MBS(毎日放送)

奈良のシカに起きている「異変」 "夜に行われる"エサやり...多くのシカが森に帰らず 30年以上調査する研究者『人とシカの関係を歪めてしまう』

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE

 長年、人々に親しまれている「奈良のシカ」。しかしいま、夜間にもエサをやる人が増え、シカの生態に影響を与えているということです。

 (MBS前田春香アナウンサー 10月3日)「奈良市の職員が特別柵の中にいるシカの様子を撮影しています」

 10月3日、奈良市保健所などが「奈良の鹿愛護会」が管理する特別柵のシカを調査しました。

 その理由が、肋骨がくっきりとわかるほど痩せていたり、毛が薄くなっていたりする特別柵の中のシカたちです。ここには、農作物に被害を出すなどしたシカが保護されていますが、10月に獣医師が「このシカたちに十分なエサが与えられておらず虐待にあたる」と市に通報したことが発覚。愛護会は「エサの予算は確保していて不足しておらず、虐待行為にはあたらない」と反論しています。
3.jpg
 長年、人々に親しまれてきた奈良のシカ。そんなシカの動向を観察して調査を行っているのが、北海道大学の立澤史郎特任助教です。30年以上シカの研究を続けてきました。
4.jpg
 立澤先生は定期的に市民と一緒に奈良のシカの動向を調査しています。

 (立澤史郎特任助教)「人とシカとのトラブルが増えてきた。昔と比べてどれぐらいシカが野生じゃなくなっているかということをちゃんとデータにして検討してみようと」
5.jpg
 この日、調査したのは奈良公園一帯。頭数などをメモしていきます。生息地は広範囲にわたるので、立澤先生は自転車をこぎながらの調査です。立澤先生たちの調査は昼だけでなく夜も行われます。

 (立澤史郎特任助教)「奈良のシカは野生のシカなんですけど、特に夜に餌付けする人が増えてくるとあまり山に帰らなくなるので、それは問題だということで、夜どれぐらい公園をうろうろしているシカがいるのかを調べるために調査しています」
6.jpg
 市民や観光客らによる過剰なエサやり。本来、鹿せんべい以外の食べ物を与えることは禁止されているにもかかわらず、弁当のおかずや食パンをやる人たちが後を絶ちません。

 (エサをあげている人 2020年)「コロナで全然お客さんが来なかったでしょ。痩せてガリガリでしょ。みんなやっているのを見て…」

 こうしたルール違反は夜間も行われているといいます。
7.jpg
 真っ暗な奈良公園周辺を懐中電灯で照らしながら調査する立澤先生。すると、突如路上に50頭近いシカの群れが現れました。そして、横には1台の車。

 (立澤史郎特任助教)「めっちゃエサやっている人がいます。車できて…いつも来ている人だと思いますけど」

 市民調査をはじめた30年前には、夕方になるとシカは森に帰っていましたが、夜のエサやりの影響で多くのシカが夜になっても公園内に留まるようになったと指摘します。

 (立澤史郎特任助教)「夜は普通これからしばらく休息するんですけど、人が多くてエサをやる人がいたりすると休息しないでずっと活動しているというのも見えてきます」
8.jpg
 その結果、秋はシカにとって繁殖のシーズンで子ども連れのメスは巻き込まれないように夜間は森の奥で休息するのが本来の姿ですが、この日も母シカと小シカの姿を夜の公園で確認することができました。
9.jpg

 立澤先生はいま、シカと人間のいびつな関係について考え直さなければならない時がきていると感じています。

 (立澤史郎特任助教)「人間からエサをもらうことに慣れてしまうと平気で人里にでてきて、そのうち畑とかで作物を食べることになると考えると、人とシカの関係を歪めていくのではないかと思っています」

2023年10月16日(月)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

【カツめし】創業60年 親子2代ドライブイン洋食 京都・八幡「レストラン百花園」

2025/12/04

ひたすら試してランキング『あったか靴下』下着美容研究家と冷え性が悩みだというギャル曽根が選ぶ "しあわせなはき心地" 老舗のこだわりがつまった注目の1足とは?【MBSサタプラ】

2025/12/03

"勤務中は8時間以上トイレ行けない"重度障がい者の就労阻む壁「ヘルパーを利用しにくい」 国の支援事業導入の自治体は全体の「5%未満」...背景に予算不足や事業の認知不足

2025/12/03

大阪湾の"海の三重奏"が全国に! 「日本を元気にする魚の祭典」Fish-1グランプリで『魚庭の海づくり丼』が堂々の審査員特別賞受賞!

2025/12/03

お笑いコンビ「カベポスター」阿倍野警察署などで一日署長 年末に向け交通事故や特殊詐欺への注意呼びかけ

2025/12/01

【進化する文具】デジタル時代なのに『手帳』が人気! 「絵で記録」「新聞の見出し」で手帳を"育てる"ってどういうこと? 梅田ロフト文具担当オススメ最新文具とは

2025/11/30

【万博で話題】夜空彩る「ドローンショー」の裏側 少しのずれも許されない"緻密な準備作業"を経て...ドローン500機が一斉にテイクオフ!

2025/11/28

「早く供養してあげないとと。思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」死産した赤ちゃんの遺体を大阪市内の公園に遺棄 24歳女の孤独「産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」執行猶予付き有罪判決が確定

2025/11/28

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook