2022年10月04日(火)公開
「いやぁと今更言えないジレンマが議員には...」市役所の建て替え『議決後に活断層が判明』などで反対の声...今の場所で大丈夫?高台に移転すべき?
特盛!憤マン
築60年以上になる大阪府岸和田市の市役所。老朽化が進んでいることから建て替え計画が進められていますが、建て替え場所をめぐり市民から憤懣の声が上がっています。
「今の場所の目の前」に建て替え方針の岸和田市役所
大阪府岸和田市に住む中野實さん。市が進める計画に納得がいかないといいます。
(岸和田市民 中野實さん)
「建て替える庁舎はこの古い庁舎です。もう建て替えのあれ(限界)は迫っています」
今年11月に市制施行100年を迎える岸和田市。最も古い庁舎は60年以上前に建てられたもので壁の一部がところどころ剥がれ落ちるなど見るからに老朽化しています。そのため市は目の前にある駐車場に庁舎を建て替える方針です。
海岸から市役所までわずか800m…『津波注意』の看板も
しかし現在の岸和田市役所が建っている場所のすぐ近くにある看板には『津波に注意 この付近の地盤は海抜3.0m』と書かれています。
南海トラフ巨大地震が発生した場合、岸和田市内でも最大震度6弱の地震が起こり、発生から約1時間33分後に最大4.4mの津波が到達するとされています。
海岸から市役所までの距離はわずか800mほどで、津波の危険性と隣り合わせ。庁舎を建て替えるこの機会に海から離れた場所に移転するよう中野さんは声をあげているのです。
(岸和田市民 中野實さん)
「(市役所を)山手の方の標高の高いところへ持って行ったら、いろいろ安心安全な面があるんじゃないかなと私は思っています」
「司令塔の本部になるところは安全に越したことはない」
中野さんが庁舎の移転先としてふさわしいと考えている場所に案内してもらいました。現在の市役所の場所よりも山側にある公園です。
(岸和田市民 中野實さん)
「ここが私の言っている今池公園です。標高がかなりあるので津波の心配はない。道も広いし環境的にも申し分ないんじゃないかなと思います」
大阪府のハザードマップでは、現在の市役所のすぐ近くまで津波が押し寄せる想定です。一方でこの今池公園は海から1.8kmほど離れていて海抜も15mあり津波のリスクは低いのです。
この公園は市も過去に移転候補地の1つとして検討したこともあり、安全面では申し分ないと中野さんは考えています。
(岸和田市民 中野實さん)
「とくに庁舎は大災害が起こった場合に本部になるんやからね。一番肝心要の司令塔の本部になるところはやっぱり安全に越したことはないと思います」
今の場所での建て替えか、移転か、岸和田市民に意見を聞きました。
(岸和田市民)
「(Q津波のハザードマップぎりぎりにあるが?)知らなかったです。市役所自体きれいになってほしいなとは思っていました。ちょっと古いですからね。安全なところに行ってほしいなとは思いますね」
「家が近いので便利なので、そのままでいいですかね」
「もめていますね。よく知っています。いざとなったら指令場所にもなるから大事かなというのは近所の人たちと話したことがあります」
津波リスクを懸念する市議も
津波のリスクを懸念する声は市議会でも上がっています。岸和田市議の井舎英生さん。津波がギリギリまで迫る可能性がある現在の場所では、有事の際に市役所機能が停止する可能性があると訴えます。
(市議会で発言する井舎英生議員)
「これ(ハザードマップ)は津波による災害の範囲を決定するものではありませんと書いてあります」
今の場所での建て替え決定後『活断層の存在』が判明
さらに津波以外に、もう1つ大きな問題があります。2020年、市役所のすぐ近くに約21kmにわたる活断層「大阪湾南東岸断層」があることがわかったのです。
それでも建て替え場所の見直しが進まない理由は…。
(岸和田市議会 井舎英生議員)
「ここ(現庁舎位置)に建てるということを2年前に議会で決めているんですね」
実は、活断層の存在が発表される8か月前に議会で今の場所での建て替えを決定したのです。
(岸和田市議会 井舎英生議員)
「(反対しているのは)まだ僕はマイナーな存在ですね。1回賛成したものを『いやぁ』と今更言えないというジレンマがほかの議員さんにはあるんだと思います」
活断層の存在が判明した後も建て替えの方針を変えない岸和田市。活断層のリスクについて市は、活断層の影響を調査した上で問題ないと判断し、2020年の議会で決まった建て替えの方針を変えるつもりはないとしています。
【市の回答内容】
『断層線だけに注目し、そこだけを避けるということではなく、現在の耐震技術を駆使することで、耐震性ある庁舎で対応する』
活断層付近での建て替え…専門家の見解は?
活断層に近い場所での庁舎の建て替えについて、同志社大学理工学部の堤浩之教授はリスクはゼロではないと話します。
(同志社大学理工学部 堤浩之教授)
「市役所がこれですね。それからこの赤い破線が活断層になります。市役所に近いです。おそらく数百mくらいの位置には断層の先端があると思います。この断層の場合、地面にスパッと崖ができるだけではなくて、地層がたわむというかぐにゃっと曲がるような、地震のときに変形することもあります」
一方で、活断層の真上に庁舎を建てない限り、最新の建築工法を使うことで地震の被害を抑えられる可能性があると指摘します。
(同志社大学理工学部 堤浩之教授)
「一応、今、地図で見る限りでは、地面に段差がドンと出る“断層の真上”ではなさそうなので。ただ影響が出る範囲内かもしれませんので、(地盤などを)きちんと調査をすれば判断は十分に評価できると思っています」
いつどこで起こるか予測のできない自然災害。新しい岸和田市役所は市民が安心できる防災拠点となるのでしょうか。
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