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「少子化対策待ったなし」出生数70万人割れは"衝撃的" 参院選・各党が掲げる対策や支援とは?子ども育てる親からは「育児と仕事の両立可能な政策」望む声

参議院選挙2025

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 7月20日に投開票される参議院議員選挙。その争点の1つとしてあげられるのが少子化対策・育児支援です。各党の主張はどうなっているか?そして実際に子どもを育てる親の声も取材しました。◎筒井淳也:立命館大学教授 少子化・未婚化を研究

出生数70万人割れは“衝撃的な数字”

 出生数の減少が止まりません。厚生労働省の人口動態統計によると、出生数は1947年の第1次ベビーブームから減少を続け、1970年代前半の第2次ベビーブームで一時は持ち直したものの、そこからは再び右肩下がりに。2024年の出生数は68万6061人で過去最少となりました。

 そして、“1人の女性が生涯に生む子どもの人数”に相当する「合計特殊出生率」も年々下がっています。合計特殊出生率は2.07~2.10で人口が「横ばい」になると言われていますが、2024年は1.15という数字でした。

 MBS大八木友之解説委員は「出生数70万人割れというのは衝撃的な数字」と指摘。「実は2039年ぐらいに68万人くらいになると言われていました。かなり速いペースで人口減少が進んでいるのが数字上明らか」とした上で、次のようにコメントしています。

 「人口が減っていくというのはかなり前からわかっていて、政府や各党も様々な政策を出していますが、なかなかを功を奏していない、抜本的な解決につながってないのが少子化対策の難しいところ」

 厚労省によりますと、30年後には年金の受給額、基礎年金の支給水準が3割下がるおそれがあります。そして、2040年度には2020年と比べて以下のようになるという試算も。

■社会保障費 28%増
■医療給付費 48%増
■介護費   71%増
(出典:三菱総合研究所 ※中位推計を前提にした試算)

 大八木解説委員は「少子化は“静かな有事”と言われますが、ずっと進んできていている。高齢者にも非常に関係があって、年金の支え手である現役世代が少なくなっていけばいくほど、社会保障制度も持たなくなる。それがもうはっきりしている」と指摘します。

政府が取り組む少子化対策・子育て支援は?

 では、今政府が取り組む少子化対策・子育て支援を見ていきましょう。大きく3つに分けられます。

・結婚支援
■マッチングを行う自治体に補助
■相談員(いわゆる結婚コンシェルジュなど)を配置する自治体に補助
■結婚後の家賃・引っ越し補助  など

・子どもにかかる費用の補助(無償化も含めて)
■2026年「標準的な出産費用」無償化の方針
■扶養する子どもが3人以上なら大学無償化  など

・労働環境の改善
■こども誰でも通園制度
■育児中の時短勤務に給付金
■育休制度を充実させる企業に補助金  など

 大八木解説委員は「生き方への価値観が多様化しているので、政治も解決策を示しにくいのは『結婚してください、子どもを多く生んでください』とは声高に言いにくい世の中にはなってきているし、非常にセンシティブ」と少子化対策の難しさに言及します。

 (大八木解説委員)「さまざまな対策があるなかで、難しいのは『結婚支援』。若い世代にどうやって結婚してもらうのか、どう促していくのかというのは、なかなか政策だけでは解決しづらい」

子育て真っ最中の親の“ホンネ”

 0歳から5歳まで約170人の子どもを受け入れる、大阪府内にある「認定こども園」で、子育て真っ最中の親たちに出産や育児について本音を聞きました。

 (共働き・2児の母)「(Q今の日本は出産・子育てがしやすい国だと思う?)思わないですね。夫が激務で基本ワンオペなので、これ以上子どもを増やすのは無理」
 (共働き・2児の母)「ダブルワークじゃないと厳しい。収入の方のサポートでも、児童手当を上げるとか高等教育の学費をを免除するとかそういう制度を入れてほしいなと思います」

 子育てにかかる費用をまかなうために、いま夫婦の共働きが増えていますが、それでも子どもを増やすことはなかなか難しいと思う家庭も少なくないようです。中にはこんな意見も…

