2024年11月01日(金)公開
児童が通学で利用『路線バス』休止へ 小学校まで子どもが歩くと1時間以上...歩道がない場所もあり保護者たちは困惑 バス会社は"採算割れや人手不足"で苦渋の決断
編集部セレクト
兵庫県神戸市西区にある平野小学校。校区がとても広いため児童の半数近くが通学に路線バスを利用していますが、この路線が来年3月で一斉に休止されることになり、保護者らが困惑しています。
児童の半数近くが路線バスを利用するが…バス会社『現行どおりの運行を維持していくことが困難』
神戸市西区平野町。明石市との境に位置する自然豊かでのどかな地域です。平野町の堅田地区に住む政井友理枝さんはここで夫と2人の息子と暮らしています。長男の希心くんは小学1年生です。
希心くんが通う平野小学校は自宅から直線距離で約3.7km離れているため、路線バスで通学しています。平野小学校の校区は南北に6.5kmほど、面積は約13平方キロメートルで、大阪府守口市とほぼ同じ広さです。子どもが歩くと1時間以上かかる地域もあることから、約130人いる児童の半数近くが路線バスを利用しています。
ところが、今年6月、市からこんな知らせが届きました。
【神戸市からの通知より】
『平野小学校区のバス路線に関して、現行どおりの運行を維持していくことが困難である旨の申し出がありました』
バス会社が、来年3月末で通学に使われる路線を休止すると発表したのです。
「子どもが歩いていけるようなところではない」と心配 歩道がない道やトラックが激しく往来する道
母親の友理枝さんは困惑しています。
(政井友理枝さん)「えっ…なくなるの、どうやって行くのという感じです。(息子に)『2年生からバスがない』と言ったら、『なんで?』と。『学校に歩いていく?』と聞いたら、『歩けない』と言っていました」
子どもの足で歩いて通学するとなると、片道1時間ほどかかります。さらに心配なことがあるようです。
(政井友理枝さん)「歩道がないところがあって、歩いていけるようなところではない」
学校までの道を記者が歩いてみると…
(記者リポート)「このあたりは歩道がない道路です。後ろから車が来ましたが、真横を通り過ぎていって、少し怖いなという印象です」
片側1車線の歩道がない道が500mほど続きます。狭い道ですが、大通りに出る車のほとんどがこの道を通るため、歩くには危険が伴います。また、別の道には歩道はありますが、近くに工業団地があり、トラックが激しく往来します。
子どもの安全が脅かされるかもしれない事態に保護者の不安は募ります。
(保護者)「安全に子どもたちが通える状況になってほしいです」
(保護者)「毎日自分らで送り迎えしないといけないかなと。それはちょっと無理なので、どうしたらいいのか」
「2024年問題で、運転手の労働環境改善が乗務員不足の大きな要因に」
この路線を運行するバス会社は「休止は苦渋の決断だった」と話します。
(神姫バス総務部 小森亮介次長)「減らしていかなければならないという中で、基準となるのは、どれだけ乗っていただいているか、どれだけ収入があるか。大変申し訳ないですが、判断させていただいた」
利用者の多くは“運賃が半額”になる児童。一般の乗客はほとんどおらず、採算割れが続いていたといいます。さらに…
(神姫バス総務部 小森亮介次長)「2024年問題で、運転手の労働環境改善が乗務員不足の大きな要因に」
バス運転手などの時間外労働の上限が規制される『2024年問題』で、人手不足が深刻化したことなどから休止せざるをえなかったというのです。
今後について、心配しているのは子育て中の保護者だけではありません。
(地元住民)「この地域は『市街化調整区域』で住宅が建てられない。少しずつ人口が増えてきているのに、バスがなくなったら子どもがいなくなるし…」
平野町は、開発が制限されている市街化調整区域になっています。そのため、他の地域からの流入は少なく、子育て世帯の多くがこの町で育った人たちです。しかし、通学手段がなくなれば、町に住もうと思う人が減ってしまう懸念もあるのです。
地域住民の声に神戸市は…
地域のこうした声について、神戸市はどう考えているのでしょうか。
(神戸市教育委員会・学校教育課 都築浩司課長)「西区は子どもの数も少なくなってきています。公共交通がなくなることは人口減にも影響あるかと思います。教育委員会としては、児童が安心して学校に通えるようにと考えることが一番の仕事かなと思っていますので、それに向けて全力で取り組んでいるところです」
そして10月15日、保護者のもとに市から今後についての連絡がありました。
(政井友理枝さん)「バスが休止になった児童を対象に、タクシー会社等で代替通学手段を確保したいと連絡がありました」
バスの代わりに、タクシー事業者などに送迎業務を委託する方針を伝えてきたのです。
(政井友理枝さん)「何も手段がないという不安なところから、一筋の光が伸びている感じです。安全に通学させたい、ただそれだけを願っているので、その方法をしっかりと考えていってもらえたらいいなと思います」
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