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へき地医療の課題 「診療所」が市の直営化でサービス低下?対立する市と住民ら

特盛!憤マン

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へき地の診療所をめぐり市と住民が対立しています。視聴者から取材班に次のようなハガキが届きました。「私は京都府南丹市美山町に住んでいます。いま、美山診療所にて大問題が発生しています。現在は民営ですが、4月からは市直営の診療所になります。職員60人は20人に削減され、入院患者にはレトルト食品を提供する、という恐ろしい計画です。住民説明会が開催される予定ですので取材してください。」へき地の診療所で何が起きているのか取材しました。

「診療所」が市の直営に 医師が危惧する“変更点”

京都府の中部に位置する南丹市美山町。美山町の広さは南丹市の55%を占めていて、人口約3600人の半数近くが65歳以上と高齢化が進んでいます。そんな地域で唯一医師が常勤しているのが「美山診療所」です。美山診療所は25年前に開設され、医療法人財団「美山健康会」が運営。去年4月からは中村真人医師(67)が所長を務めています。
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【医師と患者のやりとり】
(中村医師)「この1か月、何も変わりはないですか?」
(患者)「ありゃしません」
(中村医師)「ここまで運転して来ているの?」
(患者)「そうです。」
(中村医師)「そうかそうか。」

今年4月から南丹市の直営になることが決まっていますが、中村医師は「医療や介護の水準が下がる」と訴えています。

(美山診療所 中村真人医師)
「市長の構想を聞いて、私は真っ向から反対したんですよ。とんでもないと。独居生活の方々がかなりたくさんいらっしゃるので、そういうことを考えた上での計画なのかと。」
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美山診療所では、これまで高齢患者に対して無料送迎サービスや院内での薬の処方、入院治療を終えた患者が一時的に入所して医師が常駐してリハビリなどを支援する「介護老人保健施設」の運営を行ってきました。しかし、市の方針ではこれらをすべて廃止に。薬については当面、約15km離れた薬局まで取りに行かなければならないといいます。

(美山診療所 中村真人医師)
「不安だらけです、みなさん。送迎は月に200人を超えるんですけれども、そういう方々の通院はどうするつもりなんですかと。おそらく受診控えが起こるんじゃないだろうかということが一番心配です。」

住民「困った」「何の説明もない」

こうした市の方針を住民たちはどう感じているのか。診療所から車で15分ほどの美山町に住む坊玉枝さん(80)。

(坊玉枝さん)
「ほんまに困ったことになりました。薬も向こうまで行かなあかんし、とてもやないけど行かれへんし。送迎がないしね。」

夫・義行さん(88)は、22年前に硬膜下血腫で倒れて以来、診療所の老人保健施設を頻繁に利用してきましたが、4月からは一番近い施設でも車で30分以上かかります。

(坊玉枝さん)
「子どもに世話にならないかんし、子どもかて仕事もあるし家庭もあるし。『年寄りは死ね』ということ。私らにしたらそうとしかとられへんね。」
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美山町に50年以上住む岡本達樹さん(72)も怒りを募らせています。岡本さんによりますと、市の当初の計画案では現在4床ある入院病床を閉鎖させる方針でしたが、町民たちの猛反発を受けて病床は残ることに。しかし、週のうち3日は夜間や休日に当直医は置かず、救急の場合は遠方の病院に搬送することになっているといいます。

(岡本達樹さん)
「外来だけと言っていたやつが住民運動がぶわーっと出てきたものですから。当面は入院ベッドは残しますと(市は言った)。介護者家族に対して、住民・患者に何の説明もない。ほんまに乱暴ですよ。」

市長の説明は?

そもそも直営化する必要があるのか?取材班は市長に直接話を聞くことにしました。

(南丹市 西村良平市長)
「民間の美山健康会の医師となるということは、医療法人の理事長にならないと、責任者にならないといけない。経営の責任がついて回ります。(美山診療所は)年間2500万円の補助金を交付されていると。それを持ってしても平成19年ぐらいからもう経営的には破綻状態。市が責任を持った方がいいなということで直営化したと。」

無料の送迎サービスや介護老人保健施設を廃止することについては。

(南丹市 西村良平市長)
「要求を全部飲み込んだ診療所を作ってそこに医師が来てくれるかどうか。次のお医者さん探しをもう始めているんですよ。中村先生には失礼ですけれども。なかなか見つからない。(Qレトルト食になるのは本当?)病院内での調理はしません。電子レンジでチンするんじゃなくて、風味やら食感を保つために時間かけて解凍して温める(方式)。」

直営化を前に開かれた住民説明会

今年3月10日。美山診療所が市の直営になるまで1か月を切る中、ようやく住民説明会が開かれました。

(町民)「すべてが決まった上で、その報告だけを聞くというのはいささか違うのではないかなと。」
(町民)「現状に不安が蔓延しています。」
(町民 岡本達樹さん)「美山診療所を充実させて安心して安全に暮らせる施策にしていただきたい。老人保健施設の廃止というふうに明言されていますけれど、欠かせない存在だと。」

(南丹市 西村良平市長)
「近隣の老人保健施設を活用していく。公設の老人保健施設は全国的にあまり数がない。まず医師の確保。そして直営の診療所を設置していく。」

こうした市側の説明に診療所の中村医師は。

(美山診療所 中村真人医師)
「いくら経営が厳しくても、私自身は今までやってきた医療を変えるつもりはない。(去年4月)私が来てからだいぶ収入が上がったんです。私どもが経営している限りは、経営責任を持って患者さんのためにしっかりとやっていきたいと思っております。」

訪問診療の対応も未定

美山診療所では現在、2人の医師で外来診療に当たっているほか、訪問診療も毎日行っています。

【訪問診療】
(中村医師)「こんにちは。美山診療所です。何も変わったことございませんか。」
(患者)「からだのそこらへんが痛い。」
(中村医師)「痛い?いつものヘルペスのところは痛みとかは?」
(患者)「ちょっとあります。」

患者に寄り添いながら行われている、へき地の医療。美山診療所は4月1日に市の直営になり、中村医師は残りますが、訪問診療を巡っても今後どう対応してくのかなど未だ市から方針は示されていません。

(3月29日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)

2021年03月30日(火)現在の情報です

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