2021年12月23日(木)公開
「やる場所がない」と禁止された公園で練習するスケートボーダーらに兆し...『東京五輪』で訪れた空前の"ブーム"で変わりつつある練習環境
特盛!憤マン
大阪の多くの公園ではタイルが割れたり、石畳が黒ずんだりする被害が相次いでいるとして「スケートボード」が禁止されています。しかし、今年7月に開催された東京オリンピックで、当時13歳だった大阪府松原市出身の西矢椛選手が金メダルを獲得するなどして「スケートボーダー」が一気に注目されるようになりました。こうした選手たちの活躍がスケートボードの現場を変えようとしています。
夜な夜な公園に現れる『スケートボーダー』…理由は「楽しむ場所がないから」
今年3月、大阪市鶴見区の「鶴見緑地公園」で“ある異変”が起きていました。
(大阪市建設局・鶴見緑地公園 小川務所長)
「見ていただいたらわかるんですが、床の石板が割れています」
多くの人が行き交う駅前の広場。タイルを見ると無数のヒビが入っています。
さらに、大阪市旭区の「城北公園」では市民の憩いの場となっているベンチは黒ずみ、タイルが破損していました。
(大阪市建設局・鶴見緑地公園 小川務所長)
「ワックスがついているのが分かると思います。コンクリートがはがれているような状況になっていますので。これがひどくなると、これそのものがぐらつきますので修繕をしています」
各地の公園で起きている問題の原因とは「スケートボーダー」でした。
(記者リポート)
「午後9時前の城北公園です。スケートボーダーが公園の石の置物を使ってジャンプしています」
夜になって現れたスケートボーダーたち。そこは「スケートボード禁止」と書かれていますが、暗がりの中、約10人ほどがジャンプなどを繰り返していました。ボードをベンチに接触させて技の練習をする人もいました。大きな音が鳴り響き、近所からは苦情が寄せられていました。
一体なぜ、禁止されている公園で夜な夜なスケートボードの練習をしているのか。取材班が話を聞くと次のように話しました。
(記者)「ここで技の練習とかをしているんですか?」
(スケートボーダー)「そうですね。きょうも来た時に大勢の人がいて、みんなここで滑ってるみたいな」
(記者)「公園でのスケートボードは禁止なのは知ってますか?」
(スケートボーダー)「聞きますね」
(スケートボーダー)「場所がないからやるっていうのはちょっと言い訳になるけど、無駄に土地が余っている公園とかあるのに、なんで(施設を)作らへんのやろうと思う」
大阪市では、条例でスケートボードが「他人に危害を及ぼすおそれがある行為」などに該当するとして、多くの公園で禁止されています。
(記者)「なんで禁止やのにやってるんですか?」
(スケートボーダー)「やる場所がないからですね。だから夜に来たり、歩行者が少ない夜に来たりって感じです」
スケートボードを楽しむ場所がないのです。
その一方で大阪市としては、ベンチの破損などを防ぐために「スケートボーダー対策」を進めています。
(大阪市建設局・鶴見緑地公園 小川務所長)
「スケートボード対策でベンチの上に置いている石板なんですけれども。新たに対策強化としまして、大きなプランターを設置しました」
公園の施設を破損させる行為は決して許されるものではありませんが、スケートボーダーたちにとっては「練習する場所がない」という切実な思いもありました。
『東京五輪』で西矢選手らの快挙で"スケートボード"に注目集まる
そんな中、今年7月に開催された「東京オリンピック」で、とりわけ注目を集めたのが、スケートボード・女子ストリートで大阪府松原市に住む西矢椛選手が金メダルを獲得しました。
(西矢椛選手)
「乗りたかった技に乗れたから、金メダルを取れたと思います」
西矢選手らの快挙を受けて、大阪ではスケートパークを設置する動きが加速しています。
西矢選手が練習の拠点としている松原市の「スケートパークまつばら」を今年12月、取材班が訪れました。
(スポーツパークまつばら 太健二支配人)
「今ここにあるのが既存のスケートパークになっております。約800平方メートル程で7セクション設置がありまして、屋外のスケートパークになります。今日みたいに天気がいい日は、皆さん気持ちよく滑走できるんですけれども、雨が降ってしまいますとスケートパークは基本的には利用できない状況になります」
この施設ではオリンピックの後、利用者が1.5倍に急増し、初心者向けのスクールはキャンセル待ちの状態が続いているといいます。
(スポーツパークまつばら 太健二支配人)
「公共の施設はいくつかあるんですが、まだまだ少ないですね。大阪府下全域から平日でもお越しいただいていまして。特に小学生の利用者が本当に多くてですね、学校が終わってからお父さんお母さんに送迎していただいて、この施設まで練習に来ていただいています」
利用者の多くは「施設を増やしてほしい」と訴える
今、大阪ではスケートボードができる公共の施設は大東市の「深北緑地」や堺市の「大泉緑地」、松原市の「スポーツパークまつばら」など8か所ほどありますが、大阪市内には民間の施設しかありません。
松原市の施設は市が設置していて1日550円で利用できます。利用者に話を聞いてみました。
(利用者)
「最初はちょっとできなくて楽しくなかったけど、今はいろんな技ができてどんどん楽しくなっていった」
「公園は禁止のところが多いですし、どうせやるなら気持ちよく楽しくできるところのほうがいいかなと思って」
「オリンピックの競技場みたいな。あそこまでは言わないですけれども、もっと立体的なコースが増えたらいいかなと。(Q公園では滑らないんですか?)(公園で)滑っていたら怒られますね、きっと。もっと施設が増えてほしいですね」
利用者の多くは「施設を増やしてほしい」と訴えています。
松原市は『パリ五輪』にむけて「新たなスケートパークの建設」も計画
こうした声を受けて松原市では約2500万円をかけて、雨の日でも練習できる施設を造ることを決めました。
(松原市 澤井宏文市長)
「ここに新たに上級・中級者向けのスケートパークを拡充します。西矢選手も競技仕様のスケートパークがほしいということだったので」
西矢選手のアドバイスも取り入れ、高速道路の高架の下に新たな施設を作る計画が進んでいます。
さらに、別の大規模なスケートパークの建設も計画しているといいます。
(松原市 澤井宏文市長)
「これはまだ場所と予算の問題がありますけれども、ちょうどパリオリンピックの1年前に間に合うような形でスケートパークを新たに建設したいなと思っています」
さらに、松原市には別の市町村からも『施設を作りたい。参考にしたい』という問い合わせも相次いでいるといいます。
西矢選手も期待「世界の選手たちと滑れるような大きい施設になってほしい」
今年12月、松原市のスケートパークに姿を見せた西矢椛選手。この施設が完成した2015年から通っていて、今も週に3日は学校が終わってからここで次のオリンピックに向けて技を磨いています。
(西矢椛選手)
「世界の選手たちが大勢来て、一緒に滑れるような大きい施設になってほしいです。海外とかってすごく大きいダウンレールとかアールとか、ボックスとかいっぱいあるので、そういう大きいセクションがほしいです。(Q約2倍の大きさのパークができるかもしれませんが?)めっちゃ楽しみです。世界大会とかできるような施設になってほしいです」
今年、オリンピックでの活躍で環境が変わりつつあるスケートボーダーたち。トップ選手だけではなく誰でも利用できる施設の設置はどこまで進むのか。来年に向けて期待が高まっています。
2021年12月23日(木)現在の情報です