 (共働き・2児の母)「男性の育休・産休も表面上は子育てに参加している感じはしますけど、実際に主人が産休中や育休中、お給料はその分少なくなったり。むしろ働きに行ってもらった方が助かったとは正直思っている」

 「育児」と「仕事」を両立できるようにする支援が欠かせないという声が多く聞かれました。

独自の支援を行う会社も

 大阪市内で化粧品の製造・販売などを行う「ナリス化粧品」では、独自の取り組みが進められています。

 (ナリス化粧品 藤原亜紀人事部長)「(子どもを)ひとり産んで帰ってくると、ひと月2万円の手当がもらえるという制度になります」

 13年前に独自の子育て支援制度を設け、男女関係なく3か月以上の育児休業などを取得し復職した社員に、月2万円の支援金を給付しています。復職してから子どもが小学校に入るまで給付されるため制度の導入から女性だけでなく子どもがいる男性社員の約6割が育休を取得するようになりました。

 (社員・2児の父(38))「こういう制度があるからこそ、2人目も考えてみようという話になりますし、周りに育休を取っている方も多いので、安心して休める。少子化対策にはつながっていると思います」

 さらに、近年では復職して3年以内に昇進している女性社員が15人ほどいるといいます。今では管理職の4割が女性で、うち半数以上がママ社員だということで、仕事と育児の両方を諦めずに頑張れる環境が整っているようです。

 (社員・二児の母(33))「これから子どもが大きくなってお金がかかってくることもあるので、経済的な面でも働きたいというところはありました。子どもがいる女性社員でも昇進にハードルなく、頑張ってキャリアを積んでいる人たちが出てきているので、そういう方たちを見てモチベーションは上がります」

各党が主張する公約を見る

 では、参議院選挙に向けて各党の公約をみていきます。

【自民】
■妊娠前から子育て期まで切れ目のない支援
■高等教育費の負担軽減

【公明】
■妊娠・出産にかかる基礎的な費用を無償化
■こども誰でも通園制度促進

【立憲】
■出産費無償化
■児童手当を18歳まで1人当たり1万5000円に増額

【維新】
■出産・保育の無償化
■教育無償化と質の向上

【共産】
■教育無償化
■給食費無償化と質の確保

【国民】
■「教育国債」を年5兆円発行で子育て・教育・科学技術予算倍増

【れいわ】
■高校卒業まで子ども手当月3万円
■大学院まで教育無償化

【参政】
■0歳から15歳に月10万円の教育給付金
■奨学金制度改革

【社民】
■出産の保険適用
■子ども医療費や保育料の無償化

【保守】
■出産育児一時金引き上げ(国籍条項をつける)

 各党の少子化対策・子育て支援の公約について、専門家はどう見ているのか。立命館大学の筒井淳也教授は「『少子化対策をしなければいけない』『子育て支援をすべき』というところは、各党一致している。だから公約に差がつきにくい状態になっている。争点にならないので各党あまり触れていないのではないか」と分析しています。

少子化対策に「成功」したフランス

 先進国をみると、多くの国が少子化になっていますが、その中でも、少子化対策に成功したことがあるのがフランスです。

 フランス国立統計経済研究所によると、フランスの合計特殊出生率は1993年には1.66でした。そこから、手厚い家族手当や保育サービスの充実、子どもの人数で減税される「N分N乗方式」などの対策を打ち出し、2006年には2.03まで上昇。2014年まで「2」以上で推移してきました。しかし、そんなフランスでも2024年には1.62に低下しています。

 2017年から2021年までJNNのパリ支局長としてフランスに赴任していた大八木解説委員は「経済情勢が落ち込んできているというところや、出産年齢のベビーブーマーの女性がだんだん減ってきたというところで、打っている手が悪いわけではないが、制度だけでは解決しないのが少子化の難しいところ」と分析しています。

 参議院議員選挙は7月20日(日)投開票です。待ったなしの少子化対策にどう向き合えばいいいのか、広い目で考えていく必要がありそうです。

2025年07月11日(金)現在の情報です

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