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「15年一緒に暮らしても法律上は他人...」不安な同性カップルの"願い" 大阪地裁は『同性婚は議論の過程にありただちに憲法違反とは認められない』

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 法律上同じ性別の結婚が認められないのは憲法に反するとして、3組の同性カップルが国を相手取り損害賠償を求めていた裁判で、6月20日に大阪地裁は同性婚を認めないのは憲法には違反しないとする判断を示しました。今回、この判決にあわせて1組の原告の思いを取材しました。

『男女のカップルだったら紙切れ一枚で法的に家族になれるのに…』

 同性同士の結婚を認めないことは憲法に反するのか。大阪地裁が下した判断は「合憲」というものでした。訴えを起こしていた3組の同性カップルにとって、到底納得のいかない判断となりました。
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 香川県三豊市に住む田中昭全さんと川田有希さん。2008年に交際を始め、約10年前に購入した家で暮らしています。

 (同性婚訴訟・原告 田中昭全さん)
 「帰れる場所が2人がより居心地がいい場所であって欲しいと思ってコツコツと。お金もそんなにないので結局自分で大工仕事をして、日曜大工でDIYでコツコツとこういう感じになったんですけど。まぁでも2人で一緒に作業をしたので、本当にそれは“共有財産”だもんね」
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 2人で力を合わせて作った終の棲家。しかし常に不安が付きまとっているといいます。その理由は国が同性婚を認めていないことにあります。

 (同性婚訴訟・原告 田中昭全さん)
 「この家が一応、田中個人の名義になっていて。男女の夫婦なら自動的に配偶者に相続されるものが、婚姻がないというところで、戸籍上の家族になれないというところで、自動的には相続されないんですよ」
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 2人は同性であることを理由に夫婦と認められておらず、法律上はあくまで「他人」。どちらか一方が亡くなった場合に、配偶者として家や土地を相続することができないのです。ほかにも、どちらか一方が病気になったとき、病院で面会することや手術の同意をすることも原則認められていません。

 (同性婚訴訟・原告 田中昭全さん)
 「ずっと15年暮らしていても未だに他人同士としか世の中的には見られていないというところが、やっぱりちょっと違うなというのがあったから、いろいろアクションを起こしてきたわけなんですけど」
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 3年前、田中さんと川田さんを含む3組のカップルが声をあげました。「同性婚が認められないのは憲法が定める法の下の平等や婚姻の自由に反する」として、国に対して1人当たり100万円の損害賠償を求めて提訴したのです。
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 しかし、国側は次のように反論しました。

 【国側の主張】
 「婚姻は伝統的に生殖と結びついて理解されていたために、男女間に成立する関係と考えられてきており、同性婚の存在は想定されていなかった。現在においてもなお婚姻の当事者は男女であるとの理解が一般的である」

 「そもそも憲法で想定されているのは異性間の結婚のみ」だという主張です。
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 性の多様性に対する社会の理解が進む中にあっても法整備が進まない現実。「結婚を認めてほしい」。願いは至ってシンプルです。

 (同性婚訴訟・原告 田中昭全さん)
 「戸籍上の男女のカップルだったら紙切れ一枚で法的に家族になれるのに。それがなかなか、こんな訴訟を起こしてまでしないとそれを獲得できないという状況はやっぱり違うんじゃないかと思っていて」
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 そして今年6月20日、大阪地裁は「同性婚をめぐる問題は議論の過程にあり、ただちに憲法違反とは認められない」などとして原告らの訴えを退けました。
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 (同性婚訴訟・原告 田中昭全さん)
 「まだまだ途上なんだなと逆に実感しました」

 (同性婚訴訟・原告 川田有希さん)
 「司法の方が逃げ腰なのかなという感想はありました」

 同様の裁判をめぐっては、去年3月、札幌地裁が憲法違反とする判決を出していて、司法による判断が分かれた形となりました。

2022年06月20日(月)現在の情報です

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