MBS(毎日放送)

【独自】「早く対応していたら防げた命だとつくづく思う」生後5か月のわが子が認可外保育施設で"うつぶせ死" 行政の報告に両親は疑問拭えず「田辺市がどう変わったのか知りたい」

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE

 2023年7月、和歌山県田辺市の認可外保育施設で、生後5か月の女の子が死亡した事故。施設の代表が2月28日に書類送検されます。

「絶望のふちに落とされた」生後5か月で亡くなった心都ちゃん

 元気に遊ぶ女の子、柴尾心都ちゃん。両親と兄3人に見守られながらすくすくと成長していました。

 当時生後5か月だった心都ちゃん。2023年7月、和歌山県田辺市の認可外保育施設「託児所めぐみ」で、ベビーベッドの上でうつぶせになり、ぐったりしている状態で見つかり亡くなったのです。
2(1).jpg
 (心都ちゃんの母親・柴尾心さん)「絶望のふちに落とされた感じ。なんでなんでしか出てこなかったです。ほかの子どもたちに言ったのは、ママが預けてしまったから亡くなってしまったと」

 心都ちゃんが亡くなった日、施設には心都ちゃんを含む0歳から6歳の子ども4人が預けられていました。国の基準では、「託児所めぐみ」の規模であれば保育従事者を2人以上配置することが求められていますが、この日は施設の代表を務める60代の女性保育士が基準に反し1人で見ていたのです。

 去年9月、母親が施設を訪れ施設の代表に直接話を聞くと…
3(1).jpg
 (母親)「(施設の)代表が1人で見るといつから分かっていましたか?」
 (代表)「ごめんなさい。記憶がとても曖昧です」
 (母親)「本当は(保育従事者が)2人いないといけないけど、1人で見ていることがあった?」
 (代表)「うん、うん、はい。別の保育士の子どもが体調不良でどうしても休まないといけないときは、(預かりの)キャンセルをどうしても言えなくて。そういう(1人で見る)ことは正直ありました」

検証委は施設代表と行政の責任を厳しく指摘

 田辺市によりますと「託児所めぐみ」は2013年から3年連続で保育従事者の配置数が基準を満たしていないとして市から指導を受けていました。

 県は去年、施設や市の対応を検証する委員会を設置。そして2月14日。

 (検証委員会・森下順子委員長)「死亡事故に対して今後活かされるようにということで提言書をまとめさせていただきました」
5(1).jpg
 県への報告書では施設では2023年4月から心都ちゃんが亡くなるまでの7月までの間、営業日の約7割で保育従事者が1人しかいなかったと指摘。施設の代表に”責任感が足りなかった”と言及しました。

 また行政にも責任があるとして、田辺市に対し3年連続で人員不足を指導した際に状況が改善されているか施設に出向いて確認をしていなかった可能性が高いなどと指摘。調査に不備があったと厳しく指摘しました。

「イチイチ把握していない」行政は遺族に謝罪したが…

 調査結果が公表された日、和歌山県の担当者が遺族を訪ねました。

 (和歌山県こども未来課・戎脇伸晃課長)「亡くなった心都ちゃんが帰ってくる訳ではないのですが、県としては今後再発防止につとめていきたいと思います」
 
 今後、市が適切に立ち入り調査や指導を行っているか、県が監督者として確認するのか遺族が尋ねると…。

 (戎脇伸晃課長)「そこの詳細までは何か起こったら聞いて回収できますけど、それはイチイチこの施設をみているか行政としては…」
 (父親)「イチイチ?」
 (戎脇伸晃課長)「イチイチっていうか、ひとつひとつは把握していない。数が多い中で。認可外施設の指導監督をどうしていくか話し合いますので、その結果もお知らせします」
 (父親)「田辺市がどう変わったのか知りたい。子どもってうちの子だけじゃないからね。こんなことしかできないですやん、僕らも。それをイチイチとか、いっぱいあるからって言われたら…」

 県のこうした報告に遺族は…
7(1).jpg
 (心都ちゃんの父親・柴尾隆幸さん)「もうちょっと早く対応してもらってたら防げた命やったかなってつくづく思う」
 (心都ちゃんの母親・柴尾心さん)「その人(市の職員)に直接話を聞きたいですね。もうちょっとこういうふうにできたんじゃないかなとか。一回見て1人でやってるってわかったのにちゃんと見なかったのかとか、一個一個聞きたいですね、本人に」

和歌山県は指導マニュアルを作成へ 施設代表は書類送検

 今回の事故を受け、和歌山県は市町村が施設を指導・監督するための県内で統一したルールを来年度中に作ると説明しました。

 (和歌山県・岸本周平知事)「指導する際のマニュアルをつくって、県もフォローして応援していく」
9(1).jpg
 国の基準に違反して一人で子どもを預かった施設の代表の女性保育士。捜査関係者によりますと28日、業務上過失致死の疑いで書類送検されるということです。 女性保育士は県の聞き取りなどに対し、「長年の経験もあり1人で預かれると思っていた」などと話しているということです。

 ずさんな保育体制とそれを見過ごした行政の責任。家族にとって大切な心都ちゃんはもうかえってきません。

2025年02月27日(木)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

「いとこの戦死が嬉しかった」...軍国少女だった91歳の後悔 市民の間に蔓延した"同調圧力" #きおくをつなごう #戦争の記憶

2025/10/20

「絶望的で人生が終わったと思った」実父から性被害受けた娘 "親だから憎み切れない"葛藤の中、父親の罪証明するために証言台へ「行為が終わると、ママに言わないようにと口止めされた」父親は無罪主張【あす判決】

2025/10/20

『あの外国人女性はどこに?』1970年万博パビリオンで忘れられない出会い 77歳男性の願い叶うか――  55年ぶりの万博で起きた奇跡に密着

2025/10/17

ひたすら試してランキング「カップラーメン醤油味」を徹底調査!麺・スープ・全体の味で満点獲得し"王者の貫禄"見せつけた1位の商品は?プロも脱帽「もう言うことなし」【MBSサタプラ】

2025/10/15

「私の中では最高の万博」大阪・関西万博に毎日通った"万博おばあちゃん" 親交深めたパビリオンスタッフへ感謝の言葉とプレゼント 「1か月半でのパビリオン制覇」「スタッフとの交流」かけがえない184日の軌跡

2025/10/14

10月20日まで「全国地域安全運動」 北堺警察署と府立金岡高美術部がタッグ組み防犯イベント 大阪メトロ新金岡駅

2025/10/13

"食の阪神"の新戦略 全国の「うまいもん」を大阪・梅田に!「宝探しのように楽しんでもらえる売り場を」阪神梅田本店リニューアルの裏で奔走するバイヤーに密着

2025/10/12

「自分の子と同じくらい、それ以上の愛情を注いでいた。家族と思ってくれる判決を」動物病院で外科手術後に愛犬が衰弱し死ぬ... 飼い主側が院長を提訴「重篤な病態を漫然と見過ごした」 ペットは"物"ではないと訴え

2025/10/11

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook