エッセイ漫画「大家さんと僕」人気の秘密はカラテカ矢部の観察眼

エンタメMBS

2019/04/09 17:00

初めて描いたエッセイ漫画「大家さんと僕」が大ヒット。昨年、芸人として初、プロの漫画家以外でも初となる「手塚治虫文化賞 短編賞」を受賞したカラテカ矢部太郎に密着したのは、4月9日(火)深夜放送のMBS「OFLIFE」。決して上手くはないけれど、味のある絵に、実話をもとに矢部さんならではの温かく優しい視点で描かれる大家さんとのエピソードの数々。一度読めば、胸にしみるような内容が高く評価されている。昨年8月、漫画のモデルとなった大家さんが亡くなり、今年3月に連載が終了。矢部の漫画の原点や、彼を応援する先輩たち、8コマ×4=32コマに込めた矢部の深い思いとは。

「大家さんと僕」が普段漫画を読まない人にも支持されたワケ
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結成22年目を迎えた漫才コンビ「カラテカ」。ボケを担当する矢部太郎が描いた「大家さんと僕」は、矢部と大家さんとの交流に基づいた、ほっこりしたエピソードが話題に。新潮社の担当編集者の武政桃永さんは、「女性を中心に20代~80代まで、普段漫画を読まない人がファンレターを送ってくれる」といい、単行本は「現在76万部売れていて、昨年、新潮社で一番売れた本」という。最初の連載は「小説新潮」で2016年にスタート。不動産屋さんから紹介された「ちょっと変わった物件」の大家さんとの偶然の出会い。38歳で初めて描く漫画作品だった。その魅力を「観察眼の細やかさと記憶力の良さ。ちょっとしたしぐさや言葉が矢部さんの目を通したからこそ面白くなっている」という武政さん。そこに大家さんを見つめる矢部の温かなまなざしがある。昨年4月からは第2期の連載が「週刊新潮」に掲載されている。

矢部の独特の執筆スタイルとは?
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 毎週〆切に追われる矢部はいつも1人で独特のスタイルで執筆作業に取り組む。「1人でやるにはどうしたらいいのかと思って、iPadで書こうと思った」という矢部。どこでも描けるといい、第1話を描いたのはケニアだったとか。矢部の漫画は1ページに8コマ。「短歌とか俳句みたいな型があるから、間とか生まれて来ていいじゃないかなと描き始めて思いました」と矢部。4コマ漫画にはない余韻を生み出している。
芸人の先輩たちも漫画家としての矢部の活動を応援してくれている。品川庄司の庄司は参考になりそうな国民的漫画を矢部の誕生日にプレゼント。板尾創路からは連載をスタートする時にアドバイスをもらった。また、ほんこんからも「人間として好き。自分にないもの持ってる。センスもいいし・・・」と可愛がられている。

矢部が影響を受けた言葉「上手い絵は一番面白くない」

 矢部は1977年東京生まれ。父親は絵本作家のやべみつのりさんで、矢部自身「家で絵を描いている姿を見ることが多かった。絵を描くのが楽しそうだった」と振り返る。その父から言われた言葉「上手い絵は一番面白くない」に「すごい影響を受けている。お笑いでもお芝居でも何でも基準がそこにある」という。
 第2期の連載が始まって4か月後の昨年8月。漫画のモデルとなった大家さんが亡くなった。当初から1年の予定だった連載は3月で最終回を迎えた。前編では、漫画をもとに大家さんと矢部のほっこりしたエピソードを随所に交えながら、iPadを駆使して「大家さんと僕」を描く矢部の姿や、彼を取り巻く先輩たちの証言から、矢部の素顔と漫画家としての活動に迫る。

「OFLIFE」はMBSで毎週火曜深夜1時59分から放送。
ある分野のスペシャリストが、もうひとつの才能を発揮する姿を追うドキュメンタリー番組。
番組のナビゲーターには、元メジャーリーガーの黒田博樹。ナレーションを女優の手塚理美が務める。

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