MBS 毎日放送

2018年10月26日 17時30分 公開

ガソリン価格高騰の背景にトランプ大統領!?

 ガソリン価格が高騰している。資源エネルギー庁によると、今月22日時点の全国のレギュラーガソリンの平均価格は160.0円で8週連続の値上がりとなった。アメリカとイランの対立が主な要因だ。イランの核開発を制限する核合意が2015年に結ばれたが、この合意からトランプ大統領のアメリカが離脱し、イランの原油取引を経済制裁の対象にしようとしている。供給量が減るかもしれないという思惑から価格が上がっているのだ。アメリカとイランの対立がもっと先鋭化すれば、日本経済にとってもっと厳しいシナリオも考えられる。

オバマ前大統領の実績をひっくり返したくて...

 ガソリン価格が急に上がっている背景には、アメリカのトランプ大統領とイランのロウハニ大統領の対立がある。トランプ大統領がイランに対し、石油を輸出できないようにしてやるとケンカをしかけているのだ。
 イランにはかつて核兵器開発疑惑があった。イランの周りの国も核兵器を作り始めたら大変なことになるということで、アメリカのオバマ前大統領が中心になって、イランとアメリカだけでなく、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシアも入って、2015年7月に「イラン核合意」を結んだ。高濃縮ウランを15年間生産しないことや、ウランを濃縮する遠心分離機の大幅削減などが内容だ。つまり、すぐに核兵器を作れないようにしたのだ。その代わり、イランに対する経済制裁を解除した。
 ところが、この合意をトランプ大統領は気に食わない。「完全に核開発をやめさせるべきだ、あるいは核兵器を運ぶミサイル開発をやめさせるべきだ、そういうことをやっていない中途半端な合意」として「核合意」から離脱してしまった。
 オバマ前大統領の実績をひっくり返したかったということと、イランの核開発を何としてもやめさせたがっているイスラエルの意向に沿ったということがある。イスラエルに配慮すれば、次の選挙でアメリカ国内にいるユダヤ人に応援してもらえると考えたからだ。

核合意から離脱...経済制裁でなぜ原油価格が上がるのか?

 「核合意」から離脱したアメリカは11月からイランの原油取引を制裁対象にするとしているが、果たしてそれはどういう意味があるのか。
 イランから石油を買えば、支払いは銀行を通じて行うが、アメリカはその支払いをした銀行に対し、アメリカとの取引を一切認めないという制裁を課す。つまり、その銀行にとっては基軸通貨であるドルを扱えなくなり、仕事ができなくなってしまうということになる。そうすると、どこの銀行もイランへの支払いにはタッチしなくなり、だれもイランから石油を買わなくなってしまうというわけだ。
 市場に出回る石油の量が減れば値段は上がる。今はまだ制裁は実施されていないが、減るだろうという思惑で値段が上がっている。

アメリカとイランの対立 日本経済に大打撃のシナリオも

 トランプ大統領がイランに自分の主張を押し付けようとしているわけだが、イランからすれば、受け入れればロウハニ大統領の立場がなくなってしまう。ロウハニ大統領は穏健派で、世界と協調していこうという立場だった。このため、イランの中にはアメリカに妥協しすぎているとの批判もあり、今は「アメリカを信用し過ぎるからこんなことになるんだ」と立場はかなり弱くなり始めている。そうすると、もしかしたら今後ものすごい強硬派が出てくるかもしれない。
 イランの中でも強硬派で、軍隊よりも強い軍事組織の「革命防衛隊」というのがあって、サウジアラビアやイラクなどからの原油タンカーが通過する海峡を封鎖するための軍事演習を行っている。そこを海上封鎖されると日本が買っている原油の8割が入ってこなくなる。今のところ、軍事演習は脅しだけだと考えられるが、もし、封鎖が行われれば、日本経済にとっては致命的な打撃になる。日本ではまだ危機感がないかもしれないが、アメリカとイランの対立で、こういうことがあるかもしれないと知っておいた方がいい。


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