2024年08月06日(火)公開
いじめで息子を亡くした母親 加害生徒側から"謝罪の手紙"が届くも不信感「本当に悪いと思っているなら、もっと早くに自宅に来るはず」 匿名SNSで誹謗中傷・LINE陰口で中3男子が自死
特命取材班 スクープ
2年前、SNS上でのいじめを苦にして中学3年の男子生徒が自ら命を絶った。亡くなってから2年間、一度も謝罪に来なかったという“加害生徒”側から、遺族のもとに1通の手紙が届いた。その内容とは。
「どつきまわすぞ」「なんで4なないの」SNS上に投稿されたコメント
大阪府門真市に住む50代の女性。2年前、最愛の1人息子、Aさん(当時15歳)を失った。生きていれば18歳、高校3年生のはずだった。
(Aさんの母親)「服にすごく興味を持っていたときだった。人が好きやし、何より友達と遊ぶことが優先で、友達をすごく大事にしていた子ですね」
Aさんは地元の公立中学に通う3年生だった。特にバスケットボールが好きだったという。母親思いな一面も。10歳の時に母親に宛てて書いた手紙が残っている。
【手紙より】『ぼくを産んでくれてありがと。ぼくはこれから自分の命も大せつにします』
優しかったAさんが自ら死を選ぶまでに追い込まれたのは、同級生からの「いじめ」が原因だった。
「どつきまわすぞ」「なんで4なないの?」…これは、SNS上でAさんのアカウントに投げかけられたコメントだ。匿名でコメントできるアプリで、「死ね」「非人権」などAさんを否定するような内容が書かれている。
中には、1分間に10回以上「しんでください」と書き込まれたものも。Aさんも、嫌だねと返事を送っているが、亡くなる直前まで嫌がらせは続いたという。
「誹謗中傷というよりかは、計画的な殺人やと思ってます」
亡くなった2か月後、市の第三者委員会が立ち上がった。真相を明らかにしたいと、ほかに証拠がないか調べ始めた両親は、Aさんの友人らの協力を得て加害生徒らのLINEのトーク履歴を手に入れた。Aさんが含まれていないグループの中で、加害生徒らは誹謗中傷を繰り返していた。
【トーク履歴より】
「こいつ一生ついてくるもん」
「ゴールデンフィッシュ」
「金魚の糞」
さらに、Aさんが命を絶った後も反省の思いが感じられない投稿があった。
【トーク履歴より】
「まぁまじのことゆうとさ、何が悪いん?」
「なぜ俺らだけピックアップする?ましてや直接ゆうてないだけマシやわ」
(Aさんの母親)「誹謗中傷というよりかは、私はもう計画的な殺人やと思ってますからね。旅立つ決断をしたのは息子ですけど、背中を押したのは加害者やと思っています」
匿名のコメントや陰口も「いじめ」と認定する“異例”の判断
今年3月、市は第三者委員会の報告書を公表した。第三者委員会は、Aさんが被害を訴えていたにもかかわらず「いじめ」として対応しなかったなど、学校側に「法的ないじめ対応の意識が根本的に欠けていた」と厳しく指摘した。
さらに、SNS上で「死ね」などと匿名で投稿したコメントや、Aさんが含まれないLINEグループでの陰口について、匿名であっても、また、Aさんが詳しい内容を知らなくても「心身の苦痛を感じると認められるものについてはいじめに該当する」として、計62件をいじめとする極めて異例の判断を下し、いじめと自殺の因果関係を認めた。
(門真市教育委員会 鈴木貴雄教育部長※当時 今年3月)「本人に知らせていなければ陰で何をやってもいいということではありません。今回示された認定についてはとても重いものと受け止めています」
報告書の公表後、遺族は警察に傷害罪で刑事告訴を試みたが、受理されなかったという。
(Aさんの母親)「刑事処罰を負わせることもできず、正直、もう無力感。母親として結局何もしてやれていない」
加害生徒側から届いた手紙 その内容に遺族「“自分は巻き込まれただけ”みたいな感じ」
そんな中、報告書で加害生徒とされた本人とその両親から遺族宛てに1通の手紙が届いた。
【加害生徒の両親の手紙より】
「大変申し訳ございませんでした。息子が全く関係ないとは本人も私たちも思っておりません」
しかし、Aさんの母親が手紙を読み進めると、自分は加害者ではなくいじめとは無関係と考えているのではないかと感じる部分があったという。
【加害生徒の両親の手紙より】
「息子が陰口を言ってしまったこと、(Aさんを)避けてしまったこと、そして何もできなかったことを息子共々深くお詫び申し上げます。直接止めることが難しくても、担任の先生や他の先生に言うことができたと思います」
【加害生徒の手紙より】
「言葉の使い方がよくなかったと反省しています。(Aさんが)周りからされていたことは、ひどいなと思っていました。しかし、受験期で、内申書のことが気になり関わりたくないとの思いから、何もできませんでした」
(Aさんの母親)「自分も(第三者委に加害者と)認定されたのに、“自分は巻き込まれただけ”みたいな感じに捉えられる、私たちにしたら。『ひどいことをされているのを知りながら何もできなかった』って、いやいやあなたもひどいことしてますからって」
Aさんが亡くなってから2年間、一度も謝罪に来なかった加害生徒側からこうした手紙が届いたことに、Aさんの母親は不信感を募らせている。
(Aさんの母親)「これだけ間が空いて謝罪するというのは、『一応謝っとこうか』と。そんな謝罪だったらいりませんし、本当に悪いと思っているんやったら、もっともっと早くに来るはずですからね、自宅に」
「本当に責任を感じているのか?」裁判で加害生徒から直接話を聞きたいと思うようになった。
「もうこんな悲しい事件はたくさんです」遺族は市と加害生徒11人を提訴
そして8月5日、遺族は門真市と加害生徒11人を相手取り、損害賠償を求める裁判を起こした。訴状によると、中学1年の頃から続くいじめに加え、日々投げかけられた誹謗中傷のコメントやLINEグループでの陰口でAさんの心理的負荷が強まったうえに、学校の不適切な対応で不登校などの適応障害を発症し自ら死を選ぶに至ったとしている。
(Aさんの母親)「(息子には)守られへんかってごめんねと。でも最後は頑張ってくるからねと伝えてきました。(加害生徒らに)今さら謝罪を求めるのではなく、しっかりと自分たちの罪をそろそろ認めてもらわないと困る。もうこんな悲しい事件はたくさんです」
5日、市側は「訴状が届いていないためコメントは差し控える」としている。
【悩みがある方・困っている方へ】
もしもあなたが悩みや不安を抱えて困っているときには、気軽に相談できる場所があります。
▼こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
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