2022年05月31日(火)公開
なぜ?人気釣りスポットが突如"立ち入り禁止"に!渡船業者も「どうすることもできない」と廃業に追い込まれ...
特盛!憤マン
神戸港で人気の魚釣りスポット。船でしか行けない防波堤の上にあり、この防波堤に客を運ぶ渡船業者もありました。ところが去年10月、神戸市が突如、渡船業者に「立ち入り禁止」を通知してきたといいます。いきなりのことに業者は憤っています。
県外からも釣り人が訪れる人気スポット…去年「立ち入り禁止」に
日本の国際貿易港の1つである神戸港。大型タンカーなどが日夜出入りしています。そんな神戸港で今、怒りがくすぶっている場所があります。
(記者リポート)
「神戸港の沖防波堤は、以前は多くの人で賑わっていましたが、今は立ち入り禁止の看板が張られています」
神戸港の沖合には複数の防波堤が設置されています。今は誰も立ち入ることはできないといいますが、去年までは賑わいのある場所でした。
2020年に撮影された防波堤の写真では、釣り人たちが隙間なく並び、魚釣りを楽しんでいる様子が見られます。
大阪湾で人気の“チヌ”と呼ばれるクロダイや、ハマチ・太刀魚など、様々な種類の魚が釣れるため、県外からも釣り人が訪れる人気スポットでした。
30年以上前から運営していた渡船業者に『神戸市から突然の通知』
しかし去年、突然ここでの釣りができなくなったといいます。取材班は「神戸渡船」の本木昌征さん(54)に話を聞きました。
(神戸渡船 本木昌征さん)
「去年の8月11日に『立ち入り禁止の場所へ渡船をしている遊漁船がみられる』という通知の紙が来たんです」
本木さんは30年以上前から沖合の防波堤に釣り客を運ぶ渡船を運営してきました。しかし去年10月に神戸市から通知が届きました。
(神戸市からの通知の内容)
「防波堤は、外洋から打ち寄せる波を防ぎ、波浪などから陸を守るために設置された港湾施設であるため、原則として立ち入りは認めておりません」
通知書には「防波堤へ侵入した場合には身柄の拘束などに処されることがある」とも記されていました。
(神戸渡船 本木昌征さん)
「遊漁船の許可は(兵庫県から)取っているんですけど、それでいけるもんやと思っていたんですよ。今までうちでも30年近くやっているんで、今ごろ…って感じですね」
本木さんによると、毎年8000人ほどの釣り客を防波堤まで渡していて、防波堤での釣りは神戸市の観光マップに掲載されていたこともあったといいます。
神戸市からの通知や、去年11月に防波堤に立ち入り禁止の看板が設置されたことで、今年1月から渡船の営業は休止。収入が突然ゼロになった本木さんは、海上で仕事をする作業員を現地まで運ぶアルバイトなどをして生計を立てていますが、先が見通せない状態だといいます。
(神戸渡船 本木昌征さん)
「観光産業なんでね。けっこう歴史も古いんで、できたら再開できたらいいと思いますけれどもね」
廃業を余儀なくされた人も「ダメとなったら早く廃業しないと」
70年近く続いていた防波堤での釣りが突然禁止されたことで廃業を余儀なくされた人もいます。
「河内渡船」の河内猛さんは、1953年から親子2代にわたって渡船会社を経営してきました。客には救命胴衣着用の徹底など安全対策を取りながら運航してきたといいます。
(河内渡船 河内猛さん)
「急やったからね今回。船を出しておくためには毎月の保険料とか経費がいるんですよ、かなり。もうダメという形になったら早く廃業しないと」
一体なぜ、突然禁止になったのか?神戸市からは「条例で禁止されている」などと説明されたといいます。
(河内渡船 河内猛さん)
「向こう(神戸市)は、もう条例で決まったことだから立ち入り禁止は変わりませんと。もうこれはどうすることもできない。だからどういうこともない。ただ恨み辛みはあるけれど」
マナーを守らない渡船業者が確認されていた
一体、どんな条例なのか?取材班は神戸市の担当者に話を聞きました。
(神戸港管理事務所 喜多俊文所長)
「古くは昭和48年(1973年)のようなんですが、基本的には港湾の施設というのは元々物流のための施設ですので、そういう魚釣りなどの行為については基本的には禁止と定めておりました。(Q条例は昭和48年(1973年)からあるとのことだが、渡船業者がいたことも把握していた?)常時見張っているようなそういうわけでもありませんが、そういう事実があったということは薄々は認識していた」
神戸市によると、防波堤は1973年に制定された条例で、そもそも立ち入りが禁止されていたといいます。しかし、これまで明確に立ち入り禁止だとは伝えておらず、釣り客の存在も渡船業者の存在も黙認されてきました。
(神戸港管理事務所 喜多俊文所長)
「フェンスが一応あるんですけど、あえてそれを乗り越えて人が乗り降りするようなことをしていたので、これはちょっと見た目にも行き過ぎかなということで、『指導に入らなければ』という判断を当時(去年)はしたということです」
ほとんどの渡船業者は、決められた場所で客を船に乗せるなどマナーを守ってきたといいますが、神戸市によると、ある業者がフェンス越しに客を乗せている様子を確認。安全面などを考慮して、全ての渡船業者に対して運航を禁止する措置を取りました。
釣り具店にも影響「来客の頻度落ちていっている」
防波堤での釣りが禁止された影響は、周辺の釣り具店にも出ています。
(フィッシングマックス 神達篤志取締役営業本部長)
「現場に近いお店ですので、行けなくなってしまいますと、そのお客様が丸々来なくなる状況ですので、売り上げの方もやはり少し影響が出ておりますね。2割とか…来客の頻度は落ちていっている」
(ポイント 井川優矢店長)
「神戸自体が釣りをする所が少なかったので、その中で釣りに行きやすい場所としてお客様から認知されていることが多かったですね。今というよりかは、これから先がどうなるか懸念されるところですね」
大阪港では『立ち入り禁止しない区域』を指定し釣り客を受け入れ
神戸市で防波堤での釣りが禁止される一方で、大阪では状況が違います。
(大阪港湾局・計画整備部 内谷一也課長)
「シーズンになりますと、この辺はたくさん釣り人が来ていると聞いております」
大阪港でも13年前に防波堤への立ち入りを禁止する条例を作ろうとしたといいますが…。
(大阪港湾局・計画整備部 内谷一也課長)
「自己責任の上で釣りを認めてほしいとか、一定のルールを決めて釣りをしてほしいというのが大半の意見としてございました。安全性が確保できるところにつきましては、救命浮環とか縄梯子、注意看板を設置した上で、一部『立入りを禁止しない区域』を指定しております」
市民から存続を求める意見が相次ぎ、大阪市は釣り関係団体と検討会を設置するなど、安全対策を整えた上で釣り客を受け入れています。
「防波堤釣りを楽しみにしている方がたくさんいる」署名活動を開始
5月24日、神戸渡船の本木さんは、防波堤を再び使えるよう署名活動を行っていました。
(神戸渡船 本木昌征さん)
「今まで数万人が利用してきたので、(防波堤釣り)を楽しみにしている方がたくさんいらっしゃるので、行政のほうにお願いということで。神戸市との協議の時に(署名を)提出して、集まった分を出すようにします」
本木さんらによると、神戸市は協議をすることさえ消極的だといいます。安全対策の徹底やマナーを守ることは言うまでもありませんが、30年以上も生業としてきた船の仕事を突然失った人たちは、納得できる説明を求めています。
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