MBS 毎日放送

2019年03月26日 16時30分 公開

1杯1800円で営業時間は1日2時間!?アメリカ人絶賛ラーメン店主の「仕事幸福論」って

連日氷点下が続くアメリカ・ボストンで、突き刺すような寒風のもと1時間待ちの大行列を作るラーメン店がある。大西益央が取り仕切る「Tsurumen Davis」は2018年4月にオープンして以来、1杯1600円から1800円という強気の価格設定に加え徹底した日本流の味付けにも関わらず、お客は引きも切らない。地元紙「ボストン・グローヴ」の1面を飾るほどの人気ぶりだが、注目を集める理由は意外な経営方針にもあった。週の半分は営業時間1日たった2時間で、200日ごとにメニューをガラリと変え1000日後には店を畳むと決めている。ドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、人気の秘密と、従来の日本のラーメン店にはない働き方で仕事を楽しむ大西の“仕事幸福論”に迫る。

ボストンで行列のラーメン店は1日営業2時間!?

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米・ボストンにある「Tsurumen Davis」の経営方針は実にユニークだ。
営業時間は、週の半分は午後6時から8時までのたった2時間。200日を一区切りとしてメニューを一新し、営業は1000日で打ち止め。開店から5年後には店を畳むと決めている。
一体なぜなのか?

(大西)
「終わりを決めたら人間は本気になる。ずっと続くものには本気になりにくい」

大西の日常にも様々なルールがある。
午前6時半に店にやってくると、朝一番に取り掛かるのは雑巾がけ。体を動かしてから、スープの仕込みに移る。驚く程大量の鶏ガラと利尻昆布を投入し、自家製の麺はカナダの小麦粉とメキシコの塩を使用している。メンマも自家製だ。

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スープの完成までは6時間。合間を縫ってヨガで心身を整えるのも大西流。
アシスタントのモルガンは、大西の味に衝撃を受け、フレンチレストランを辞めて弟子入りをしてきたと言う。

(モルガン)
「今まで働いていたところはスピード重視で質が下がっていました。大西さんは質を大事にしているし、僕らに学ぶ機会も与えてくれます」

「食べるといつも幸せな気分になる」週3日通う常連客も

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午後6時。店が開店し、行列で冷え切った客の体に熱いスープが染み渡る。
鶏ガラスープの醤油ラーメン15ドル。
自家製のラー油を利かせたパイタン麺17ドル。
強気の価格設定にもかかわらず、お客は引きも切らない。
常連客の中には週に3回通う客や、一度に3杯以上食べるという猛者もいた。

(客)「いつ来ても満足して帰るよ。食べ終わると幸せいっぱいの気分なんだ」
(客)「こんなにおいしいラーメンは無いとみんなに言ってるの」

1日2時間の営業を終えると、午後9時前には大西がスタッフを連れて外の店に夕食を食べに行った。スタッフとのコミュニケーションを大事にするやり方は、どこか日本的とも言える。

(大西)
「店員が疲弊してるのが伝わったらお客さんもそういう店で食べたくないと思うんです。まずは僕らが元気で働ける環境作り。そういうライフスタイルを実現したい」

これは自身が今まで背負ってきた苦労からにじむ本音かもしれない。大阪出身の大西はラーメンを描いた映画「たんぽぽ」に感動し、31歳で地元に「鶴麺」をオープンさせた。
7年後、ハワイに進出したが商売は立ち行かなかった。2年後ノースカロライナでも失敗し、借金を背負った。追い打ちをかけるように父親が癌で帰らぬ人に。
せめてもの救いがラーメンだった。

(大西)
「食が細くなっていくのに僕のラーメンを食べてくれた。僕のラーメンなら食べられるというあの経験が、美味しいもので人を幸せにしたいという僕の思いを決定づけた」

新ラーメン開発 秘密の食材は「松茸」

2018年4月の開業から200日が過ぎ、大西が「シーズン1」と位置付けていた期間が終わった。
営業201日目からスタートする「シーズン2」は2週間後と決めていた。それまでに新作のラーメンを考案しなればならない。

日本に一時帰国して向かったのは京都だった。昔からつきあいのある料亭「菊乃井」本店の料理人・村田吉弘は日本料理を世界に広げてきた第一人者でもある。

村田によると料理で大切なことは《香り、テクスチャー(食感)、wow!(驚き)》の3つだと言う。

(村田)
「結局驚きがなかったらもう食べる気せえへんやん。印象に残すためにはね。記憶のバンクがめくれるようにせなあかん。香りをガーンといかんと記憶に残らへんねん」

アメリカに戻った大西は、新作のための食材を求めて北を目指した。
テーマは「香り」だ。

ボストンから電車で2時間半のポートランドに足を運び、新鮮なウニや、アメリカではなかなか見られないナマコを手に取り検討を重ねた結果、たどりついたのが干松茸。香りは申し分なく、出汁もとれそうだ。
「松茸で勝負する」方針は決まった。

1杯2200円 アメリカ人が食べ慣れない「松茸」でかけた勝負の行方

試作品づくりの日々が始まった。
まずは土瓶蒸しをイメージし、干し松茸の戻し汁を従来のスープに合わせ、メンマの代わりには戻した干松茸を。上には和歌山のぶどう山椒を散らし、ライムを絞る。
見た目はいかにも美味しそうだが、納得がいかない様子だ。

(大西)
「ごちゃごちゃ乗せると松茸の良さが消えるし、足し算しすぎた感はありますね...」

妥協は失敗を招くもと...。
自分を信じてひたすら試行錯誤を続けていく大西。
201日目の「シーズン2」スタートまであと2日のタイミングでアイデアがひらめいた。
ワンタンに松茸を練りこめば香りがでしゃばらないのではないか?
幼い頃好きだった母親お手製のワンタンスープから着想を得た。

しかし、松茸はアメリカで馴染みが薄い食材だけに、果たして受け入れられるのか。価格も課題だった。干したものでも松茸は高級食材だ。
結果、1杯20ドル。日本円で2200円のラーメンの「鶏と松茸のタブルスープ」は、果たして吉と出るか凶と出るかー

<2月8日 オープン201日目>

狙いは当たった。一口食べるなり、「wow!」と驚いてくれたのは、あの一度の来店で3杯ペロリと平らげる常連客だった。

(客)「きのこの風味がすごく気に入ったよ。MATSUTAKEだったかな?」
(客)「レベルが高い。すごく濃厚だ。大金を払う価値があるよ」

店内には何より嬉しい「wow!」が飛び交う。こうしてシーズン2は、いくつもの笑顔と共に幕を開けた。

(大西)
「安心しました正直。この緊張感を保っていくぞっていうそういう気持ちですね」

微笑む大西。一期一会にかける"気迫"が、この男の隠し味だ。

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「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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