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『犬のおしっこ』に苦悩する商店街 アーケードの鉄柱にかけられ腐食→倒壊するのでは?と店主ら不安 「飼い主に直接言うと商売に影響」注意できない歯がゆさも

特盛!憤マン

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 『犬のおしっこ』で鉄柱倒壊のおそれ!?ニオイや衛生問題についてよく言われる犬のおしっこですが、道路の信号機の倒壊を招いたケースもあります。犬の散歩道にもなっている商店街の店主らからは不安の声が聞かれます。

商店街のアーケードを支える鉄柱 柱の根元でペンキが剥がれる

 京都市上京区にある北野商店街。北野天満宮に近く、古くから地元の人になじみのある商店街です。ここで時計店を営む山田重一さんは長年、あることに頭を悩ませています。

 (商店街で時計店経営 山田重一さん)「(飼い主が)犬のおしっこを(鉄柱に)かけてそのまま行ってしまう。(Q一番心配なのは?)柱が倒れる」

 北野商店街は東西に400mあり、アーケードの下には70軒の店が立ち並びます。そのアーケードを支える鉄柱は250本以上ありますが、ほとんどの柱の根元でペンキが剥がれ、さびてきているというのです。
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 山田さんは「犬のおしっこ」が原因とみていて、その塩分などで腐食が進み「倒壊するのでは?」と不安を口にします。取材班が、商店街にカメラを向けると…
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 (取材班リポート)「いま、犬におしっこをさせて立ち去りました。そのままにして立ち去りましたね」

 鉄柱やプランターなどおかまいなしにおしっこをさせたまま立ち去る飼い主がいました。中にはこんな人もいるそうです。

 (山田重一さん)「おしっこだけじゃなくて犬のフンを置いたまま、取らずに帰る人もいる」

飼い主に直接注意できない歯がゆさ…倒壊への不安は募る

 こうした状況に苦言を呈する飼い主もいます。
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 (犬にマナーバンドをしている飼い主)「マナーバンド、マナーおむつがある。これを巻いて散歩する。最低限のマナーを守らないと。私らが(注意を)言うとけんかになると思うわ」

 では、店主らが注意するということはできないのでしょうか。そこには、商店街ならではの理由がありました。

 (山田重一さん)「(飼い主が)近くにすんではって、ここに犬の散歩される方に直接言うとやっぱり商売に影響しますからね。直接の苦情は言えない」

 もどかしい気持ちを抱えるのは山田さんだけではありません。
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 (北野商店街 桂浩一代表理事)「店の中から見ていて、(おしっこを)させていてもなかなかその場で『やめてください』とは仕事柄言えないですよね。(飼い主が)向こうに行かれてから、私が店の中から水を持ってきてかける。きれいじゃなかったら商店街に買い物に来られる方もね、印象悪いですしね」

 飼い主に直接注意できない歯がゆさ。一方で、倒壊への不安は募ります。

別の自治体では「犬のおしっこ」が原因の被害発生

 実際に犬のおしっこが原因の被害も出ています。三重県鈴鹿市では2021年、歩行者用の信号機が倒壊。信号機の柱の耐用年数は50年とされていますが、半分にも満たない24年で倒れたというのです。

 (三重県警の担当者※当時)「犬のお散歩コースになっているというのもありますので、長年おしっこをかけられ続けた。そういった要因があることもわかりました」
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 警察が調べたところ、倒れた信号機の地面からは同じ交差点にある別の信号機の40倍以上もの尿素を検出。「犬の尿で柱の腐食が進んだ可能性が高い」という調査結果をまとめました。また、埼玉県でも2017年、同じ原因で道路標識が突然倒れました。

 全国で起こる倒壊事故。未然に防ごうと北野商店街では地道な取り組みを行っています。
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 (山田重一さん)「こちらは、柱に貼っているポスターです。これだけで100枚、まだこれでは足りないと思います」

 商店街の組合では、2021年から鉄柱に啓発ポスターを取り付けていますが、今年2月、新たに京都弁で訴えるポスターを設置するなど対策を強化しています。また、鉄柱のメンテナンスも行っていて、腐食が進んだところに塗料を塗ったり、倒壊を防ぐために補強の鉄板を取り付けたりするなど、歩行者の安全を維持しています。ただ、これらの費用を賄うのは全て店側。各店舗から集めた補修費で、決して負担は少なくないといいます。

 (北野商店街 桂浩一代表理事)「傷んできて補修するのが大変なんですよ。何年かに一回塗り直しますが、そうするとウン百万円、本数が多いから、かかってしまう。みなさんから預かっているお金で直している。そういうことがなければ、もっと他に有意義なことに使えることもある」

飼い主たちに「犬のおしっこ」問題を聞くと…

 飼い主たちは「犬のおしっこ」問題についてどう考えているのでしょうか。

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 (飼い主)「マーキングといってちょっとかける時があるので、それぐらいだったら見て見ぬふりをしてしまう。両手がふさがっていたり、荷物があったりするとなかなか…(始末を)しないといけないんだけど」
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 (飼い主)「(ボトルに)水を入れておいて、おしっこしたら水をかけていく」
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 (飼い主)「マナーの悪い人もいはると思います。僕はちゃんと(ボトルに入れた水を)持ってきているけど。ここでは絶対させない、鉄柱のところでは。それは絶対気をつけているんで。石のところでやったり」

 あと始末についての考え方は飼い主によって様々でした。

「散歩前のおしっこ」に少しずつ意識を変えることも必要

 では、正しい方法とは?犬のしつけ教室や保護を行う京都動物愛護センターに話を聞くと「そもそも散歩中におしっこをさせるべきではない」といいます。

 (京都動物愛護センター 伊東大輔所長)「(犬は)自分のいるところ寝るところを汚したくなくて遠いところで排せつをしたいという習性がもともとあるんですけれども、だからといって散歩をしないと排せつをしないというわけではないと思うんですね。(家で)トイレをしてもいい場所を定めておいて、そこで事前にしてから散歩に連れ出すことをすれば、おそらくは回数も減るでしょうし、うまくいけば1回もしないかもしれないし、そうなると飼い主さんも楽だと思います」

 とはいえ、万が一、散歩中におしっこをした場合は?
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 (伊東大輔所長)「極端な話をすると、拭きなさいという話になってしまいます。元の状態に戻してくださいというのが本来あることなんですが、せめておしっこがかかったところを洗い流すということは必要なんじゃないかな」

 土やアスファルトなど実際は拭き取りや洗い流しが困難な場所も多いので、「散歩前のおしっこ」に少しずつ意識を変えることも必要だと話します。

「犬を飼っている人のマナーに頼らないと」店主らの悩みは尽きない

 この日、商店街の理事会が開かれていました。店主ら関心は、やはり「犬のおしっこ」についてです。
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 (桂代表理事)「うちのお隣のお店は(鉄柱の)内側がさびてきて『理事長これ大丈夫ですか?倒れませんか?』という相談は受けました」
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 (参加者)「倒れたアーケードの写真とか、チラシを散歩している人に渡していったらええと思う」
 (参加者)「逆転の発想で(おしっこ専用の)鉄柱をいくつか立てて、それ以外にはせんといてと」
 (桂代表理事)「犬の公衆トイレですね」

 店主らの悩みは尽きません。倒壊してからでは遅い。今後も商店街としてできる対策をやり続けるしかないと考えています。

 (山田重一さん)「本当は家でしつけをしてから、散歩だけ来てもらうのが理想的だけど、なかなかそうはいかないみたいですね。犬を飼ってはる人のマナーに頼らないとしょうがないかな」

2024年03月05日(火)現在の情報です

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