他にもいろいろあります。高齢者の場合は免疫が落ちているので、ウイルスによるサイトカインがたくさん出てくるというのがやっぱり一般的で、血栓よりそっちの因子の方がちょっと強くなるかなと思います」
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ーー今後コロナに、ミルナインの研究がどう活用されるのかが大切だと思うんですが?

「今一番困るのは医療ひっ迫が起こるところで、誰を入院させて、誰を入院させなくていいかという、そういう一つの見極めには有用な因子になるかとは思います。あとはミルナインを狙った新しい治療薬の開発、これが出てくるのであるならば先にそいつをつぶしておこう、叩いておこうという考え方で、重症化を防ぐことができる可能性というのが出てまいります。重症化を測定するために、ミルナインを測定するためのものを測りましょう。それ用の検査キットを作りたいというのが今の千葉大学の考え方です」

「コロナの重症化に関与する因子は他にもたくさんある。これだけでは重症化は防げませんよということです。重症化すると、いろんなものが関与してまいりますので、例えば重症化した人に対して血栓予防、それから『サイトカイン』を抑える、そういったような複数の治療で我々臨んでおりますから、一つだけではなかなか難しいということは挙げられると思いますね」

「コロナは完治しない人が多い?ずっと感染が続く“持続感染”」

ーーコロナに関する研究発表二つ目は「コロナは完治しない人が多い?ずっと感染が続く」もし、研究でおっしゃってることが事実なのであれば、例えばインフルエンザとかそういった病気は、1回治ったときにウイルスはゼロになっているんですか?

「いい質問です。持続感染を起こすウイルスとそうじゃないウイルスに分かれます。インフルエンザというのはほとんどが体の中から排除されます」
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ーー研究によると、平均的な症状の患者でもウイルス量がゼロにならない。感染してウイルス量が増えて、落ちていってゼロになり完治するパターンと、平均的な症状の患者でウイルス量が落ちるんだけどゼロにならずに残って、ちょっとずつ増えていくというパターン。重症化した人も、やっぱりウイルス量が増えていくということなのですが、コロナはちゃんと治らないのかと、怖くなるんですが?

「これは当初から言われていたことです。ウイルスは私達の生体の中に取り込まないと生きていけないんです。私達の免疫で排除いたしますと、先ほどのインフルエンザがそうです。でも排除されないウイルスというのも実はたくさんいるということがわかっています。これがいわゆるいろんな病気に発症させたりですとか、免疫が弱ったときに出てきたり、こういういろんなウイルスがあるということがわかっていまして、これに関して実はコロナはわかっていなかったんですね」

『持続感染』が後遺症の原因?なぜ感染は続くのか?

ーー豊橋技術科学大学の原田准教授によりますと、体の中で『持続感染』が起こる、これが後遺症の原因ではないかと言われています。なぜ感染が続くのか?新型コロナは肝臓、腸、腎臓、心臓のほぼ全身の細胞に感染し、免疫が感染先を叩いても、次の細胞に広がっていて、なかなか感染が終わらない。1か所にとどまってないということでしょうか?

「そういうことですね。まずウイルスの特徴として血液の中に乗りやすい。先ほどの血管内皮細胞にも感染するということのように全身に広がるというのが一つの特徴になってまいります。こういう強いウイルスというのはそういう特徴があります。有名なのは私達が弱ったときに出てくるようなウイルス、サイトメガロとか、帯状疱疹とか、これが体が弱ったときに、活性化するわけですよね」
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ーー今後、集団免疫のような状態になったとていも、持続感染は変わらない?
「他のウイルスや他の微生物でもそういうことが証明されてまして、抗体を持っているにもかかわらず持続感染するということもわかっています」

ーー薬で何とかできるものでもない?

「中から排除しようというときに、例えば抗ウイルス薬でもかなり強いやつを使わないといけないんですが、弱いウイルスを排除できるかって言ったら、排除できないんです。ずっと残り続ける可能性、あくまで可能性ですね。私の研究はとにかく持続感染がいろいろな、例えばがんもそうですし『疾患を引き起こしているのではないか』という仮説のもとでやっております。例えば帯状疱疹は、今ワクチンで発症させないというような考え方、薬よりもそっちの方にシフトしています」
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ーー持続感染と関係すると言われる病気ですけども、HIVがAIDSとして出てきたり、あとはヒトパピローマウイルスが子宮頸がんに関係したり、いわゆる水ぼうそうが帯状疱疹に関係するということですか?
「HIV、HPVは比較的強いウイルスです。これが持続感染することによって、AIDSやがんを併発するということがわかっていますし、帯状疱疹ウイルスというのは、私達の生体中にいます。私達の身体は、一番は高齢になると免疫が落ちます。そうなると活性化していきます。もう一つは先ほど言いましたように、ワクチンで、予防できるのが帯状疱疹と子宮頸がん、HIVに関してはこれはワクチンを一生懸命作ってるんですけどなかなかできないんですね。今は薬に頼らざるを得ない、でもゼロにはできない」

ーー新型コロナウイルスによるこの慢性感染症、持続感染症の実態がまだ全くわかっていないと、だからコロナの持続感染症としての実態が明らかになったら、かかっても大丈夫とは言えなくなる可能性があるということですね?

「これはもう正直言いまして、10~20年後に変な病気を出してくる可能性というのはあるわけです。ウイルスがある程度残っている方の実態というのも実はわかっています。例えば、リンパ腫ですとか、血液の疾患の方っていうのはずっと残りやすいということもわかっています。果たしてこれが将来的にどんな病気を起こしてくるか、おそらく10年20年たたないとわかってこないのではないかと思います」

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