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少子化で『出生数ゼロの村』も...その中での未来の繋ぎ方「保・小・中一貫教育で親も子も笑顔」「集落20年ぶりの赤ちゃんをみんなで守る」

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 少子化が止まりません。今回、兵庫県と奈良県にある『出生数がゼロ』の2つの地域と、20年ぶりに赤ちゃんが生まれた1つの集落を取材しました。厚生労働省によりますと、2022年の「合計特殊出生率(女性1人が生涯に生む子どもの人数)」が1.26となり、2005年と並び過去最低となりました。また、2022年の出生数は77万747人で、こちらも過去最少となっています。

「出生数ゼロ」を初めて記録か…『就職する所がないことが一番大きい』

 奈良県南部に位置する天川村。吉野山地に囲まれた人口約1270人の自然豊かな村です。洞川温泉があり観光地として人気ですが、2022年にこの村で生まれた赤ちゃんの数はゼロ。記録上初めてのことだとみられます。

 (天川村の住民)
 「びっくりすんな、ほんま。これからそういうことがぽんぽん続くんかなぁ…」
 「若い子はほとんど出ていきますのでね。仕事が多少はあったら帰ってくると思いますけど、ここらへんは不便だからね」
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 村では子育て支援対策を充実させて若い世代の定住率を上げようとしていますが、思うような成果が出ていないのが現状です。

 (天川村・健康福祉課 森田秀行課長)
 「村から学校に進学して、そのままその場所で就職する、そして村に帰ってこない。就職する所がないというのが一番大きいかなと思います」

 危機感を感じる一方で『出生数ゼロ』という数字については次のように話しました。

 (天川村・健康福祉課 森田秀行課長)
 「そんなにびっくりはしていないです。一子二子を出産してたまたま空いたとかそういうことだと思っています」

少子化を逆手に取った教育方法…1つの学校で「保・小・中一貫教育」

 少子化がより深刻な場所が同じ奈良県内にあります。天川村からさらに山奥にある上北山村です。過去10年で4回、出生数ゼロを記録しています。
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 少子化が進んだ結果、2023年現在、村の学校は「上北山やまゆり学園」の1校のみ。ここに通っているのは小学3年生~中学3年生までの男女9人です。
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 さらに校庭には保育所もあり園児8人が通園。村の学校が統廃合した結果、6年前からここで「保・小・中一貫教育」が行われているのです。
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 子どもが17人の学校では、数の少なさを逆手に取って、なんでもみんなで取り組みます。中学校の英語教員が保育園児の英語を指導。小学5年生の国語の授業では、保育園児に読み聞かせをして表現力などを学びます。

 (小学5年生)
 「(保育園児は)かわいいし、授業で触れ合うのはおもしろいことかなと思います」
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 一方、生徒がひとりの中学1年生。ディスカッションをする授業の時には先生が生徒役として授業に参加します。

 (生徒役の教員)
 「生徒役として入っているんですけど、今の中学生がどんなことを考えているのか知れるいい機会なので、とてもありがたいです」

生徒『学年の域を超えて楽しく遊べる』 保護者『少人数なので教育の質や量が増える』

 こうした環境について子どもたちはどう思っているのでしょうか。

    (記者)「人数が少ないけど寂しいと思ったことはない?」
 (子どもたち)「ないです!」
 (小学3年生)「先輩とかが優しいから楽しいです」
 (中学3年生)「9年生と4年生とか学年の域を超えてみんなで楽しく遊べるところがいいところかなと思います」 
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 一貫教育は保護者からも好評のようです。

 (保護者)
 「小学校の先生が保育園児と触れ合うことも多いので、すごくスムーズに小学校にあがれるのが一番心強いかなと思っています」
 「田舎暮らしがしたくて。夫婦2人で『どうせ行くならすごい田舎に行こうか』ということで移住してきて。数年してこの子が村で生まれました。少ないなりにひとりに見てもらえる質や量が増えるし、少ないなら少ないでいいかなと」
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 県内で一番子どもの数が少ない学校。でも子どもたちの絆はどこよりも強いと校長は胸を張ります。

 (上北山やまゆり学園 高井成泰校長)
 「(子どもも教員も)家族という感じで行えるのが本校の特徴かなと。若い世代のご家族にこの上北山村に残っていただいたり移住していただいたりして、地域からこの学校をなくさないようにと願うばかりです」

20年ぶり!集落に生まれた赤ちゃんに住民はメロメロ

 厚労省の「人口動態総覧」によりますと、日本の出生数は減少の一途をたどり、2022年についに80万人を割り77万747人になりました。こうした中で2022年に大きな変化があった集落があります。
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 兵庫県丹波篠山市の市野々集落。56人が住んでいますが、市の高齢化率が28.50%なのに対して、この市野々集落は71.43%と住人の多くが高齢者です。
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 そんな集落に2022年に生まれたのが加藤蔵之助くん(1歳1か月)。集落に赤ちゃんが生まれたのは約20年ぶりのこと。ひとたび集落を散歩すれば…。

      (住民)「こんにちは。お久しぶり」
 (ママ・梨絵さん)「びちゃびちゃや、よだれで」
      (住民)「元気な証拠や。暑いから気をつけて」

 会う人会う人が声をかけてくれます。
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 この日は集落をあげての草刈り。力仕事を担うパパ・俊希さん(29)の代わりに蔵之助君のお世話をするのは集落で暮らす70代と80代の女性です。この日はママはお仕事で不在。両親が近くにいなくても周りにいるのは家族同然の人たち。蔵之助君は落ち着いた様子で過ごします。

 (住民(80代))「靴こんなんやで。(自分のと)こんだけ違う、こんだけ違うんやで」

 (住民(70代))「オムツ濡れていませんか?」
 (蔵之助くん)「(首を横に振る)」
 (住民(80代))「わかってんねんな」
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 2021年に新型コロナウイルスをきっかけに集落に移住した加藤さん夫妻。2022年4月に蔵之助君が生まれました。ママの梨絵さん(32)が里帰り出産から戻ると、集落の人とパパが一緒に準備した鯉のぼりが出迎えてくれました。

 (ママ・梨絵さん)
 「やっぱりうれしかったですね、迎えてくれてね。楽しみに待ってくれているというのはうれしいことですね」

集落にとって『蔵之助君は宝物』

 集落の人たちにとって蔵之助君はどんな存在なのでしょうか。

 (集落の住民)
 「アイドルやから。成長がずっと楽しみで」
 「村の宝物ですよ。村のみんなもそう思っていると思いますよ」
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 俳句好きの住民・澤山啓子さんが蔵之助君と初めて会った時に詠んだ句があります。

 【澤山啓子さんの句】
 「赤子来る 既にイケメン 緑なす」

 澤山さん、蔵之助君を前に創作意欲が止まりません。

 (澤山啓子さん)
 「蔵ちゃんの最新作『青稲の 光のそよぎ 赤き頬』。『村駆ける 小さき靴音 若葉風』。走ってよ!早く」

 まだつたい歩きですが、ついつい想像が…。
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 赤ちゃんの誕生は、集落の人たちに未来に思いを馳せることまでをも、もたらしていました。

 (ママ・梨絵さん)「みんなに守られて大切にされていることで、自立じゃないですけど世間に出ていけるような大人になってくれるといいなと思いますね」
 (パパ・俊希さん)「勘違いしそうですけどね」
 (ママ・梨絵さん)「ねぇこれだけちやほやされて。『ダメなことはダメと叱って』と皆さんに言わないとなと思っています」

2023年06月07日(水)現在の情報です

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